Adobe、創業25周年に花を添える新製品を発表

創業25周年の節目に臨み、Adobe Systemsはオープンソースプロジェクトを発表した。

» 2007年12月14日 18時08分 公開
[Darryl K. Taft,eWEEK]
eWEEK

 Adobe Systemsは12月13日、創業25周年を迎え、今日に至るまでの同社の躍進を強調した。

 カリフォルニア州サンノゼに拠点を置くAdobeは、メッセージングおよびリモーティング技術のソースコードをオープンソース化し、「BlazeDS」という名のオープンソース製品としてリリースすると述べ、創業25周年に花を添えた。

 Adobeは、ジョン・ワーノック氏とチャールズ・ゲシュケ氏が1982年に設立した企業だ。両者はXerox Palo Alto Research Centerを退社したあと、「PostScript」ページ記述言語を開発・販売するために同社を興した。Appleが1985年にPostScriptのライセンスを取得した後の歴史は、周知の通りである。

 1980年代半ばには、ベクターベースのドローイングプログラム「Adobe Illustrator」を擁し、コンシューマソフトウェア市場に参入した。Adobeが1989年に発表した「Photoshop」は、後に同社の主力製品となった。

 1993年には、ドキュメントを交換するためのPDFフォーマットを開発した。「Adobe Acrobat」は、標準のファイルフォーマットにPDFを用いている。AdobeがMac OS向けのAcrobat Reader 1.0をリリースしたのは1993年6月のことで、DOSおよびWindows対応版はその後に発表された。

 独自のデスクトップパブリッシングプログラムを有していなかったAdobeは、1994年にAldusを買収した。買収の主な目的はAldusの「PageMaker」技術を取得することで、Adobeはこれを機に「Adobe PageMaker」および「Adobe After Effects」を製品ラインアップに加えた。

 さらに2005年12月、Adobeは競合していたMacromediaを34億ドルで取得する。これにより、「Adobe ColdFusion」「Adobe Contribute」「Adobe Director」「Adobe Dreamweaver」「Adobe Fireworks」「Adobe Flash」「Macromedia FlashPaper」「Adobe Flex」「Macromedia FreeHand」「Macromedia HomeSite」「Macromedia JRun」「Macromedia Authorware」といった製品が新たに登場した。

 Adobeは2007年11月に、最高経営責任者(CEO)を務めていたブルース・チゼン氏の退任を明らかにし、同社の最高執務責任者(COO)だったシャンタヌ・ナライェン氏が新CEOに就任すると発表した。

 RedMonkのアナリスト、マイケル・コート氏は、「25年間に渡り、Adobeは多くのことを成し遂げてきた。今のところは、比較的新しい出来事であるMacromediaとの合併が我々の心に焼き付いている。ただし全体的に見れば、PostScriptを使用した印刷術や関連技術へのAdobeの貢献は、計り知れないほど大きい。今日なお盛んなPhotoshop一時代を築いたのも、同社の偉業である」と述べている。

 「Webアプリケーションバブルの最盛期には、『ColdFusion』が巨大な存在感を示していた。さらに、言うまでもなく無敵のPDFを忘れてはならない。近年においては、Macromediaを買収したことで、Flashやその後継技術(FlexおよびAIRなど)に対する取り組みが活発化し、オンライン文化の中軸を担うようになった」(コート氏)

 コロラド州ボールダーの独立系ソフトウェアベンダーで、AdobeのパートナーでもあるElectric RainのCEO、マイク・スシー氏は、「Adobeが25歳になったとは感慨深い。同社はすばらしい成果を残しており、これからもそうするに違いない」と語った。

 スシー氏いわく、Adobeは直接的もしくは間接的に、「PostScriptやPDF、Illustratorなどの画期的な発明を通して、われわれのデジタル生活にインパクトを与えた」企業の1つだという。「1994年のAldusから2005年のMacromediaまで戦略的な買収を繰り返し、ついには年商25億ドル規模の企業へと成長したAdobeは、優れたビジネスノウハウを持っている。Microsoftがオフィス生産性ソフトウェアにしたのと同じことを、Adobeはデザインソフトウェアにしたといえば、同社の偉大さが伝わるだろうか」(スシー氏)

 「プロのデザイナーにどんなツールを使っているのかと聞けば、だれもが間違いなくAdobe製品を挙げるだろう。Adobe製品は使っていないと答える人がいるなら、本物のデザイナーなのかどうか疑ったほうがよい」(スシー氏)

 デザインツールに関してもAdobeは歩みを止めていないと、スシー氏は話した。「同社は新しいAIR(Adobe Integrated Runtime)製品を、『プラットフォーム』という言葉で表している。これまでは、プラットフォームと言えばMicrosoftやAppleというのが定石だったのだが」(スシー氏)

 創業25周年の節目に臨み、AdobeはBlazeDSと呼ばれるオープンソースプロジェクトを発表した。同プロジェクトは現在、パブリックβ版が提供されている。

 Adobeの製品マネジメントディレクターを務めるフィル・コスタ氏は、同プロジェクトについて、「Javaアプリケーションサーバ内で動作するサーバ技術であり、Flexアプリケーションを既存のJavaサーバロジックと連動させることを可能にする」と説明した。「これを利用することで、リッチなデータコラボレーションアプリケーションが開発できるようになるだろう」(コスタ氏)

 こうした取り組みのおかげで、開発者はバックエンドの分散データに接続しやすくなり、同時に、データをリアルタイムにAdobe FlexおよびAdobe AIRアプリケーションに送出して、RIA(Rich Internet Application)の応答エクスペリエンスを向上させることができると、Adobeの関係者は述べた。

 Adobeは現在、LGPL(Lesser GNU General Public License)ライセンスのバージョン3に基づいて、同社のメッセージングおよびリモーティングプロトコルのサーバ実装を進めている。

 「このほか、『LiveCycle Data Services Community Edition』と呼ばれる、サブスクリプション型製品の開発も行っている」(コスタ氏)

 AdobeのLiveCycle Data Services Community Editionには、BlazeDSの認証ビルドや同社のエンタープライズサポートリソースに対するアクセスが含まれ、製品保証および特許侵害補償、付加的な開発者サポートといった特典も付帯するという。

 一方、クライアント/サーバデータ同期、ドキュメント生成、エンタープライズポータル統合などの高度な機能を搭載する、「LiveCycle Data Services Enterprise Edition」の販売も続けられる。

 さらにAdobeは、Adobe AIR、「Adobe Flex Builder 3」、Adobe Flex 3の新たなβ版についても発表を行った。

 Forresterのアナリスト、ジェフリー・ハモンド氏は、「開発者の観点からすれば、Adobeの技術を採用する際のハードルがより低くなっている。(オープンソース仮想マシンであり、「ESMAScript」のJIT[just-in-time]コンパイラである)『Tamarin』と併用することで、AIRおよびFlex SDK(ソフトウェア開発キット)開発者は、ツールやアプリケーションプラットフォームに多額の投資をしなくても、最先端のアプリケーションを試作できるのだ」と話した。

 「BlazeDSには、データ同期および送出などの機能が追加されている。基本的なFlex SDKではそうした機能をすぐに利用できないため、AJAX(Asynchronous JavaScript and XML)フレームワークの採用を検討していた開発者にとって、Flex開発は格段に魅力的な選択肢となるだろう」(ハモンド氏)

 コスタ氏も、「以前は『Flex Data Services』という正式名称で知られていたLiveCycle Data Servicesを、Adobeが部分的にオープンソース化しているのは実にすばらしいことだと思う。昔からJavaを使っているベテラン開発者たちもFlexを高く評価しているのには、驚かされた」と語っている。

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