システム完成後に問われる経営センスとは企業にはびこる「間違いだらけのIT経営」:第8回(1/2 ページ)

稼働を始めたシステムに対するその後の取り組み方が、システムの成否を決める。経営者や幹部が押さえておくべき留意点について論じる。

» 2006年08月24日 10時00分 公開
[増岡直二郎,ITmedia]

 間違いだらけの経営が、システムを立ち上げていざ稼働を始めた場面でも多く見受けられる。IT導入まではベンダーもユーザーも心血を注いで最善を尽くすが、いったんシステムが完成し稼働を始めると一件落着で一斉に手を抜くケースが多い。実は稼働を始めたシステムに対するその後の取り組み方が、システムの成否を決めるにもかかわらず、である。

 システム投資をする場合、巨額であるがゆえに細部にわたってチェックをする経営者も、いったん認可すると無関心になり、ましてやシステムが完成すると一件落着で安心する。ITに関心の深い経営者でも同じである。幹部たちも右へならえだ。そして、たまたまシステムの話が出ると思い出したように「システムは効果が出ているのか」と、関係者をとがめるのが精一杯の経営者を数多く見てきた。

 一方、システム完成を機会に手を引くベンダーも数多く見てきた。「契約はここまでだから」、「運用以降はユーザー責任だから」・・・。自ら手がけたシステムの成功を本当に望むなら、運用以降も契約に含むべきだし、予算の関係で契約から外すなら、ユーザーに充分な事前説明をして納得を得ておくべきである。巨額の投資をしているのに、まさに間違いだらけの経営姿勢である。これはシステム完成で一件落着と心底信じているか、疑問は持っていても何をしたら良いか分からないことから起こる。ベンダーの上級SEでさえ、システム完成後の重要性について理論的説明を整然とできない者が多い。

稼働後のIT経営を成功に導く2つのポイント

 システム稼働後に注意すべき点は、大きく2つある。

 1つは、システムを効率よく運用して所期の効果を出すための基本的テーマであり、2つ目には、筆者の経験から言えるシステム効率と効果を達成するために実務上注意すべきテーマである。この2つを心得ていれば、システム稼働後の間違ったIT経営に陥ることはない。

 まず基本的テーマは、当たり前のことではあるが、経営者や幹部は充分理解しておかないと過ちを見過ごし、ベンダーも基本を身につけておかないと顧客を失う。

 通常システムは、縦軸にバグ・故障などの発生件数、横軸に時間をとったとき、バスタブ曲線(バスタブ断面図のような曲線)を描いて成長、安定、衰退していくといわれる。この過程において資源管理(ハード・ソフトウエア、データなど資源の安定管理)・障害管理(障害の早期発見、対策)・コスト管理(対費用効果を高めるためのコスト管理)・セキュリティ管理(対内・外のセキュリティ対策)などのシステム運用管理と、定期・緊急を含めての保守管理が要求される。この一連の運用・保守管理が、システムの効果的にして効率的な稼働に欠かせない基本的テーマである。経営幹部がこのテーマを理屈として知っているかいないかで、経営の質の面で差が出てくる。

 もう1つの実務上注意すべきテーマは、とかく気づかれにくいため、なおざりにされがちだが、きわめて重要な点である。そして実は、それはバスタブ曲線を描く以前の問題である。むしろバスタブ曲線を描くに至ればしめたもので、多くの場合それ以前で悩む。

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