サイボウズ社長、青野慶久氏は最近のIT市場の動きについて、顧客が以前にも増して投資対効果を注意深く見極めようとしていると話す。成長企業の創業以前のエピソードから今後の事業戦略まで存分に語ってもらった
元気のあるところが少ないと言われる国産のソフト開発会社。そんな中、ウェブベースのグループウェア製品を中心とした企業向けソフトで急速に頭角を表してきたのがサイボウズである。IBMやマイクロソフトといった世界の競合にも引けをとらず、「グループウェア市場をサイボウズ一色にする」と力を込める青野慶久社長。創業メンバーのひとりでもある氏が語る同社のこだわりとは。
グループウェアといえば、1990年代まではIBMの「ロータス ノーツ」、マイクロソフトの「エクスチェンジ」といった世界ブランドの製品が、日本市場でも激しい勢力争いを繰り広げてきた。その二大勢力が君臨する市場に新風を吹き込み、2000年に入って急速に頭角を表してきたのがサイボウズである。
97年8月、愛媛県松山市のマンションの一室で産声を上げた同社は、「簡単・便利・安い」を合い言葉に、企業向け情報システムを簡単に実現できるような製品開発とサービス提供に取り組んできた。その結果、当初から主力製品として提供してきた中小規模向けグループウェア「サイボウズ オフィス」は、今や2万2000社を超える企業に利用されるまでになった。
ちなみにサイボウズ(Cybozu)という社名の由来は、「電脳」を意味する「cyber」と親しみを込めて「子供」を呼ぶ「坊主(bozu)の造語によるもので、「電脳社会の未来を担う若者たち」という意味を込めているとのこと。ITベンチャーらしい軽妙なノリだが、そのベースには市場のニーズを読み取る鋭い感性と強いこだわりがある。それこそがサイボウズという会社の真骨頂なのだろう。
アイティセレクト 最近のIT市場の動きで最も印象的だと思われる点は。
青野 お客様が製品やサービスを購入しようとされるとき、以前にも増してその使い方や投資対効果を注意深く見極めようとされるようになったことです。ここ2、3年、市況は少しずつ良くなってきていますが、お客様の眼は浮ついた感覚があったITバブルの頃とは明らかに違っています。
こうした状況は当社にとって追い風となっています。なぜなら、かつては世界的にネームバリューのある製品を選んでおけばよいという風潮がありましたが、ここ2、3年は国産でも優れたものならば選択していただけるようになったからです。
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