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ITmedia 特別鼎談 ITmediaエンタープライズ×@IT

「見える化」が救う企業ネットワークの未来

かつて企業は、システム化を進めていけば、そのすべての業務を統合的に管理できると思っていた。しかし実際に出来上がったのは、日々変化し細分化する業務内容に柔軟な対応ができないITシステムだった。企業が求める理想と現実が乖離してしまった原因はどこにあるのか。長年IT業界を取材し続けた編集長らが、今企業システムに押し寄せている変革の潮流をネットワークの展望とともに語る。
2006年04月07日 18時00分 更新

ただ夢を見ただけ?IT化への期待と現実

 市場のニーズに対して柔軟に対応し、顧客の要件は瞬時に満たす。生産から受注・納品までを一元的に管理することで、コストに無駄のない統合的な運営が実現する。

 多くの企業はそうした理想的なビジネス像を描き、社内システムを構築したが、現実はどうなったのだろう。営業部門ごとに個別の顧客リストを管理し、連携した情報共有ができない。依然として業務ごとにシステムを最適化しているため、全体としての現状を把握できていない。それらをつなぐネットワークもまた、目先のニーズに応えることを優先し、システム全体を考慮して設計されたものではなかった。このようなシステムで市場のニーズに素早く対応できるのだろうか?

 企業におけるIT化がもたらした恩恵は大きいが、現在直面する課題も、それ以上に大きい。長年IT業界を取材してきたITmediaエンタープライズ編集長の浅井英二氏、@IT発行人の新野淳一氏、そして@IT情報マネジメント編集部プロデューサーの鈴木崇氏が、ネットワークの理想と現実、今できる解決策などを語った。

浅井: 一部の業務処理の自動化からスタートした企業のITシステム化ですが、生産管理システムと人事システムの融合から発展したERP(Enterprise Resource Planning)が登場し、拠点間が専用回線で結ばれるようになったころからでしょうか、これで企業全体の業務内容を統合的に管理できる──そうした夢が実現できると感じた企業は多かったと思います。

asai.jpg ITmediaエンタープライズ編集長の浅井英二氏

鈴木: その点での変革は大きかったですね。ERPというカテゴリを作ったのはSAPですが、業務プロセスという観点から単一データベースでいろいろな業務を結び付けるというソリューションは画期的でした。しかし、いまではもっと多様かつ柔軟な業務連携が求められるようになってきました。

浅井: 分散コンピューティングやネットワーク技術の進展によって、システム化の領域はERPからサプライチェーンを管理するSCM(Supply Chain Management)や顧客情報に基づいた商品販売や保守サービスを実現するCRM(Customer Relationship Management)へと拡大しましたが、互いに連携するのは非常に難しいのが現状です。ネットワークをビジネスインフラの一部として、アプリケーションと融合していくという視点も欠けています。

新野: ホストから分散コンピューティングに移行し、さらに安価なIAサーバが登場したことによって、簡単にアプリケーションを開発できるようになりましたが、逆にさまざまなアプリケーションが乱立してしまいました。本来、システム化によって業務を統合管理したかったはずが、個別に専用アプリケーション、専用のネットワークを管理するという状況に陥ってしまっています。

浅井: そこで登場したのが、SOA(Service Oriented Architecture)です。個々の業務を「サービス」と位置付けて、その集合体を「システム」として構築する設計手法で、XMLベースのWebサービス標準が確立されたことによって、アプリケーション間の連携が容易であったり、サービスの組み合わせによって新たなアプリケーションが迅速に開発できるとして、大きな注目を集めています。またネットワークの分野でも、SOAに類似した概念として、回線とアプリケーション、マネジメントを融合させる新しいアプローチが登場しつつあります。

新野: いずれもサービス、または「モジュール」として業務をくっつけていくようなイメージですね。各モジュールが別々に存在している、つまり疎結合であるからこそ柔軟な構成が実現できるわけです。例えば、配送業者をA社からB社へ切り替える場合、これまでは専用のインタフェース仕様に合うよう、こちらの配送システムやネットワークを組み換えなければなりませんでした。理想的には、仕様に見合ったモジュールを組み込むだけで、数時間後には新しい配送業者を利用できるようになる。SOAの登場で、業務の効率化という目標を実現できるようになったと言えます。

niino.jpg @IT発行人、新野淳一氏

浅井: そうですね。変化のスピードが速いビジネスに対して、システムも柔軟に追従できるようになると、ビジネスプロセスの改善や、より安価な資材・サービスの調達が容易になるだけでなく、法規則への準拠も含む、さまざまな経営的な課題が解決できるようになるでしょう。さらに企業の在り方も想像を超える勢いで変わってきています。自社の強みに経営資源を集中させ、そうでないところはパートナーをフルに活用する傾向が見られます。システムが柔軟になれば、資材や部品の製造、物流、製品の組み立て、販売、納品、サポートといったバリューチェーンに幾つも企業がスムーズにかかわることができるようになります。

鈴木: そういう意味では、アプリケーションばかりではなく、それを支えるネットワークインフラの進展も大きな影響を与えています。企業のIT化に加え、ブロードバンドの普及が進むことで企業のネットワーク化が一気に促進されました。そうした流れを受けてADSLなどのブロードバンドを足回りに利用するIP-VPNサービスが登場、低価格で提供されるようになりましたが、企業は広帯域で高信頼のネットワークをより低コストで使いたいと考えています。

新野: 主要な拠点間は信頼性を重視し、小規模な拠点はコストを重視するといったように、複数のネットワーク技術をバランス良く組み合わせ、「帯域」や「信頼性」を確保しながら「低コスト」も実現する傾向が強まっています。ユーザーの選択肢が広がる一方で、さまざまなネットワークサービスの中からどれを選び、どのように組み合わせればいいのかが難しくなっています。

技術はそろっているのに……企業が直面する課題

 では、これらすべては実現したのだろうか?

浅井: 残念ながら、夢は夢のままで、システム化によって業務をきちんと把握できている企業は少ないでしょう。一例を挙げると、「ネットワークインフラ」を忘れがちです。ERPはメインフレームやオフコン、社内ネットワークが主流だった時代に登場しましたが、今やネットワーク技術の進展によってシステムは企業のデータセンターから外に向かって拡大しています。それなのにネットワークインフラにはなかなか目が向かないのです。アプリケーションのレスポンス、データのやり取りや保全など、処理しているのはアプリケーションですが、それを支えているのはネットワークです。

新野: ユーザー企業の多くは、ネットワーク運用が主要業務ではありません。そこがコアコンピタンスではないために、ネットワークに対する意識が低くなりつつあります。あって当たり前なんでしょうね。ネットワークの運用方法によって、動かしたい業務アプリケーションがうまく動作しないという可能性を、あまり意識していないのかもしれません。

鈴木: 専任のネットワーク運用者を置いてまでネットワークの面倒を見たくないと考える企業も多いのではないでしょうか。現在、最も高価な経営資源は人間です。希少な経営資源は本業に集中して、インフラなどは通信事業者などに運用管理を任せ、あとは提供される管理画面でトラフィックを監視する程度で済ませたいと考えているのです。

suzuki.jpg @IT情報マネジメント編集部プロデューサーの鈴木崇氏

浅井: テクノロジーのレイヤでは、常に上位のレイヤに価値が移行しています。ハードウェアよりソフトウェア、ソフトウェアよりソリューションというわけです。ネットワークインフラを提供する通信事業者は、ネットワークの重要性が高まっているにもかかわらず、提供価格を叩かれて、厳しい時代に入っていると聞きます。ネットワークが雲のようになって意識しないのはいいのですが、その必要性や重要性まで見えなくなっているのでしょう。

新野: そうなんです、見えないんですよ。特に業務が細分化され、複雑になっている今、インフラまで見えていては運用負担が大きすぎるのです。しかし、現状は、ネットワークがボトルネックになってアプリケーションが利用できないといった障害も発生しやすくなっています。

鈴木: 個人情報保護法や日本版SOX法などもあって、セキュリティや法令順守も課題です。メールや機密データをストレージに格納する場合、格納するタイミングや暗号化処理など、アプリケーション任せではなく、ネットワークインフラを前提としたアーキテクチャーから設計を考えるべきです。つまり、ネットワークインフラを意識しなければ、円滑なビジネス運営にならないと言えるかもしれません。

新野: セキュリティに対する要求が厳しくなった今、ユーザー側に「あれをやってはダメ、これをやったらダメ」と負担を強いれば、業務に支障をきたす可能性があります。なるべくアーキテクチャーレベルでセキュリティやコンプライアンスを肩代わりできるよう、設計する必要があるのでしょう。

浅井: ユーザーもそうですが、経営者もたいへんです。実際のところ、「うちのITインフラは法令を守れるのか」と心配する経営者が増えています。

鈴木:SOX法は、米国で導入された当初、財務部門だけの問題と認識されていたようですが、ネットワークインフラでビジネスが稼働する現在、IT全体こそ意識すべき問題だと気づき、慌てた企業があったそうです。その点、日本ではITインフラやネットワークインフラを含んだシステムの統制が当然といった形でSOX法が紹介されました。両面からのアプローチの重要性を初めから認識でき、また両面を把握する必要があることをインプットされたのは、とても 良い結果だと思います。

「見える化」が解決策?今必要なITインフラとは……

 実際に、アプリケーションとネットワークインフラを統合することは可能なのだろうか。

新野: 両者を統合するには、物理層からアプリケーション層まで理解し、把握している人が必要となります。最近のAPIはプロトコルベースになっていて、ハードウェアの速度やネットワークの遅延、帯域幅などまでアプリケーションの動作に大きな影響を与えるようになっているためです。きれいに統合されたインフラを作るには、全レイヤを熟知する人が設計しなければ実現できません。

浅井: 支店や営業所、あるいはパートナーへとシステムが拡大しているため、遠隔地を含め、ネットワークを軸にシステム全体を最適化するソリューションが求められていると思います。このあたりの動向は、今後注視しなければなりませんね。その試みの1つが、ネットワーク回線とアプリケーションの境目を企業に意識させず、さらにその管理も通信事業者が面倒を見ようというNTTコミュニケーションズのアプローチです。SOAの考え方と同様、サービスを標準的なインタフェースで組み合わせることができるため、「新しいアプリケーションを使うために、このネットワークを導入して……」という考え方が不要になるわけです。

鈴木: 同時に、あらゆるレイヤにおいて「見せる」ソリューションが重要になります。企業間やシステム間のデータの流れを横断的にモニタリングする「BAM(Business Activity Monitoring)」や、ビジネスプロセスに分析や設計、実行などのマネジメントサイクルを組み込んだ「BPM(Business Process Management)」は、現在の状況がリアルタイムで見えることが評価されて普及しています。今後は、ユーザーから見て最も近い場所にあるアプリケーションとそれを支えるネットワークインフラの両面から、企業の課題が「見える」ソリューションへの進化が求められるでしょう。

浅井: 機械に振り回されていた時代から、意識せずとも使える時代を迎えた今、企業のシステムも業務の現状をきちんと把握した上で、業務を改善したり、利益を上げる「シナリオ」に重点が置かれるようになってきています。経営課題に直面している企業をシステムがどう解決できるか、ネットワークインフラで改善できる点はあるかといった両面からアプローチできるシステムが必要になると思います。その意味で、回線とアプリケーション、マネジメントを包括したソリューションを提案しようとしているNTTコミュニケーションズの動向には注目したいと思います。

[ITmedia]

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提供:NTTコミュニケーションズ株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2007年3月31日