ブロードバンドネットワークへの対応が中小企業IT化のカギWPC EXPO 2005 Report(1/3 ページ)

中小企業のIT化で最も効果的な取り組みがネットワークの活用だ。「IT経営百選」として認定した中小企業IT化を見てもネットワークを有効利用して成功した事例が多い。持てるものと「持たざるものの壁がなくなってきている。

» 2005年10月31日 10時23分 公開
[宍戸周夫,ITmedia]

  宍戸周夫

 中小企業のIT化で、もっとも効果的なのがネットワークの活用であろう。経済産業省が「IT経営百選」として認定した中小企業IT化を見ても、Webによるマーケティング&セールスの展開やメール・携帯電話による情報共有など、ネットワークを有効利用して成功した事例が多い。それに呼応するように、国内のネットワーク基盤は整備され、大容量/高速ネットワーク環境が急速に普及している。ITをコンピュータとネットワークという2大要素で見れば、ネットワークの活用こそが中小企業IT活用のポイントと言っても過言ではない。

ネットワーク活用でビジネスを全国展開

 インターネットが、中小企業のIT化にもたらした影響は大きい。中小企業であっても、インターネットを使ってビジネスの全国展開ができる時代になった。これは、1980年代には考えられなかったことである。

 当時、ビジネス用途のPCはすでに普及していたが、インターネットは全く普及していなかった。中小企業は、ネットワークの恩恵を受けることもなく、自らのビジネスモデルを広くアピールする場も与えられていなかったのである。

 それに比べれば、現在はまさに雲泥の差といっていい。大企業であろうが中小企業であろうが、すべての従業員に電子メールや情報共有を行う環境が与えられ、日本全国はもちろん、全世界に向けても自社のビジネス戦略と優位性をアピールできる時代になった。

 山間の養鶏場で生産された卵がインターネットで評判を呼び、毎日大忙しで全国発送をしているというケースがある。裏を返してみると、ブロードバンド・ユビキタスの進展によって、消費者が地方の農産物の生産者にまでこだわり、ピンポイントで遠隔地の生産物を求める時代になっている。インターネットが普及する以前には考えられなかった現象である。

ネットワーク環境の有効活用

 中小企業が、このように急速に整備されたネットワーク環境を有効活用しない手はない。第一回目にもふれたが、レガシーの典型企業であった証券会社の中で、松井証券が勝ち組に躍り出たのは、まさにインターネットのパワーにいち早く目を付け、これを取り込んだからである。ネット証券は今では当たり前になったが、パイオニアとしてその市場を切り開いた功績は大きい。

 楽天、ライブドアのように、インターネットそのものでビジネスを展開する企業だけではない。製造業であれ流通業であれ、レガシーのビジネスモデルもネットワークを有効活用することでよみがえり、大企業に負けずに高い売上高経常利益率を獲得することができる。

 特に日本のITベンダーは、携帯電話のビジネス利用も含めてネットワークを基盤に高度なサービスを展開している。ある大手ITベンダーの経営者は「日本のネットワーク・サービスは、機能、サービス内容、そして信頼性においても米国に2年先行している」と豪語している。日本の中小企業にとって、10年前とは比べものにならないほど条件が整っているということができる。

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