災害時、安否確認のために自治体は何をすべきか? 激変! 地方自治体の現実(1/3 ページ)

新潟県中越地震でひときわ大きな注目を集めた安否確認システム「IAAシステム」は、すでに実用化のフェーズに入り、自治体の連携による運営体制を模索している。同システムが今後、自治体の災害対策の1つとして位置づけられる可能性は高い。

» 2006年04月20日 08時30分 公開
[中村文雄,ITmedia]

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 災害が起きた際、多くの人が固定電話や携帯電話によって家族の安否を問い合わせる。1995年に発生した阪神・淡路大震災の際には、安否問い合わせの電話が殺到して電話交換機の処理能力を超え、電話がつながらない輻輳(ふくそう)という状況が長時間続いた。この教訓から、通信事業者は災害時における安否確認システムを構築しており、今もその拡充に努めている。

 通信事業者とは別に、やはり阪神・淡路大震災を契機に、WIDEプロジェクトのライフラインワーキンググループが中心となり、安否確認のシステム構築を進めてきた。そのシステムは、「I am alive」を略した「IAAシステム」と名づけられ、「誰でもどこからでもインターネットで安否を確認できる」をコンセプトに開発が進められた。その後、情報通信研究機構(NICT)のメンバーが中心となって研究開発が進められてきた。

 IAAシステムは、被災者が姓名などをインターネットで登録して、家族に自分の安否を知らせるシステム。登録する情報は、ふりがな、漢字、通称、けがの程度、避難場所、特徴など。英語での登録も可能になっている。誰でも検索が可能であることも、その特徴の1つだ。通信事業者の場合、契約者にしかサービスが提供されないケースもあるが、IAAシステムではインターネットを利用できる環境があれば、誰でも登録、検索が可能となっている。

 IAAシステムは2000年の有珠山噴火による災害から実験が始まり、2001年の米国同時多発テロ、2002年の宮城県北部地震、2003年のイラク戦争、十勝沖地震、2004年の新潟県中越地震、スマトラ島沖地震、2005年の福岡県西方沖地震、8.16宮城県沖地震、ロンドン同時多発テロなど多くの災害・事件で安否確認に用いられてきた。2002年には産官学の研究者によってIAAアライアンスが結成され、IAAシステムの普及、啓もう活動を展開しており、現在、実用化への道を模索しているところだ。

情報通信研究機構・情報通信セキュリティ研究センター推進室室長の中沢淳一氏(左)と海老名毅氏(右)
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