環境や目的ごとに見る導入検討ポイントシンクライアントの真価を問う(1/2 ページ)

一口にシンクライアントシステムといっても、さまざまな方式があることは紹介したとおりだ。ネットワーク環境や利用ソフトウェアなどの条件ごとに、それぞれ適切な方式を考察してみよう。

» 2006年06月20日 11時45分 公開
[宮本久仁男,ITmedia]

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 ここまでの話で、シンクライアントの活用が可能なケースと不向きなケースが、ぼんやりとではあるが見えてきた人もいるのではないだろうか。そして、実現方式の違いによる向き不向きもだんだん見えてきたと思う。

 それでは、具体的に「どのような利用条件でどんな方式が選択可能か」を考えてみよう。ここでは利用条件を大きく「ネットワーク環境」と「利用するソフトウェアの環境」に分けて考えてみたい。

環境や用途ごとに見る最適な方式

・Case1:LAN環境に接続された端末をシンクライアントに置き換えたい

 LAN環境であれば、基本的にはどの方式を選択してもよい。ただし、ユーザーの利用環境によってはシンクライアント化が難しいケースもある。

 デジタルカメラなどさまざまな周辺機器を使うケースであれば、ネットワークブート型のシンクライアントソリューションが考えられる。端末は既存のPC(ただしディスクレスのもの)を用いるなどして自由度を高めつつ、エンドポイントでのポート/デバイス利用を制御する別のソリューションを用いて「指定された以外の機器」に関する接続制限をかけるのが適切だろう。

・Case2:WAN経由でも使う環境をシンクライアントに置き換えたい

 WAN経由で使うという条件が加わった時点で、ネットワークブート型のものは候補から外れる。というのも、ネットワーク経由でのOSブートは、ネットワーク帯域が広いことを前提としているからだ。ブート後のデータアクセスもネットワーク経由で行うため、起動後も相応のトラフィックが発生する。

 このようなケースであれば、画面転送型もしくはAPIトラップ型を採用するのがベターである。

 最近では地方でもADSLや光ファイバ接続が普及しており、WAN回線の速度も高速になっている。そのような環境であれば、画面転送型もしくはAPIトラップ型のいずれの製品を使ってもよいだろう。ただし、FOMAやPHSによるモバイル接続も考えるのであれば、画面転送型の中でも帯域を節約できる製品(Citrix Presentation Serverなど)やAPIトラップ型の製品を用いるなどしたほうがよいだろう。

・Case3:レガシーなアプリケーションも使いたい

 ここで言う「レガシーなアプリケーション」とは、1台のコンピュータで1つのプログラムだけが動作することを想定しているアプリケーションと考えてほしい。つまり、複数のユーザーによる同時利用は前提としないアプリケーションだ。このようなアプリケーションを使う場合には、Windowsターミナルサービス(WTS)など、1つのOS環境を共同利用する方式では動作保証が困難になる。

 したがってこのような場合は、ブレードPC型の方式を用いるのがベターだろう。アプリケーション側から見れば、単一のPCの上で自分(=プログラム)が1つだけ動いてるようにしか見えないので、本質的に問題は生じない。そのほか、1つのOSを共同利用するタイプのシンクライアントソリューションでも、Citrixの「Citrix Presentation Server 4.0」(CPS)のように、仮想的にユーザー環境を独立させるような機能を持った製品で対応可能なケースもある。

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