Apache、JDKをめぐりSunへの批判

OpenJDKの推進がApache Harmony鈍化への理由? Apache Software Foundationは、JCKをSunへ要求しているが展開には暗雲が立ちこめているようだ。

» 2007年04月11日 17時31分 公開
[Darryl K. Taft,eWEEK]
eWEEK

 自らの既得権益を守り、オープンソース企業との競争を有利に運ぶために、Apache Software FoundationがSun Microsystemsを批判している。きわめて重要なJavaテストキットのライセンスを隠しているとの内容だ。

 Apache Harmonyプロジェクトのバイスプレジデントを務めるゲイル・マグナッソン氏が、Sunの最高経営責任者(CEO)であるジョナサン・シュワルツ氏に送った公開書簡によると、Apacheは2006年8月から「Java SE(Java Platform, Standard Edition)」のテストキット用ライセンスを提供するよう求めてきたという。

 Apache Harmonyは、「Apache License Version 2」に基づいて、互換性および独立性にすぐれた「Java SE 5 JDK(Java Development Kit)」のオープンソース版を開発するプロジェクト。

 Apacheは「Java Compatibility Kit(JCK)」と呼ばれるテストキットを要求しており、Sunが仕様ライセンスによって規定しているように、同プロジェクトの製品とJava SE仕様の間に互換性があることを示すため、Apache Harmonyプロジェクトは同テストキットを必要としていると、マグナッソン氏は書簡に記した。

 そうであるにもかかわらず、「Sunが提供しているJCKライセンスでは知的財産権に制限が設けられており、我々のソフトウェアユーザーは一定の『使用分野』でしかこれを利用できないようになっている」(マグナッソン氏)という。

 同氏は、こうした制限は「まったくもって容認しがたい」と主張した。

 「SunのJCKライセンスは同社の商用Javaビジネスの一部を保護しているが、その代わりにApache Software Foundationのオープンソフトウェアを犠牲にする。このライセンス規定によって、我々のユーザーは特定の分野でApacheソフトウェアを使用できないのだ。間接的であれ直接的なものであれ、知的財産権を振りかざすこうした攻撃的な行為は、ある企業の商業上の優位だけを肥大化させ、エコシステムのほかの参加者の利益を損なうものである」(マグナッソン氏)

 同氏はさらに、「開発コミュニティが主導するApache Software Foundationのオープンソースプロジェクトで、2005年5月以来活動を続けてきたHarmonyプロジェクトの進行が妨げられているばかりでなく、契約上の義務を果たせないことにより、オープンスタンダード組織としてのJCP(Java Community Process)の信頼性や、オープン技術たるJavaそのものの評判も傷つけられるおそれが十二分にある」と、書簡に書いている。

 Sunによる使用分野制限は、JCPを統括する規定である「JSPA(Java Specification Participation Agreement)」の条項に反していると、マグナッソン氏は指摘した。同氏はeWEEKに対し、「実に興味深い問題で、JavaおよびJCPにとっては深刻な事態だ。Javaは本来オープンスタンダードであるべきで、こうした条項に縛られるいわれはない」と語った。

 マグナッソン氏によれば、Apacheは8か月も前からJCKライセンスの取得を試みてきたが、問題を表沙汰にすることは避けてきたのだという。だが、同氏が今回シュワルツ氏に送付した書簡には、「適切なJSPA互換ライセンスを30日以内に提供するか、それが不可能である場合はその理由を公式に発表してもらいたい」と、はっきり記されている。

 Sunの広報担当者は、現在問題を検討しているとだけ述べ、それ以上のコメントは拒否した。

 一部の識者は、SunはApache Harmonyプロジェクトの発展を鈍化させ、オープンソースJDKを開発する自身の「OpenJDK」プロジェクトを促進する目的で、こうした措置を取ったのではないかと分析している。

 マグナッソン氏は、「われわれのプロジェクトは、初めて基準をクリアしたJavaのオープンソース版になれたかもしれなかった」と述べたが、そうした権利自体や、どの組織のライセンスがすぐれているかという議論に加わることには意味がないと付け加えた。

 Sunは、5月8〜11日にかけてサンフランシスコで年次Javaカンファレンス「JavaOne」を開催するが、マグナッソン氏はそれまでに問題が解決していることを望むと話している。

 IBMのEmerging Technologies Groupで上級テクニカルスタッフメンバーを務め、Apache Software Foundationのディレクターでもあるサム・ルビー氏も、この件を個人のブログサイトで話題にしている。「シュワルツ氏には、早いうちに問題解決に乗り出してもらいたい。同氏は今、目先の利益と潜在的なコストを天秤にかけるという選択を迫られているのだ。目先の利益を選んだ場合、1)Sunが膨大な時間と労力を費やして築き上げた開発コミュニティーが崩壊する、2)Javaの将来が担保に取られる、3)Sun自身のオープンスタンダードに対する努力が無に帰すといった代償を、同社は支払うことになるだろう」(ルビー氏)

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