名古屋市が悩んだ「分散NAS」の限界と、全庁統合でHDD/SSD階層化を選んだ理由

名古屋市はNASの分散運用を見直し、約2万人が利用する全庁共通のファイルサーバを構築した。その背景には、容量拡張では解決しない“ある課題”があった。

» 2025年12月23日 08時00分 公開
[後藤大地有限会社オングス]

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 行政デジタルトランスフォーメーション(DX)を進める名古屋市は、庁内のファイルサーバ運用を抜本的に見直した。同市は従来、各部署が個別に管理するネットワーク接続型ストレージ(NAS)を組み合わせてファイルサーバを運用してきた。この運用を見直し、職員約2万人が利用するデータインフラとして、全庁で共通利用するファイルサーバを新たに構築した。

「ファイルサーバは部署ごとのNASで足りる」という前提が崩れた

 名古屋市は庁内のファイルサーバとして、部署単位でNASを導入・管理しており、結果として百数十台のNASが散在していた。NASごとに管理方法やセキュリティ設定が異なっていたことから、ファイルサーバ全体の運用が複雑化し、庁内横断のデータ活用や、共通のセキュリティポリシー適用が難しくなっていた。

 行政DXの推進に伴い、名古屋市はインターネット接続を可能にする次期ネットワークモデルの移行を進めている。こうした中、ファイルサーバも厳密に管理できるようにする必要があった。加えて将来の施策変更や技術導入に耐えられるITインフラを実現するために、同市は庁内データを集約する新ファイルサーバの構築を決めた。

 新ファイルサーバ構築に向けた製品選定において、名古屋市は百数十台規模のNASをまとめて収容できる容量を必要とした。加えて今後のAI活用を見据え、データの増大を踏まえた段階的な拡張性も重視した。全庁利用を前提に、市内数百カ所の拠点からの同時接続に耐える処理性能や、限られた設置スペースで運用できる本体サイズも評価対象とした。

 名古屋市が新ファイルサーバの構成要素として採用したのは、デル・テクノロジーズのスケールアウト型NAS「Dell PowerScale A3000」だ。合計実効容量は旧ファイルサーバでは約70TBだったのに対し、新ファイルサーバでは約3PB(ペタバイト)と、40倍以上に拡張した。アクセス頻度の高いデータをSSD、低いデータをHDDに配置する階層化構成により、アクセス速度とコストのバランスを取った。

 可用性の確保も重視し、名古屋市は遠隔地へのデータレプリケーションにより、災害や障害が発生してもデータを保全できるようにした。具体的にはDell PowerScaleシリーズのスナップショット機能「Dell PowerScale SnapshotIQ」やレプリケーション機能「Dell PowerScale SyncIQ」を使い、外部のバックアップインフラにデータを転送する。管理者権限を持つ担当者でも容易にデータを削除できないようにすることで、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)によるデータ破壊・暗号化の被害に備えた。

 名古屋市は現業部門の業務への影響を抑えるべく、新旧ファイルサーバ間のデータ移行を無停止で進めた。現業部門の従業員が、誤って削除したファイルを自分で復元できる仕組みも用意した。ファイルサーバの運用管理には、容量使用量を制御するクオータ管理機能「Dell PowerScale SmartQuotas」や、稼働状況を可視化する管理ツール「Dell PowerScale InsightIQ」など、Dell PowerScaleシリーズの各機能・ツールを生かす。

 新ファイルサーバは2025年3月に本番稼働を開始し、名古屋市は2025年度中に旧ファイルサーバからのデータ移行を完了させる。本件は、デル・テクノロジーズが2025年12月18日に発表した。

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