電子政府の国際比較調査に見る日本の現状激変! 地方自治体の現実(1/2 ページ)

インフラは整備されたが、アプリケーション、コンテンツの普及率が低い日本。電子政府への取り組みは進んでいるが、国際比較調査によってさまざまな課題が見えてきた。早稲田大学電子政府・電子自治体研究所の小尾敏夫所長に聞く。

» 2006年04月11日 09時00分 公開
[ITmedia]

このコンテンツは、オンライン・ムック「激変! 地方自治体の現実」のコンテンツです。関連する記事はこちらで一覧できます。


 前回、国内における電子自治体進展度ランキングについて触れたが(関連記事参照)、早稲田大学電子政府・電子自治体研究所では2005年12月に世界の主要32カ国を対象とした電子政府の進ちょく動向を調査・検証した世界ランキング結果「世界電子政府進ちょく度調査」を発表した。


 バランスの取れた「理想の電子政府」に向け、その進ちょくを調査する目的で実施された今回の調査は、2004年度の調査に次いで第2回目となる。

 調査は「ネットワーク・インフラの充実度」「インタフェース・オンラインサービス」「マネジメントの最適化」「ホームページの状況」「CIO(最高情報責任者)の導入・評価」「電子政府の進ちょく状況」の6分野28項目にわたり、特定の機能に重点を置く部分最適からの視点ではなく、電子政府と国家の経済社会活動などとの相互関係も考慮し、全体最適の重要性を踏まえて評価が行われている。

 調査項目の各指標は基本的に数値化できるデータを基にしているが、社会環境などの質的要素を検証するため、関係者へのインタビュー、アンケートなども実施している。また、電子政府の進ちょく度についてランキング作成における数値化された指標だけでは一概に評価できない部分の検証も行っている。

 今回の調査について早稲田大学電子政府・電子自治体研究所の小尾敏夫所長は「2005年4月から10月まで、世界14カ国の研究員・留学生30人のスタッフが取り組んだ。6分野についてインフラからアプリケーションまでをカバーし、世界で唯一の総合的な調査だ」と語る。

 この調査でトップとなったのは米国。次いでカナダ、シンガポールと続く。ここまでは前回と変わらないが、4位以下は大きく変わっている。4位には前回7位だった日本がランキングされているが、後に続く韓国、ドイツ、台湾といった国々との差はわずかなものとなっている。また、上位国との差も同様であることから、上位ランク国における電子政府への取り組みは概して進んでいると言える。

ランク 第1回 第2回
1 米国 米国
2 カナダ カナダ
3 シンガポール シンガポール
4 フィンランド 日本
5 スウェーデン 韓国
6 オーストラリア ドイツ
7 日本 台湾
8 香港 オーストラリア
9 マレーシア 英国
10 英国 フィンランド
第1回調査との比較。4位以下が大きく入れ替わっているが、その差は小さい

調査に見られる傾向

 電子政府の土台ともなるインフラ面での構築度は、先進国と一部発展途上国の格差は狭まりつつある。また、中国のように普及率は高くなくてもインターネット利用者数やパソコン保有者数を見るとかなりの規模に達している国もある。同時に、電子政府の基幹システムの導入の進ちょく状況についても差は縮まる方向にあると言える。

 そんな中、「オンライン申請」「電子納税」「電子決済」など各種オンラインサービスについては、各国で導入が急速に進みつつあり、「質」を重視するフェーズに入りつつある。しかし、電子投票については各国ともまだ十分な進展が見られないことが指摘されている。

 また、オンラインサービスの窓口となるWebページについては、多言語対応(国連公用語対応)については、自国語版と英語などの国連公用語版とで内容が異なることも多い。特に英国、米国、フィリピン、シンガポールなどの英語圏諸国では英語以外の言語対応に対する消極的な姿勢が見られ、また、欧州諸国でもEUの2大公用語である英語、フランス語への対応が実現されていない国も多いなど、いまだ課題も多い。

 こうしたIT社会への流れに遅れることなく対応していくにはCI0の育成・導入が不可欠となる。経営戦略とIT戦略の橋渡しを行うCIO、またはそれと同等の職位を導入するなど、多くの国が電子政府を国家戦略の中軸に位置づけているようだが、IT戦略・法体系・組織の構築については今後に課題を残す国も多く、またその評価体制についても本格的な整備はこれからと考えられる。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ