ESA戦略は成熟段階へ、自信をのぞかせるSAPSAPPHIRE '06 Paris Report(1/2 ページ)

パリで欧州顧客向けの年次カンファレンス、SAPPHIRE '06 Parisが開幕した。会場には、世界72カ国から約8000人の顧客やパートナーが詰め掛けるなど、ソフトウェア欧州最大手の力を見せ付けた。

» 2006年05月31日 08時57分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 SAPは5月30日、フランスのパリで欧州顧客向けの年次カンファレンス「SAPPHIRE '06 Paris」を開催した。初日、会場となったParis Expo Porte de Versailleの7万平方メートルの展示スペースには世界72カ国から約8000人の顧客やパートナーが詰め掛けるなど、欧州最大手のソフトウェアベンダーの威力を見せ付けた。この日の朝、基調講演のステージに立った同社会長兼CEOのヘニング・カガーマン氏は、ビジネスイノベーションの重要性を説き、それを実現する「mySAP ERP 2005」への移行を呼び掛けた。

ESA戦略に自信を見せるヘニング・カガーマン会長兼CEO。午後のプレス発表会では、SAPがGoogleかIBMかMicrosoftかに買収されるといううわさを否定した

製品ではなくビジネスのイノベーションを

 カガーマン氏はこの日、SAPのビジョンとロードマップについて事例を交えながら語った。SAPは2週間前に米国で「SAPPHIRE '06 Orlando」を開催したばかり。パリのSAPPHIREはそれを踏襲する形となったが、中規模企業の比率が高い欧州市場を意識して、中規模企業への戦略にも時間が割かれた。

 「ITを戦略的に利用する、これに異論はないし、ほとんどの経営者がこれを理解している」とカガーマン氏は切り出す。だが、具体的にどう利用するのか……、この点では各社の理解度、あるいは利用のレベルは異なるようだ。

 「成功している企業に共通していることがある」とカガーマン氏。それは、単に製品を販売することから、顧客が本当に望んでいるもの、例えばサービスなどを提供することに拡大することだ。原点に戻るともいえる、このような発想の転換こそ、企業のイノベーション、成功につながる。そして、いまの企業に求められるのは、「製品のイノベーションではなく、ビジネスのイノベーション」とカガーマン氏はまとめる。これを実現するのがSAPのソリューションとなる。

 だが課題はある。まず、顧客を満足させるためには、自社内にある複雑性を管理しなければならない。複雑性とは人とプロセスになるが、自社がこれを管理できる体制を敷いていなければ変化に適応できない。次に、ビジネスプロセスによるイノベーションは高速化しなければ意味がない。たとえイノベーションを実現できたとしても、その「専売特許」はすぐに新規性を失う。ライバルはすぐにコピーし、追いつくからだ。

 このような課題を克服するにあたり、カギを握るのは、ビジネスの「接続」だ。それには、「共通のビジネス言語が不可欠」とカガーマン氏は言う。Webサービスのように、技術のみをカバーした接続では不十分だ。SAPはこれをビジネスのレベルに引き上げるため、Enterprise Service Repositoryを提供するが、この「言語」はパートナーらとともに策定する。

 その特徴はセマンティックだ。「信号の赤、黄、緑、これは各国共通だが、黄色の解釈は国により異なる。黄色だから止まる文化があれば、赤になる前にスピードを出して進む文化もあるだろう」とカガーマン氏は笑う。セマンティックがあれば、あらゆる規模の企業が理解できる言語となる、とカガーマン氏。

 しかし、共通のビジネス言語だけでは不十分だ。SAPは同時に、Enterprise Serviceとしてすぐに利用できるサービスの提供も進める。このEnterprise Serviceを合わせることで、ビジネスイノベーションを加速できるというのがSAPの考え方だ。

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