だまされやすさ、そして知性と合理性の欠如に加え、電子メールユーザーを陥れる心理学的要因はほかにもある。
報告書によると、スパマーらが採用している最も基本的な策略が、「接近と回避」の動機プロセスを操ることだという。詐欺スパムは、快楽/肯定的なゴール/肯定的な結果を通じて、否定的/不快なゴール、または結果の回避を通じて(あるいは両方を組み合わせることによって)クリックを促そうとすることが多い。
報告書を作成した研究者たちは、「接近」の動機付けの例として「苦労せずに確実にやせる方法」や「見逃せない株価情報」などを挙げ、「回避」の動機付けの例としては「銀行口座に侵入される危険性」を挙げている。また、両方の動機付けの組み合わせの例として、性的機能の改善を挙げている。この場合、性的能力増進が「接近」の動機付けで、医者に相談しなくても済むというのが「回避」の動機付けである。
動機付けについて研究している心理学者らによると、これらの2つの形態の動機付けのいずれかに影響されやすい人々がいるという。接近動機を刺激されやすい人は「上昇志向型の人間」と呼ばれ、人よりも先に進もうとする。一方、回避傾向の人は「予防志向型の人間」と呼ばれ、人に後れを取るのを避けようとする、と同報告書は述べている。
しかし詐欺師たちは動機付けに加え、懐疑心を取り除く工夫をしなければならない、と報告書は指摘する。彼らはそのために、自分たちが怪しい者ではないことをメールの受信者に信じ込ませようとする。これには、親密さを装ったり(「メールくれた?」、「やあ、レニー・カブレラだよ」)、権威を装ったり(「必要事項を記入して提出すること」)するなど、さまざまな手段が用いられる。
詐欺スパムで利用されるそのほかの心理的トリックとしては、好奇心(「報告書によると……」)、無料提供(「Adobe製品の無制限ダウンロード」)、最近の行事(「母の日」「バレンタインデー」)、感情/愛/離別(「今週も寂しい1週間」)、オークション詐欺(「Brightonのハンドバッグ」)、求人詐欺(「即金払い」)、当選詐欺(「あなたが当選しました」)、悩み(「肥満解消」「バイアグラ」)などがある。
こういった広範な心理的攻撃を誰も免れることができないとすれば、企業あるいは個人はどうやって自らを守ればいいのだろうか。「行動を修正すればいいのだ」とブラスコビッチ氏は言う。
「たとえ通信相手の素性が完全に確かであると分かっていても、絶対にやってはならないことがあることを認識する必要がある。キーストローク取り込みソフトウェアなどのマルウェアを他人のコンピュータにインストールしようとする人もいるからだ」と同氏は語る。
具体的には、McAfeeは電子メール詐欺業界の資金源を絶ち、個人や企業を守るために以下の注意を守るようユーザーにアドバイスしている。
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