OLS 2日目:カーネル開発、ファイルシステムについての講演(1/3 ページ)

第9回年次Ottawa Linux Symposiumの2日目は、「Linuxカーネル開発――どのように、何を、どのようなスピードで、誰が?」と題されたグレッグ・クローハートマン氏による講演で始まった。

» 2007年07月06日 12時20分 公開
[David-'cdlu'-Graham,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 第9回年次Ottawa Linux Symposiumの2日目は、「Linuxカーネル開発――どのように、何を、どのようなスピードで、誰が?」と題されたグレッグ・クローハートマン氏による講演で始まった。講演は400人を越える聴衆で超満員の大部屋で行なわれた。

 クローハートマン氏はセッション部屋後方の壁に大きなポスターを貼っていた。そのポスターには、現在の開発カーネルの開発者とパッチレビュワーとの間の関係が線で結んで示されていて、ポスターに自分の名前を見つけたらぜひそこに自筆のサインをして欲しいと書かれていた。

 クローハートマン氏は、開発の組織階層図を示して講演を始めた。示された開発組織階層図は、本来そうなっているはずの階層であり、パッチを提出するカーネル開発者たちが最下位層にいて、その上にそれらのカーネル開発者たちからパッチを受け取る600人のドライバ/ファイルメンテナがいて、さらにその上にドライバ/ファイルメンテナからパッチを受け取るサブシステムメンテナがいて、その上の最上位層にサブシステムメンテナからパッチを受け取るアンドリュー・モートン氏か、場合によっては直接リーナス・トーバルズ氏がいる、ということが示されていた。

 クローハートマン氏の説明によると、アンドリュー・モートン氏はもともとトーバルズ氏が開発版ツリーに取り掛かる間、安定版ツリーをメンテナンスする担当として選ばれたのだが、モートン氏はもともとモートン氏のサブツリーとなっている-mm(メモリ管理)という名前のツリーにあらゆる非安定パッチをマージしていて、事実上トーバルズ氏が安定カーネルツリーをメンテナンスするようになっているという。クローハートマン氏は、トーバルズ氏もモートン氏も決してこの事実を認めないだろうが、現在のところは当初の意向とは正反対のこの状況は、非常にうまく働いていると述べた。

 パッチが前述したような組織階層を上に向かって提出されて行く際には、受け取ったパッチをレビューして上方に提出する人が必ず、おのおのの名前をパッチのsigned-off-byフィールドにつけるようになっている。クローハートマン氏が印刷して張り出していた大きな図は、そのようなsigned-off-byフィールドの関係から作成されたものなのだが、その図を見ると組織階層内の実際のやり取りは必ずしも組織階層図通りに行なわれているわけではないことが分かる。

 クローハートマン氏によると、安定カーネルのリリースは約2.5カ月ごとに行なわれているという。2.6.11カーネルのリリース以降のこの2.5年の間、カーネルに対する変更は平均して1時間に2.89パッチという速度で行なわれていて、そのペースはこの2年半の間ずっと維持されているとのことだ。また、2.6.19カーネルだけについて言えば、1時間に4つの変更が行なわれるというペースだったということをグラフで示した。

 また2.6.21カーネルには820万行のコードが含まれているが、毎日(休日なく)の平均で、1日に2000行が追加され、2800行が変更されているのだという。なお数字の実際の値については議論の余地があるものの、同氏自身の印象としては比較的現実を正確に表わしている数字のように感じると付け加えた。

 このような数字はWindows Vistaと比較するとどうなのかという質問に対してクローハートマン氏は、VistaのカーネルはLinuxよりも小さいが、ドライバがまったく含まれていないため、正確に比較することは不可能だと答えた。また各マイナーリリースで行なわれた変更はLinux 2.4が2.6になった際のカーネルの変更と同じくらいではないだろうかという質問に対しては、同じではないとしたが、当時と同じ量の変更は今のペースであれば約6カ月で実現することができるだろうと答えた。

 クローハートマン氏はいったん幾つかの質問に答えた後、再び講演に戻った。そして、カーネルのさまざまな部分(core/drivers/arch/net/fs/misc)を比較してみると、ファイルの数という観点からはarch(アーキテクチャ)ツリーがカーネルの中で最も大きいが、全体に対するサイズで見るとドライバがカーネルの52%を占めているとした。なおそのようなカーネルの6つの部分は、どれもおおむね同じようなペースで変更されているようだとのことだ。

 またクローハートマン氏は、Linuxは既存のオペレーティングシステムのどれよりもスケーラブルだと誇らしげに言った。Linuxは、USBメモリから世界でトップのスーパーコンピュータの75%まで、ありとあらゆるものの上で稼働しているとのことだ。

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