GPLv3は予定どおりにいくだろう――モグレン氏LinuxWorld

エベン・モグレン氏は、LinuxWorld Conference & ExpoでGPLv3は予定どおりに進んでいると話した。LGPLとGFDLに対する変更についても新バージョンの最初の草稿を7月1日までにリリースする予定だ。

» 2006年04月07日 15時52分 公開
[Joe-'Zonker'-Brockmeier,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 マサチューセッツ州ボストン――Software Freedom Law Center(SFLC)の会長で常任理事のエベン・モグレン氏は、LinuxWorld Conference & Expoで火曜日にBoF(birds of a feather)のプレゼンテーションを主催し、GNU General Public License(GPL)バージョン3の草稿プロセスの進捗状況について論議した。モグレン氏によると、「Vistaは遅れるし、Office 12も遅れるが、GPLバージョン3は予定どおりにいくだろう」

 このBoFに先立ち、GPLv3やSFLCやそのほかのトピックについてモグレン氏と話をする機会があった。

GPLv3

 この1月、Free Software Foundationは以前から予想されていたGPLの改訂作業に取りかかった。予定では、2007年1月までに終了して使えるようにするということだった。

 モグレン氏によると、GPLv3の注解の分量は予想していたほど大きくないが、公開討論に使われているツールのせいもあって、コメントの質は良くなっているそうだ。

 このツールはStetといって、GPLv3プロセスのために特別に作られたものだ。モグレン氏によると、Stetでは、ユーザーが自分のコメントを追加する前に、既に作成されているコメントを見るようになっているため、コメントの数を減らす効果があった。また、ユーザーはコメントを作成する際にライセンスの特定の部分を選択しなければならないので、「結局見る必要がなかった」コメントの数を減らすことにもなったという。

 Stet(のコード)は今のところ公開されていないが、モグレン氏によると、FSFは近いうちにStetのコードをGPLの下でリリースするそうだ。現在、Stetは自動生成ツールのないXML形式に依存しており、GPLv3草稿でしか使用できない。FSFはこのアプリケーションを完成させて「まもなく」リリースするつもりだという。

DRMと特許

 モグレン氏によると、GPLv3プロセスではこれまでにGPLv3の主要な問題がDRMと特許であることを明らかにしたが、なぜもっと明快で簡潔なライセンスにできなかったのかとの声も若干あったそうだ。GPLv3をもっと明快で簡潔にする方法を大いに提案してもらいたいと思っているが、そうした提案はまだ非常に少ないという。

 しかし、モグレン氏は次の草稿に記載されるはずの多くの変更点を具体的に挙げはしなかった。彼が概略を説明してくれた唯一の変更点は、個人プライバシーの侵害に関係するもので、DRMセクションに含まれる。モグレン氏によると、著作権法を使って個人プライバシーを強化するというのは面白い考えだったが、規定を設けるとなると異論が出そうなので見送られたそうだ。

 モグレン氏は、リーナス・トーバルズ氏がこのライセンスについて作成したコメントにも言及し、カーネルチームがGPLv3を採用しなければGPLv3にどんな影響があるかという話をしてくれた。LinuxカーネルはGPLの「or any later version」という件を使っていないプロジェクトの1つだからだ。

 モグレン氏は「リーナス氏は私が非常に深刻に受け止めている事柄を述べた」と言ったが、モグレン氏はリーナス氏のコメントを特に重視しているわけではなかった。また、自分の目標はライセンスを良くすることであり、カーネルチームがGPLv3を採用しなければ「彼らから見て良いライセンスができなかった」ことになると力説した。

 モグレン氏は「完璧なGPLv2理論」と出合ったことも話してくれたが、これは現行のGPLでまったく問題ないという説である。驚いたのは、GPLv3草稿の発表前に、そういう立場を表明していないと思われる人たちから寄せられたからだという。

LGPLとGFDLに対する変更

 アップグレードの対象となっているライセンスはGPLだけではない。モグレン氏によると、FSFではLesser General Public License(LGPL)およびGNU Free Documentation License(GFDL)の新バージョンの最初の草稿を7月1日までにリリースする予定だ。

 モグレン氏は、これらのライセンスの草稿についてはあまり話さなかったが、現在のGFDLで出てきた問題の一部は新しいGFDLで解決されるかもしれないと語った。特にDebianプロジェクトは、GFDLライセンスで認められているドキュメントの変更不可部分(Invariant Sections)についてのGFDLの条項に関して問題があった。

そのほかのトピック

 先週、SFLCはSoftware Freedom Conservancy(SFC)を立ち上げた。モグレン氏の見るところ、SFCはフリーソフトウェアにとって――GPLv3を勘定に入れてもなお――「この春に起きた最大の出来事」かもしれないとのことだ。

 モグレン氏によると、SFCはフリーソフトウェアの開発者たちが自分自身でやろうとすると難しくて時間のかかるサービスを彼らに提供する割安な手段であるという。モグレン氏は多くのプロジェクトがSFCを活用するようになってほしいと語った。

 LinuxWorldトレードショー自体に関して、モグレン氏は企業がフリーソフトウェアの「理由」を理解し始めていると言った。モグレン氏は次のように語った。「以前は参加者の多くが、Linuxと周辺ソフトウェアがどこから来るのか分かっていなかったが、だんだん認識が高まってきて、フリーソフトウェアの考え方を理解し始めている。例え彼らがリチャード・ストールマン氏の言うフリーソフトウェアと同じ意味でこの言葉を使っていないとしてもだ。ベンダーの固定化を避けることについて語るとき、彼らは自由のことを言っているのだ。言葉の意味は違っているかもしれないが、以前よりも自由について気にかけている」

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