「背骨」だけでなく「脳」にも投資を――SAS Internationalのクック社長

SAS Internationalのアート・クック社長は日本企業が今後情報系システムへの投資をこれまで以上に拡大させる必要があると強調する。

» 2006年06月22日 08時00分 公開
[聞き手:怒賀新也,ITmedia]

 SAS Internationalのアート・クック社長は、日本企業が今後情報系システムへの投資をこれまで以上に拡大させる必要があると強調する。ERPで莫大な投資を行いながらも業務プロセスの改善を狙い通りには実現できていない企業が多い一方で、企業戦略に直結する情報系システムには投資自体が行われていないとする同氏に話を聞いた。

企業において「ERPは背骨、ビジネスインテリジェンスは脳」と指摘するクック氏。今後は脳への投資が本格化すると話している

ITmedia 現在のビジネスの状況について教えてください。

クック 昨年は10%の成長を果たし、好調です。

ITmedia 好調の要因は何でしょうか。

クック SASのビジネスは、テクノロジー層、人事や顧客管理、財務にかかわるビジネスソリューション層、そして、銀行や流通といった業種別ソリューション層という3つに分かれており、すべてのレイヤーで成長しています。それを支えているのは、Management Information(経営情報)を利用する仕組みを確立させたいという企業のニーズがあることです。

 過去数年間、企業はERPを導入することによって、業務プロセスの課題に対処してきました。しかし、Management Informationの利用については、むしろ状況は悪くなっているとさえいえます。そこでわれわれは、企業における情報利用に進化と革命を起こしたいと考えています。そのコンセプトの背景には、企業の多くが、個人レベル、部署レベル、部門間で文書を作成していることが挙げられます。しかし、そこでレポートを作成する際に「インテリジェンス戦略」が欠如しているのです。情報とは本来、イノベーションを起こすべきものであることを再確認することが重要ですが、それを支えるテクノロジーがこれまであまり適切ではありませんでした。

 プロセスの実行と監視だけでは不十分であり、戦略やプランニング、予測、モデリングまでをManagement Informationを用いて行う必要があります。しかし、そこまでできている企業は少ないのが現状です。こうしたことを可能にし、組織のパフォーマンスを高めていくことがSASの狙いです。

ITmedia 具体的にはどんなシステムが必要になりますか。

クック 最も重要なのはタイム(時間)です。適した情報系システムを数年ではなく、数週間で構築することが重要です。そして、新たな要件に対する修正を数日で行えることも決定的に重要です。修正を早くシステムに反映できれば、意思決定のためのより正確な情報を扱うことができます。また、(不正経理が発覚した)EnronやParmalatの事件により、組織情報を透明化することに大きな注目が集まっています。

リスク管理

 例えば、SASのソフトウェアでは、資金洗浄(マネーロンダリング)や詐欺行為を「顧客行動」としてとらえ、顧客との関係を改善する取り組みと結びつけて解決を図ります。このようにして、組織にとっての間接費を競争上の優位点に変えていくわけです。

 欧州では、銀行業向けの規制であるBASEL IIや、保険業向けに新たに制定されたソルベンシーII(ハリケーンや地震などが起きて、多額の保険金支払いが発生した場合も対応できるだけの資金を確保しておく、という内容)といった規制があります。こうした法規制への対応を管理コストの掛かる負荷ととらえるのではなく、パフォーマンス管理の対象に含めてシステム的に対応し、それによって経営の改善につなげていくことが必要です。

着実に効果を上げるユーザー企業

ITmedia 効果を上げた典型的な事例を教えてください。

クック ノルウェーと米国の合弁企業である石油採掘企業、Conoco-Phillipsは、SASのダッシュボードを導入しました。同社は、油田の掘削をする際に、各掘削井戸から常に200に上る情報をリアルタイムに監視しています。そして、監視情報を基に「次にメンテナンスが必要な井戸」を予測しています。こうした情報の管理により、掘削に必要なドリルの先に装着するダイヤモンドの数を削減させたり、また、掘削における歩留まりを改善させたりといった効果を上げています。

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