設計・開発フェーズでEAと結びつくSOAITライフサイクルマネジメントの新発想

EA、SOA、ITILなどをシステムのライフサイクルで捉えると、その関係性が明確になってくる。ITライフサイクルそのものがマネジメントシステムを構成するものである。

» 2006年05月15日 07時00分 公開
[増田克善+アイティセレクト編集部,ITmedia]

 EAとSOAの関係については、最近になってウェブや雑誌で目にするようになった。SOAでいうところのサービスには、ある程度自立しており、受け取ったデータを基に、必要な処理を他のシステムから独立して行うことができるものという意味があるだろう。さらに一アプリケーションやその機能という位置づけでなく、「ビジネス的に意味のある処理を一括して行う」ものがサービスであるという考え方があり、SOAを実施するには必然的にビジネス体系が必要となってくる。サービスを設計するには、どんなサービス単位がビジネス遂行上必要とされるのかを明確にしていかなければならないからだ。

 EAの活動の中で、業務プロセスを可能な限り標準化し、システムを統合していくステップがある。標準化した業務プロセスは大きな意味でのサービスであり、SOAではそれをさらに細分化したサービスとして構成する。そのサービスを、業務プロセスを記述した仕組みに従って呼び出し、組み合わせて実行するのがSOAである。

 こう考えると、EAとSOAは変化に対応できうる業務組織、あるいは変化に耐えうるITシステムという目的も同じであり、EAとSOAとは本来切り離して議論できないものとなる。EA的な背景なしにSOAの導入に取り組むというのは、少々考えにくい。つまり、EAによって作成されたビジネス設計図をITシステムに落とし込む際に、現在の最適なシステム設計・開発手法がSOAだということになる。

SOAに基づいて実際にITシステムを構築する段階でPMが機能する。その際には「コスト」「スケジュール」「品質などのパフォーマンス」に焦点を絞り、プロジェクト全体の実績状況を科学的手法によって分析するEVM(アーンドバリューマネジメント)といったマネジメントシステムが利用されることになる。もちろん、PMはシステム構築にかかわるものだけでなく、EAの導入プロジェクトからすべてにかかわるマネジメントシステムである。

経営のマネジメントサイクルとしてITを捉える

 ITライフサイクルの中で、ITILの中核部分が運用・保守フェーズだ。ITILのサービスサポート、サービスデリバリーには、サービスデスクやインシデント管理、サービスレベル管理、キャパシティ管理など11のプロセス管理を実施する手順が示されている。これをエンドユーザーや顧客のサービスという視点で見て、メールのサービスや受注管理のサービスといったサービス群を管理し、ビジネスプロセスと合致したITサービスを最適化することが目的だ。こうした考え方は、粒度の大小はあるにせよ、SOAにおけるサービス化とまったく同じ視点に立っている。

 このようにEA、SOA、PM、ITILをシステムのライフサイクルで捉えると、その関係性が明確になってくる。それぞれがマネジメントシステムであり、PDCAサイクルによって効果を向上させるもので、ITライフサイクルそのものがマネジメントシステムを構成するものである。  これまでは企業内のIT専門家であるCIOと情報システム部門が把握管理を行ってきたITシステムのライフサイクル管理だが、IT投資とその効果を把握し最大化するために、経営者自らがITライフサイクルマネジメントへの認識を深め、経営のマネジメントサイクルに組み込んで考えることが必要である。           

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