ITコーディネーターが語る中堅・中小企業IT化の「あるべき姿」強い中堅企業のIT化シナリオ(1/2 ページ)

経営にITが不可欠な時代だという。しかし、IT化は実際にはなかなか難しい。特に中堅・中小企業のIT導入には制約が多いようだ。数多くの企業のIT化を支援してきたITコーディネーター、田中渉氏に聞いた。

» 2006年03月13日 07時23分 公開
[ロビンソン,ITmedia]

 オンラインムック強い中堅企業のIT化シナリオ

ロビンソン

 数多くの中堅・中小企業のIT化を支援してきたPA情報システムの田中渉氏は、「IT導入の前に、まずは経営者の頭の中の整理をお手伝いする」と述べる。

「まず戦略ありき」で事を進める

 同氏はさらに「多くの経営者は自分なりに経営理念やビジョンを持っています。それに対し、IT導入が不可避だということも分かっています。ただし、それを具現化する方法が分からない」と続けた。

 なぜか?

 「経営者が情報を持たないかといえば、そうでもありません。社内のほかの担当者と比較すれば、経営者は異業種交流会やセミナーに出席してたくさんの人と情報交換する機会があります。だから、理念やビジョンに対する思いとITを導入したいという意気込みはある。しかし、それが社員には伝わらない。その理由は、シナリオが描けていないことにあります」

PA情報システムの田中渉氏

 例えば、経営者が策定する中期経営計画や事業計画書などには、ITの導入による経営変革の必要性を説いているものが少なくないという。

 「しかし、誰がいつまでに何をするか、といった基本的なことが記載されていないことが多い。だから1年経っても何も変わらない」(田中氏)

 田中氏には「システムを構築の支援をしてほしい」という企業からの依頼が多く寄せられる。ただし、同氏は単にシステムを構築するだけのサービスは提供しないという。ITコーディネーターは、経営戦略の策定から、IT導入、運用まで、企業と長い付き合いをすることを前提にしているため、短絡的なシステム導入に走ることはない。

図1

 図1にもある通り、経営者はまず思いをビジョンとして掲げて、BSC(バランススコアカード)などを用いてさまざまな視点から目標と指標を検討する必要がある。それが、経営戦略を生み出すために必要となる大切なプロセスといえよう。田中氏は「わたしは社長の思いを具現化するためのシナリオ作成をお手伝いする」と話す。シナリオを作成することによって、ITそのものとは一歩距離を置いた視点で自社の経営を見つめることができるわけだ。

 「ITありきで話を進めるとおかしくなってしまう。まず、戦略ありきで話を進め、ITを活用して何がしたいのかを明確にしていかなくてはなりません」(田中氏)

業務の標準化が大きな障壁に

 IT導入の根底には経営戦略がなくてはならない。確かにその通りだが、中堅・中小企業ではなかなかセオリーどおりに事が進まない。このことについて田中氏は「中堅・中小企業にはIT化を進める上で多くの壁がある」と指摘する。

 田中氏が考える中堅・中小企業の壁として、大きく「人材がいないこと」と「業務が標準化されていないこと」の2つが挙げられる。

 「人材に関しては言わずもがな。大手企業のように情報システム部門を抱えているわけでもないので当然です。それ以上に重要なのは、業務が標準化されていない点です。例えば、製造業ですとISO 9001などを取得し、業務の流れを理解していれば話は早いでしょう。しかし、そうでない企業の場合、社内でしか通用しない業務の在り方が標準になっています。それを変えることから始めなくてはなりません」(田中氏)

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