今どきの高専生があこがれる「石垣工務店」に秘められたドラマ高専プロコンリポート(2/3 ページ)

» 2007年10月13日 05時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

ショー的な要素も

 上述したように競技そのものだけでなく、観客に「魅せる」ことも視野に入れられた競技部門では、ステージ上に実際の石垣のモデルを設置するとともに、プログラム上で落札した石が実際に補助員の手でそれぞれのチームに配布され、競技終了までに実際に組み上げるという趣向も凝らされた。もちろんプログラム上で完結できるものだが、それでは観客が楽しくないであろうという配慮からのものだ。観客にとってはより楽しめる競技内容になった一方で、選手たちからすると、リアルに組み立てる必要が生じるため、さらに大変な競技となる。無論、戦略が功を奏し、思い通りの石を手に入れることができても、組み上げることができなければそれはポイントとならない。

各チームが落札した石を、ボランティアで参加した津山高専の生徒が猛スピードで送り届ける。入札終了から各チームに石が届けられるまでわずか1分程度。裏側ではまた別の戦いがくり広げられているがそれはまた別の機会に語られる

 1度に8チーム前後が同時に参戦する同競技では、開始15分前に、石垣枠の形、出品される石の種類と数、入札回数、各入札で入札可能な最大数と落札可能な落札数(例えば10個入札可能だが、落札できるのは最大8個まで)がチームに伝えられる。この情報を基に戦略を練るのだ。また、履歴参照APIなども公開されるなど、現代的な試みも取り入れられた。

ホール後方から。中央のスクリーンにはエヴァンゲリオンに出てくるようなインタフェースで残り時間がカウントされるほか、左右のスクリーンでは入札結果や残り石数などが表示される

FPGAまで登場、これが高専生の実力か

 予選では57チームが8チーム程度のグループに分けられ、それぞれのグループで上位2チームが勝ち抜け、という流れで進められた。

 思い通りの石が落札できたのか、勝利を確信しガッツポーズを見せるチーム、ほかのチームに邪魔されて石を落札できず、PCの再計算結果を祈るような目で見つめるチーム、石垣の組み立て中に「崩落」の憂き目にあってしまうチームとそれぞれの時間が無情に過ぎていった。

ある予選の結果。このグループでは東京にある高専が1位2位を独占した。上位チームは確実に石垣上部を埋め(予選の石垣上部は12マス)てきている。逆に確実に石を落札するため、残金は惜しみなく使う傾向が見て取れた

 次々と予選が消化されていく中、会場がどよめいたのは沼津高専。同校は、FPGAの内部論理を用いてマイクロプロセッサの機能を実現、それを外部計算エンジンとして用いるという「これぞプロコン」といったアプローチで会場を沸かせた。残念ながら結果はふるわなかったものの、痛烈な印象を観客に残した。

 7グループに分けて行われた予選が終了した時点で、各グループ上位2チーム、計14チームは準決勝に進むことが確定し、初日の競技を終えたが、ここで負けたチームも終わりではない。敗者復活戦として、10チームが準決勝に進むことができるためだ。どのチームも2日目に向けて眠れぬ夜を過ごしたようだ。

群馬高専チーム。残念ながら予選で敗退し、敗者復活もならなかった。敗因は「プログラムの解釈ミスですね」(須藤ゆきのさん、写真中央)。5年生の須藤さんが2年生の新井敦子さん(同左)、飯塚菜々美さん(同右)を引き連れる形で本大会に望んでいた。本大会で一番プロコンと縁遠い印象を受ける新井さんだが「そんなことない。プロコンは修学旅行みたいなワクワクした気持ちになる」と笑う

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