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» 2006年05月15日 14時17分 UPDATE

Magi's View:GPLの順守の現状と問題点 (1/3)

GPLの次期バージョンの完成に向けたFree Software Foundationによる作業が進む中、現行バージョンのGPLを企業側に順守させるべく、フリーソフトウェア開発者たちの奮闘が続けられている。

[Joe-'Zonker'-Brockmeier,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 GNU General Public License(GPL)の次期バージョンの完成に向けたFree Software Foundation(FSF)による作業が進む中、現行バージョンのGPLを企業側に順守させるべく、フリーソフトウェア開発者たちの奮闘が続けられている。

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 フリーソフトウェアのライセンスに対する違反行為と、プロプライエタリ系ソフトウェアのライセンス違反の場合とでは、異なる扱い方を受けるのが普通だ。この場合の開発者たちが求めているのは、金銭的な見返りや競合他社の処罰ではなく、単に互恵主義をうたったライセンスを順守してもらうことだからである。こうした違反行為が大々的に報道されるケースは稀だが、その陰では多数の違反行為に対する地道な調停活動が行われている。

 Software Freedom Law Center(SFLC)のリーガルディレクターを務めるダン・ラビチャー氏によると、GPLの規約に違反している企業の大部分は「悪意があってそうしているのではなく、単に気づいていないだけです。管理職も経営責任者も、そうしたものが存在していることを知らないのです」ということになる。

 こうした問題の原因の一部は、GPLそのほかのフリーソフトのライセンスが誤解されているためであり、意図的にフリーソフトウェア開発者から搾取しようと目論んでいるのではないだろう。企業的な発想では、コードのライセンスとは課金の対象物でしかなく、GPLそのほかのフリーソフトライセンスの掲げる互恵主義というのは、多くの企業やプロプライエタリ系ソフトウェア的な発想からすると、どうやら理解に窮する理念のようである。

 そのほかの要因としては、怠慢や不注意ということも挙げられるだろう。開発者たちは常に締め切り日と戦っており、管理業務に関する十分な知識もなければ、そうした煩雑な作業を代行してくれる人間も存在しない彼らにとって、GPLの適用コードを丸ごと流用してプロジェクトの進行を早める、というのはよくある事態のはずだ。最もラビチャー氏も言っているように、明白な悪意に基づくケースは稀ではあるが、まったく存在しないというわけでもない。

 かつてBusyBoxのメンテナを務めていたエリック・アンダーセン氏によると、違反行為はかなりの頻度で行われているという。「ライセンス規約に違反してBusyBoxを使用しているデバイスそのほかの機器に関する報告を、毎週3件程度は受けていますね。ベンダーがソースのサポートを怠っていたり、ソースの提供をしなかったというものもありますが、多くのケースは、LinuxやBusyBoxを使用しているのが明白であるにもかかわらず、これは純然たるプロプライエタリなソフトウェアです、と謳っているのです」。

違反行為の法的追求

 アンダーセン氏によると、法律家である同氏の父親が違反行為の追求を検討したものの、そうなると補助員や秘書などの人件費を支払わなければならず、「とんでもない負担」を覚悟しなければならなかったという。GPLの規約は「うちの親父さんの法律事務所に支払うべき経費を、一文たりとも稼いでいなかったですからね。そうした事情があるものですから、強制的なGPLの順守という課題は、毎度必然的に優先順序の再下段に追いやられることになる訳です」とアンダーセン氏は語る。

 現職のBusyBoxメンテナであるロブ・ランドレイ氏によると、GPLの違反行為はBusyBoxの開発側に時間的および労力的な負担を強いているだけではなく、少なくとも1人の開発者に同プロジェクトからの離脱を決意させているという。

 この問題は、ここしばらく燻り続けていたが、結果としてそのツケを払わされたのは開発サイドであった。話は1年前に遡るが、開発者として貢献すること著しかったグレン・マクグラス氏は、ライセンスの順守活動に寄与しようとした結果、同氏が製造メーカから購入したルータのソースコードを不正に解読したということで巻き込まれた泥沼の法廷闘争に嫌気がさし、GPLに対する意欲を完全に失ってしまったのである。非商品化されているはずのコードが、ライセンス条項の提示にもかかわらず、なし崩し的にプロプライエタリ系のプロジェクトに取り込まれてしまった結果、その開発から手を引かざるを得なくなったという、同様の経験をした者はほかにも多く存在している。

 一方でラビチャー氏は、GPLの規約違反は「仮に行われているとしても、特別に急増している訳ではありません」としている。同氏が指摘するのは、著作権の有効期間は非常に長いため、その違反行為は「実質的に時効で逃れることができません」という点であり、また企業側も、後日に違反行為をとがめられる可能性がいつまでも残り続けるため「違反しても黙っていればいい」という態度で済ます動機も薄いことだ。また同氏は「まともな判断力のある会社であれば、GPL系ソフトウェアを搾取してもメリットはないと結論するでしょう」とも語っている

 このようにラビチャー氏は違反件数は増加していないととらえているが、アンダーセン氏、ランドレイ氏、およびgpl-violations.orgの創始者であるハラルド・ウェルテ氏は、違反率は増えていると見ている。真相は、全体的な違反件数は増加していないものの、組み込みデバイス市場での報告数が増加しているといったところだろう。ウェルテ氏が同氏のブログに掲載した意見では、「新たなGPL違反行為の報告数および発覚率は、特に組み込み/アプライアンス市場において顕著です。例えば、ざっと解析して何らかの形でライセンスに準拠していると分かるLinuxベースのNAS製品というものを、わたしは過去に1つも見たことはありません。しかもこれは、1ないし2基程度のHDDを搭載したSoHo NASボックスに限った話ではなく、企業用のストレージシステムについても当てはまるのです」ということになる。

 ウェルテ氏は、GPLを順守させるための活動に費やされる時間についても不満を漏らしている。「わたしは、カーネルの開発作業を愛してやまない、骨の髄からの技術屋にすぎません」とし、「技術の世界と法律の世界の両方に通じた優秀な何人かの法律家と知己を得ていますが、それにもかかわらず、わたしにとって“生産的”とはまったく思えない活動に、際限なく時間が吸い取られているのです。わたしの時間の50%から60%は、常にこの種の活動に費やされています」というのが同氏の主張だ。

 開発者が本来適していない分野の作業に携わらなければならないことも、この問題の1つの側面だろう。ラビチャー氏は、規約順守の強制は「法律の専門家がいなければ困難ですが、そうした専門家の協力があれば、それほど困難ではありません」と語っている。これはつまりラビチャー氏によると、弁護士でない人間が企業に抗議の手紙を書いたとしても、相手は真剣に受け取らないだろうからだ。「企業には、連日大量の手紙が配達されてきます……。(正当な抗議文を)検討に値しない内容の抗議文と区別するのは、非常に困難ですね」。

 またラビチャー氏が指摘するのは、仮に同氏が違反行為の追求をするとすれば、GPLへの準拠を求める交渉を相手側の企業内弁護士に直接行うようにするというのだが、これも開発者個人が行うには難しい行為である。

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