VoIPの落とし穴を埋めるもの(1/2 ページ)

MicrosoftやEMCなどのベンダー各社が、IP音声トラフィック管理の穴を埋める取り組みに乗り出している。

» 2007年08月28日 08時41分 公開
[Paula Musich,eWEEK]
eWEEK

 計画策定と配備前のテストも完了し、いよいよ新しいVoIP(Voice over IP)システムを本番環境に移す段になって、「どうやって管理すればいいのだろうか」と途方に暮れるITマネジャーもいるのではないだろうか。

 市場の勢いに押されてVoIPの普及率が高まり、企業がVoIPの導入規模を拡大する一方で、この問題に直面するITマネジャーが増えるだろう。その答えは「どうすればいいか分からない」となる可能性も高そうだ。

 新しい技術の常として、VoIPの場合も管理という問題が後回しになっているようだ。

 Network Instrumentsが今年の春に273人のネットワーク技術者を対象として実施した調査によると、回答者の半数近くがVoIPを配備済みだと答えており、来年にVoIPを導入する予定だと答えた人は30%だった。

 しかし、VoIP環境を管理できるのかという点についてはあまり自信がないようだった。回答者の半数近くは、VoIPサービスの品質を監視する能力に不安を抱いており、回答者の41%は、社内ネットワークがVoIP通話に伴う帯域幅消費の増大に対応できるかどうか分からないと答えた。回答者の36%は、利用が集中したときのVoIPアプリケーションの信頼性が心配だとしている。最大のチャレンジは、社内ネットワーク上でのVoIP通話の品質を保証することだという回答も半数近くに上っている。

 また、調査に協力した技術者の36%は、既存のモニタリングシステムでは、VoIPのパフォーマンスを把握するのに不十分だと答えている。

 メリーランド州タウソンにあるBlack & Deckerの通信担当ディレクター、カレン・ディーン氏も、VoIP管理をもっと重視する必要があると指摘する。「VoIP配備でとりわけ軽視されてきたのが、それをどのように管理するかという問題だ」とディーン氏は語る。「IPテレフォニーでは、管理に必要な作業はたくさんある。サーバの管理、ウイルス対策、パッチ適用などだ。電話システムの担当者はこれまで、そういったことをする必要がなかった」。

 ベンダー各社は「音声もネットワーク上の新たなアプリケーションに過ぎない」としているが、決してそんなことはない。VoIPは、ネットワーク上でユーザー同士がリアルタイムで使用する初のアプリケーションなのである。このため、ほかのタイプのアプリケーショントラフィックでは許されるジッター、遅延、パケット順序エラーといった問題が許容されないのだ。

 カリフォルニア州コスタメサにあるVoIP管理ツールのメーカー、Communicadoの創業者で同社の戦略責任者を務めるケリー・シー氏は、「IT業界は、ドキュメントベースの基本的なアプリケーションをサポートすればよかった時代の発想から抜けておらず、動きが鈍く、変化に対して慎重になっている。そういった発想ではリアルタイム通信に対応できない」と話す。

 しかし大手・中小ベンダーともに、ネットワーク上でVoIPトラフィックを管理するというチャレンジに取り組み始めている。

 例えば、8月下旬にサンフランシスコで開催された「VoiceCon」カンファレンスでは、MicrosoftがVoIPの通話品質のモニタリング機能を改良する必要があることを認め、「Microsoft Office Communications Server 2007 Quality of Experience Monitoring Server」を発表した。

 一方、中小規模の管理ツールプロバイダー各社も、ネットワーク上のVoIPトラフィックのパフォーマンスおよびVoIPトラフィックが既存のアプリケーショントラフィックに及ぼす影響の可視性を高める取り組みに乗り出している。VoiceConでは、Communicado、NetQoS、Keynote Systems、Netcordiaなど数社の企業が、VoIP管理ツール/サービスの新製品や改良版を発表した。

 EMCもVoIP分野での取り組みを拡大すべく、新しいVoIPパフォーマンスモニタリング/レポーティングツールを発表した。同社はこれらのツールをIntegrated Researchから供給を受けて再販する。「EMC Smarts VOIP Performance Manager」および「EMC Smarts VOIP Performance Reporter」は、エクスペリエンス品質、MOS(Mean Opinion Scores)評価、ジッター、パケット遅延、リアルタイム利用率、通話量などを監視する。

 Microsoftのいち早い進出やEMCの取り組み拡大を例外とすれば、高度なVoIP管理ツールを企業に提供するという業界の動きをリードしているのは、主として中小ベンダーである。

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