Novell-Microsoft協定によるGPLv3の遅れ

GNU GPLv3の最終ドラフトの公開が遅れている。この背景には、NovellとMicrosoftとの提携によって、それまで予期しなかった多くの懸案事項が発生したことが一因として挙げられる。

» 2007年03月29日 09時00分 公開
[Bruce-Byfield,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 2006年11月のNovellとMicrosoftとの協定により、GNU一般公衆利用許諾第3版(GNU GPLv3)の最終ドラフトの公開が遅れている、とフリーソフトウェア財団(FSF:Free Software Foundation)の常任理事ペーター・ブラウン氏は語る。

 2006年1月に発表されたGPLv3プロセス定義によると、FSFの当初の計画では同ライセンスの最終ドラフトの公開が「2006年10月ごろ」、正式版の公示は「遅くとも2007年3月、できれば同年の1月15日」となっている。このプロセス定義は、GPLv3の策定を支援する各委員会で目立った問題が提起されなければ、ドラフト第2版(2006年7月に公開された)が最終バージョンになる可能性についても言及している。

 だが、この第2版については、特許とデジタル著作権管理テクノロジーに関する言い回しについての懸念が表明され、リーナス・トーバルズ氏をはじめとするLinuxカーネルの開発者によって反対の声明が出された。一方で、ドラフトの改訂者の1人であるリチャード・フォンタナ氏は、第2版の公開後しばらくして「われわれは策定プロセスを遅らせるつもりはない」とLinux.comに語った

 ドラフト第3版の公開が予定されていたころに発表されたのがNovellとMicrosoftとの提携だった。これにより、それまで予期しなかった多くの懸案事項が発生した。メディアとフリーソフトウェアコミュニティーの双方から、この協定はGPLに違反するのではないかという意見が出たが、それは MicrosoftがNovellのSUSE Linux Enterpriseの再配布に当たってロイヤリティを支払うことになっていたからであり、また同協定にGNU/LinuxによるMicrosoftの知的財産権の侵害が発覚した場合にNovellの顧客だけが保護されるという内容が含まれていたからであった。FSFはすぐさま、同協定が現行のGPLの下では法的な問題がないとの判断を下したが、FSFの顧問弁護士でGPLv3の法律面の起草責任者であるエベン・モグレン氏は「この協定に対抗する形でGPLv3を利用するというのがわれわれの戦略だ」と述べたという

 しかし、その方法の詳細はまだ公にされておらず、NovellとMicrosoftとの協定についてフリーおよびオープンソースソフトウェアのコミュニティーに広がった懸念は、GPLv3各委員会での議論を長引かせ、激化させている。また、GPLv3委員会の中にNovellのメンバーが少なくとも4人いる(法律家のグレッグ・ジョーンズ氏とパトリック・マクブライド氏、テストアーキテクトのFederico Lucifredi氏、Novellのオープンプラットフォーム・ソリューション・グループCTOであるマーカス・レックス氏)ことで、議論がさらに長引く恐れがある。その上、Microsoftとの協定に反対してNovellを辞めたSamba開発者ジェレミー・アリソン氏がまだ委員会のメンバーとして残っていることが、もっと複雑な問題の火種になる可能性もある。

 とはいえ、ドラフト第3版が遅れている最大の理由は、FSFがこうした予期せぬ状況に対処するに当たって慎重を期しているからのようだ。「われわれは、NovellとMicrosoftの協定がもたらした状況にも対応できるように、引き続きGPLv3の細かい部分に取り組みんでいる。今は、採用予定の言い回しがわれわれの意図しない結果につながる可能性について調査している。満足できる調査の結果が得られ次第、次のドラフトを公開する予定だ」(ブラウン氏)

 詳細を明らかにすることは拒みながらも、ブラウン氏は、「次のドラフトの公開は『何週間も先ということはなく何日か先』だと考えている」と語っている。

編注:この記事の公開後、公開されました

Bruce Byfieldは、NewsForge、Linux.com、IT Manager's Journalに定期的に寄稿しているコンピュータージャーナリスト。


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