MSN広告料金の目減りは自社開発adCenterが影響(1/2 ページ)

次世代の“Live”サービス上でのディスプレイ広告の販売、adCenterパイロットプログラムの段階的な拡大など、広告事業の拡充を進めるMSN。苦戦は続くが、市場勢力図の塗り替えを虎視眈々と狙っている。

» 2006年04月12日 07時00分 公開
[Matt Rosoff,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 オンライン広告の収益増加策の一環として、MicrosoftはMSN Spacesおよび現在β段階にある次世代の“Live”サービスの一部でディスプレイ広告のテストを実施している。また、自社開発した検索連動型広告プラットフォーム「adCenter」の新規広告主の確保を米国で進めている。Microsoftのオンライン広告プログラムの充実に伴い、他のWeb企業、特に現在MSNの検索連動型広告サービスの大半を提供しているYahoo!と、ほぼ全収益をインターネット広告から得ているGoogleが大きな打撃を受ける可能性がある。

adCenterへの移行で収益は頭打ち

 広告主が検索結果ページ上の広告表示権をかけて入札を行う検索連動型広告は、現在最も成長の著しいオンラインビジネスである。しかし、MSNの検索連動型広告の収益は、2004年12月から2005年12月にかけて減少している。対照的に、市場リーダーのGoogleは、同社サイト上での広告収入を実に104%も成長させている。Googleほどではないものの、同一期間におけるYahoo!の広告総収益も39%、金額にして13億2000万ドルの伸びを見せた。しかし、MSNの総広告収益の成長率はわずか12%、約3億3000万ドルに過ぎない。

 Microsoftはこのオンライン広告ビジネスの不振の原因は、検索連動型広告エンジンを自社開発のadCenterに切り替えているためだとしている。2005年秋までMSNは、検索連動型広告サービスの運用をOverture(Yahoo!傘下)に委託していた。しかし、MSN SearchでOvertureからadCenterへの移行が徐々に進むにつれて、MSNでの1検索あたりの広告料金は目減りしている。Microsoftはこの原因を明示していないが、最大の理由として考えられるのはadCenterがフランスとシンガポールの2カ国でしか正式運用されておらず、他の国や地域ではパイロットプログラムの段階に過ぎないため、Overtureと比べて広告主の数が格段に少ないことだ。ある検索キーワードに対する広告表示権の料金は、オークションの結果の都度決まるため、広告主の数が少なければ競争率も低くなり、必然的に広告表示権の料金も低くなる。

 言い換えれば、adCenterではOvertureとの契約終結以降目減りしている収益分をまかなえるほど十分な広告主を確保できていないのだ。Microsoftは当面この傾向が続くと見ており、2006年第2四半期の財務報告書において次のように述べている。「広告ビジネスについては、MSN adCenterのリリースと本格運用の準備、およびこれに伴う検索連動型広告料金への影響によって、全体的に引き続き鈍い成長となるだろう」

 この状況を緩和するため、同社はadCenterによる新しいプラットフォームの準備が整い次第、順次新規広告主を獲得できるよう努めている。2006年初頭から同社は米国でのパイロットプログラムを拡大し、検索エンジンマーケティング企業に同プログラムへの参加を呼びかけている。また、3月6日には1日限定で一般広告主の同プログラムへの参加を受け付けた。同社は今後数カ月にわたり、adCenterプラットフォームの拡張に合わせて、このような期間限定での一般公開を実施していく予定である。2006年3月末日時点では、米MSN Searchでの検索連動型広告の約40%が、OvertureではなくadCenterにより提供されている。OvertureからadCenterへの移行は、2006年末までに完了する予定だ。

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