シックス・アパート 代表取締役 関 信浩氏――「情報発信をイノベートするブログの使い勝手をさらに良くしていきたい」(1/2 ページ)

「Web2.0」という言葉に象徴されるように、インターネットの世界が第2の変革期を迎えている中、つい4年前に米国シリコンバレーで産声を上げたベンチャー企業が今、俄然注目を集めている。ブログ技術で新市場をリードするシックス・アパートである。その日本法人もおよそ2年半前に設立、独自の戦略で日本市場にブログブームを巻き起こした。同社が描く次なる戦略とは。

» 2006年10月12日 10時00分 公開
[松岡功,アイティセレクト編集部]

 昨年来、ホットな論議となっている「Web2.0」。その正体を掴んでいかにビジネスに結びつけるか、IT業界関係者はいま必死に知恵を絞っている。とはいえ、Web2.0は次世代インターネットにおける事業やサービス、およびそれらを支える技術などを総称した言葉として使われるケースが多いだけに、その全体像を捉えるのはなかなか難しい。

 ただビジネス的な観点から本質的なポイントとして一つ挙げられるのは、これまでのウェブ(Web1.0)が主に企業や組織から消費者個人に情報発信されていたとすれば、Web2.0では消費者間、あるいは消費者から企業への情報流通も可能になったことだ。この情報流通革命ともいえる現象を巻き起こした原動力となったのがブログである。ブログは世界的に大流行し、今や日本でも登録者は延べ1000万人規模に達しているといわれる。その立役者として、ブログ技術をリードしてきたのがシックス・アパートである。まずはその日本法人トップである関 信浩代表取締役に、ブログがもたらしたイノベーションについて語ってもらった。

ウェブと同様に進化するブログの利用形態

アイティセレクト ブログがもたらしたイノベーションについてどうとらえておられますか。

 ウェブが世の中に登場したのは1990年代ですが、当初は個人や企業のホームページからスタートし、ネットワーク環境が整備されていく中で企業のイントラネット、企業と個人の間でのEC(電子商取引)、企業間ECへと利用形態が進化していきました。

 ではなぜウェブがそれだけ広がっていったのか。その原動力となったのは、インターネットに接続すれば誰でも簡単にウェブサイトを閲覧することができるウェブブラウザが広く普及したことです。つまり、ITのインフラとしてウェブブラウザが消費者個人を中心に「読み手」を大きく広げるイノベーションを起こした。読み手が広がったのですから、企業などは一生懸命、情報発信しようとウェブサイトの制作に努めました。ただ、ウェブサイトを制作するためには、HTMLの習得をはじめとした技術的なハードルの高さやコスト面での負担があり、読み手は増えても「書き手」がなかなか増えないというジレンマがありました。

 そうした中で、2000年代に入って登場したブログは、専門の知識がなくとも簡単に制作できるとあってまず個人から火がつき、その後、企業ブログ、イントラネットブログへと普及していきました。つまり、ブログはウェブサイト制作においてジレンマとなっていた、書き手を大きく広げるイノベーションを起こしたのです。ウェブブラウザが読み手のイノベーションならば、ブログは書き手のイノベーション。そしてこれらを組み合わせることによって、ウェブ上での真の双方向性が実現するわけでです。これが企業のIT化などにもたらす効果は絶大なものがあると考えています。

シックス・アパート 代表取締役 関 信浩氏

アイティセレクト ブログのビジネス利用は、これからどう進化していくのでしょう?

 ここにきてブログは、企業の広報やマーケティング活動に有効なツールとして活発に利用されるようになってきました。今後はウェブの発展形態と同様、イントラネット、企業と個人の間でのEC、企業間ECへと広がっていくでしょう。イメージとしては、イントラネットやECのさまざまなアプリケーションとブログが連携したり、さらにはそれらのアプリケーションにブログの仕組みが埋め込まれていくようになるのではないでしょうか。

 例えばイントラネットの場合だと、ブログはグループウェアを補完する役目を果たすことができるでしょう。グループウェアに載らないような情報を社員個々がブログに書き記しておくことで、それが蓄積されれば会社としても貴重なナレッジベースになりうる。ただ蓄積するだけでなく、ブログの情報は社内で共有されるので、あちこちで議論が持ち上がって新しいプロジェクトの芽を生み出すかもしれません。情報をやりとりするというスタンスからすれば、その場感覚の強いメールよりウェブベースのブログを活用したほうが、機能的にも柔軟で、しかも情報の再利用がグッと簡単になります。そう考えると、ブログのビジネス利用におけるポテンシャルは非常に大きなものがあるのではないでしょうか。

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