Ajax相乗のAdobe Flex 2、開発環境を無償化

2006年3月から開始されたβテスターは6万5千人を記録した。Adobeは、Flex 2でWebアプリケーション開発に躍起だ。FlashとAjax相乗で実現するWebアプリケーションの進化とは。

» 2006年06月30日 06時45分 公開
[ITmedia]

 Ajax人気を追い風にして、Webアプリケーションへの期待が高まっている。特に最近ではエンタープライズの分野でリッチクライアントが大きなキーワードとなっており、さまざまなプロダクトが登場しているのが背景だ。

 8月末にアドビ システムズから日本語版が出荷される「Adobe Flex 2」は、RIA(Rich Internet Application)構築を可能とするWebアプリケーションの開発環境。AjaxとFlashの相乗が特徴の一つとして「Ajax/Flash Bridge」も用意するなど、話題を欠かさない。比較的小規模なアプリケーション構築も可能だが、企業向けアプリケーションのリッチクライアント実現が狙いだ。

 6月29日に都内ホテルで開催された発表会では、Adobe Systems、エンタープライズ&デベロッパービジネスユニット担当のジェフ・ワトコット氏が登壇し、Flex 2が目指すWebアプリケーション環境を語った。

 「これまでのWebアプリケーションは、ページモデルとして開発されたものが多かった。Flexは、アプリケーションモデルの開発プラットフォームを提供する」とワトコット氏。また、現在ではバックエンドシステムにはSOA化が課題となっているものの、フロントエンドからSOAへと効率的に接続するための手段が欠けていることを強調した。

 Flex 2は、Flashならではの表現力とパフォーマンスの向上(Scriptの実行エンジンによって従来比10倍の処理速度)を掲げており、データサービス連携の充実さも特徴となっている。また、従来まではDreamweaverベースのFlex Builderが開発環境となっていたが、Flex 2ではEclipseプラグインが提供されており、オープンスタンダードの開発環境を強く意識した。

 従来バージョンの1.5までは、どちらかというと閉じられた開発環境であったのに対し、Flex 2ではSDKの無償化を実現したのも大きなところだ。ワトコット氏は、「5年後までに100万人の開発者獲得を目指す」とコメントしている。

 Flex 2の処理速度向上には、「Flash Player 9」の効果が大きい。新版のActionScript 3を採用したFlash Playerには、新たなVM(Virtual Machine)が採用されており、これによって従来比で約10倍のパフォーマンス向上を実現したという。

三菱商事の業務アプリケーション事例

 発表会には、アイ・ティ・フロンティア、SI第一本部第三ソリューション部の木下美樹氏、山脇一也氏が招かれ、三菱商事向けに開発中のCASA(海外駐在員事務所会計システム)事例が紹介された。

 このシステムは、40カ国に点在する海外駐在員からの業務会計を担うもの。東京本店のデータセンターにはRed hat Enterprise Linux上でWebSphereとOracle 10gが採用されているバックエンドがあり、このフロントエンド構築としてFlex 2が使われた形だ。

 木下氏は、従来までは同じ会計処理をメールベースで行っていたものが、Flex 2による構築で世界中の海外駐在員からほぼリアルタイムに近い状態で会計処理が実現できたことを強調した。

 バージョン1.5まではMacromediaブランドとして名をはせた「Flex」。Adobe Systemsによる買収前から、Flashの路線とは異なるプロダクトとして注目されてきた。

 当初はFlashの延長上で見られがちな製品だったが、デベロッパーからの印象はデザイナー寄りのツールでは? と冷ややかな意見が多かったのも事実である。しかし、Adobeが万を期して登場させるFlex 2.0は、Eclipseをも取り込んでWebアプリケーション開発の開発統合環境として真っ向に挑んだ製品となっている。

 そして、Expressによる無償化環境の提供によってクラスタ化とサポートは含まれないものの、比較的小規模なサービスであれば実用環境構築が可能となった点も大きなインパクトだろう。

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