SNSとWeb 2.0を企業に融合させるLotus Notes/DominoLotusphere 2007 Orlando Report

好調な業績に慢心することなく、常に革新を求めるLotus Notes。Lotusphere 2007では、SNSやWeb 2.0技術の取り込みを図った新製品群を披露し、企業内外を問わないコラボレーション環境を提供しようとしている。

» 2007年01月23日 19時15分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 米国時間の1月22日、フロリダ州オーランドのウォルトディズニーワールドで本格開幕した「Lotusphere 2007」は、長い歴史を持ち成熟したはずの同製品が直近の四半期でも30%を越える成長率を遂げている理由を目にすべく、前年を上回る7000人もの参加者で熱気に包まれていた。3D 仮想世界「Second Life」上でも「Lotusphere Complex in Second Life」という仮想カンファレンスを開催するなど、これまでにない取り組みも見られる。

 オープニングキーノートは、米IBMでLotus SoftwareのGMを務めるマイク・ローディン氏は、直近の好調な業績を紹介するとともに、「われわれが皆さんの声を聞いて取り入れる各種技術は皆さんを中心に回転しているのであり、革新は皆さんからもたらされる」と話す。続けて、メールベースで行われることの多い企業内のコラボレーションについて、「メールはテトリスのようなものだ。4つメールを処理すれば、すぐさま4つのスパムメールが降ってくる(笑い)。よりよいコラボレーションに必要なのは、コミュニケーションであり、情報共有であり、統合されたサービスである」とその限界を指摘し、今回発表する新製品群がそれらの壁を打ち破るものであるとした。

ローディン氏 近年の好調な業績を示すとともに、「われわれは約束を守ってきた」と製品リリースも予定通り進めていることを強調するローディン氏

 今回の発表では大きく3つの新製品が披露された。これまでコードネーム「Hannover」と呼ばれていた「Lotus Notes/Domino 8」、より効果的なチームコラボレーションを実現する、Web 2.0ベースのチーム・コラボレーション・オファリング「Lotus Quickr」、企業向けのソーシャルコンピューティング用プラットフォーム「Lotus Connections」である。既存製品については、「Lotus Sametime」や、企業ポータル構築の「WebSphere Portal Express」の新版も発表された。

 Lotus Notes/Domino 8は、これまでにもその機能が幾度となく披露されてきたが(関連記事参照)、特定の業務やプロジェクトに関連する電子メール、インスタントメッセージ(IM)、ドキュメントなどの内容や成果物を、関連する項目ごとに一元的に整理/共有できる「アクティビティー」機能がこれまでとは大きく異なる。細かな新機能としては、送信済みのメールを1クリックで確認できる「Recent Contact」、誤送信したメールを撤回できる「Message Recall」などがあり、OpenDocument Format(ODF)もサポートされている。

Hannoverのデモ。右側のペインでRSSやSametimeを統合していることが分かる(クリックで拡大)

 IBM Lotus製品担当バイスプレジデントのケン・ビスコンティ氏が「Lotus Notes/Domino 8は、ビジネスにおけるコラボレーションに革新をもたらす」と話すように、EclipseベースのIBM Workplace Client Technologyを基盤とし、オープンな仕様に基づいたコンポジットアプリケーションの作成をサポートするほか、Bagpack、Atom、タグ、REST(Representational State Transfer)、Ajax(Asynchronous JavaScript + XML)およびJSON(JavaScript Object Notation)など、Web2.0技術がふんだんに盛り込まれたことで、企業内におけるマッシュアップなどもこれまで以上に容易に行えるようになっており、すでにジャストシステムなどは、Hannover向けにxfyプラットフォームを提供すると発表している(関連記事)

 Lotus Notes/Domino 8は、パブリックβ版を2月を目処に公開、正式版は2007年半ばを予定している

 一方、コラボレーションのためのコンテンツ共有の部分を担うのが、Lotus Quickrだ。IBM Lotus Notes、IBM Lotus Sametime、RSS/Atomフィード、Microsoft Office、Microsoft Windowsを統合するコネクターと、コンテンツ共有リポジトリから構成される同製品は、Lotus Notesはもちろん、SametimeやWindowsエクスプローラなどでコンテンツ共有リポジトリを利用することができる。具体的には、ドキュメントのバージョン管理や、その同期などがアプリケーションを問わずに利用可能となるほか、例えばLotus Notesと組み合わせることで、メールにファイルを添付する代わりに、コンテンツ共有リポジトリへのリンク情報を添付することなども可能となる。IBM FileNet P8のサポートも予定されており、ビジネスプロセス管理なども利用できる見込みだ。製品はPersonal版とStandard版が用意され、Personal版についてはLotus Notes/Dominoのライセンスを持っていれば無償で利用可能となっているが、現時点では両バージョンの機能比較などは明らかにされていない。

 このLotus Quickrで提供される機能は何も目新しいものではなく、過去のLotus Notes/Dominoで言えば、Lotus QuickPlaceやLotus Domino Document Managerといった製品で提供されていたものだ。Lotus Quickrはそうした製品を整理し直したものであると見ることができる。

根付くか? 企業向けSNSプラットフォーム

 参加者の注目をもっとも集めたのは、「Lotus Connections」。IBMが考えるソーシャルソフトウェアが体現されたこの製品では、「Activities」「Communities」「Dogear」「Profiles」「Blogs」といった5つのコンポーネントにより、従業員は必要な情報を持つ社員をキーワードで検索したり、プロジェクトや部署に応じてコミュニティーを形成し、その中で情報の収集や共有、共同作業などを行うことが可能になるなど、インフォーマルながら協業性の高いタスクを構造化するねらいが見て取れる。

 個々の機能を見れば、例えばDogearははてなブックマークであり、CommunitiesやProfiles、Blogsはmixiで提供されているような機能であると考えればよいが、これらをシームレスに連携することで、企業におけるソーシャルプラットフォームとして位置づけている。こうした製品は大きな組織であればあるほど効果的であることは言うまでもなく、どのように顧客に受け入れられるかが注目されるところだが、参加者の注目度を見る限り、使い勝手のよいこうしたSNS機能を企業内で活用したいと考える企業は多いように思われる。

 Lotus Quickr、Lotus Connectionsの両製品は第2四半期以降の市場投入となる予定。

 「ひとりの人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍だ」──オープニングキーノートにゲストとして招かれたニール・アームストロング氏が1969年に人類ではじめて月面に降り立った際の言葉は、Lotusphere 2007に合わせて言い換えるなら「今回の発表で取り組んだWeb 2.0技術の実装は、まだ小さな一歩だが、企業にとっては大きな飛躍だ」となるかもしれない。Web 2.0に代表される技術がコンシューマ側から台頭し、多くのプレイヤーがこの技術を利用したエンタープライズ向け製品の開発を進めてきたが、UIの改善にとどまっているものも少なくなかった。

 今回、IBM Lotus製品担当バイスプレジデントのケン・ビスコンティ氏が「Lotus Notes/Domino 8 は、ビジネスにおけるコラボレーションに革新をもたらす」と話すように、使い勝手とデザインの両面でWeb 2.0技術をどう活用するかを考え、さらにそれらを「継ぎ目のない統合」を図った今回の製品群。企業内外のさまざまなサーバやWebサービスのクライアントとして機能するLotus製品がエンタープライズWeb 2.0の方向性を示しつつある。

ゲストとして招かれたニール・アームストロング氏。「事務所とかいう考えは古い。あるアクティビティに対するコラボレーションのチームを素早く作り対応していくことが重要だ」と話す

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