トラブル対応の出張を減らせるか? チェーンストアシステム構築物語運用管理の過去・現在・未来(1/2 ページ)

中村さん(仮名)は、中堅のレストランチェーンP社の情報システム管理者である。以前はトラブルが発生するたびに全国を飛び回る毎日だったが、新しいシステムを導入して、その状況は改善されたのだろうか。

» 2007年07月30日 07時00分 公開
[敦賀松太郎,ITmedia]

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IT化に乗り遅れるな!

 P社は、和食レストランや居酒屋などを全国展開する中堅レストランチェーンである。中村さんは、情報系大学の学生だった15年ほど前、レストランの接客担当アルバイトとして入社した。大学卒業後は、店舗のマネジャーやP社人事部の誘いもあり、正社員として就職。それから2年間、店舗スタッフとして働いた後、P社には数少ない情報系大学出身者ということで、情報システム担当として本社に異動し、それ以来、情報システムの実質的な責任者としてP社の情報システムの企画・運用・管理を任されてきた。

 10年前には、大手レストランチェーンに倣い、初めてオーダーエントリーシステム、POS端末と連携したチェーンストアシステムを構築した。オーダーエントリーシステムとは手書きの伝票を置き換えたもので、客の注文を端末で入力して厨房に注文内容を送信する機能を果たす。現在は、多くのレストランで採用されているので、端末を目にする機会も多いだろう。

 かつて、外食業界ではIT化が遅れており、それは大手レストランチェーンでも同じだった。しかし、約20年ほど前にオーダーエントリーシステムを採用する企業が現れ始め、店舗にもストアコントローラが導入されるなど、IT化が次第に進んでいった。P社も、そうした波に乗り遅れまいとチェーンストア全店にシステム導入を決定。そのプロジェクトの担当として、中村さんが指名された。

 これまで本格的な情報システムを導入したことがなく、チェーンストアシステムにも疎かった中村さんは、チェーンストアシステムを手がける複数のベンダーに接触。その中で自社に適用できそうなシステムを提案したQ社と契約し、最初のシステムを構築作業に取りかかった。

ベンダー任せが災いに

 経験のない中村さんは、ベンダーの提案や設計の内容を理解できない部分もあり、最初に構築したチェーンストアシステムは、言ってみればベンダー任せだった。そのため、本来は業務に合わせてシステム側を変更すべきなのに、システムに合わせて業務を変更しなければならない部分も多々あった。中村さんは当時、こんなものだろうと思っていたというが、予想以上に不満の声が多かった。例えば、本社からは、せっかくのチェーンストアシステムなのに他のシステムとの連携が難しいことを指摘された。これは、Q社のシステムがオフコンをベースにしたプロプライエタリな環境だったためだ。

 一方、店舗からは、深夜のトラブル発生時に、契約保守会社がすぐに対応しないという苦情が多い。多額の保守料金を支払っているのにもかかわらずである。

 こうした要望・苦情は、24時間365日営業の店舗もあるためか、曜日や時間はお構いなしに中村さんのもとに寄せられた。システムの安定性に問題があったためか、最初のシステムが稼働している間、中村さんは眠れない毎日を送り、ノイローゼになる一歩前だったそうだ。

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