真なるインターネットのフェーズへ日本のインターネット企業 変革の旗手たち

GMOインターネットグループは、ISP事業を基にレンタルサーバ、ドメイン登録事業などのネットインフラ事業に続き、ネットメディア事業へと拡大を続けている。その背景にあるものは、インターネットそのものの需要動向にあった。

» 2008年01月07日 00時00分 公開
[木田佳克,ITmedia]
GMOインターネットグループ代表取締役会長兼社長の熊谷氏 インターネットは、これからが幅広くインフラとして利用されていくフェーズと言えます

 1995年にインターネット事業を始めたGMOインターネット。現在では34社のグループ会社のうち4社が上場しており、インターネットにかかわるさまざまなサービスを提供している(2007年11月現在)。インタビューで、同社代表取締役会長兼社長の熊谷正寿氏は、インターネットビジネスとの出会いや、サービスの方向性、今後のネット動向などを語った。

ITmedia インターネットとの出会いがどのようにGMOインターネットグループの事業戦略とつながっていったのか、教えてください。

熊谷 1993年ごろに秋葉原でインターネットのデモを見て考えたことが、事業が成功すると確信したきっかけの1つとなりました。当時のインターネットは学術的に利用するもので、ビジネスとして利用することは賛否両論な状況でした。しかし、ここにこそビジネスチャンスがあると確信したのです。

 そして、現代ではインターネットのビジネス利用は、誰もが疑うことのないものになりました。GMOインターネットグループは、1995年にインターネット接続プロバイダを皮切りとして、ドメイン登録事業、レンタルサーバ事業など、インターネットの基盤サービス(ネットインフラ事業)の提供を中心に拡大をしてきました。常に、インターネット利用のニーズ変化に応える形で事業展開を行ってきたわけです。

 さらに昨今では、レンタルサーバ上の付加サービスとして、ホームページ・ECサイト構築支援サービスやメール基盤、セキュリティ対策、クレジットカード決済、グループウェアなどと、さまざまなインターネットのサービスを提供しています。前述のように、当社はISP事業がスタートのきっかけとなったわけですが、これらのサービス展開は必然的なものだったと考えています。

 また、このようなネットインフラ事業に加え、ブログやSNS、ネット広告などネットメディア事業にも着手していますが、サービス基盤上で展開するコンテンツビジネスも今後欠かせないものの1つとして考えています。

インターネットはまだフェーズ1の段階

ITmedia インターネットは、現在どのような状況にあると見ていますか。

熊谷 現在のインターネットは、基盤がやっと整ってきた段階であり、より多くの非IT業種が参入してくるのはこれからのことだと考えています。このため、ここ1、2年がやっとフェーズ1の段階を超えた状況と言えるでしょう。

 インターネットの利用人口が増えることで、今や水道やガス、電気のようなインフラとして認識されつつあります。基盤が整えば、今後さらにさまざまな業種で利用されることになることは必至です。インフラとしてさらに広がりを見せていく時、何が必要なのか? そう、考えることがあります。その注目しているものの1つとして、モバイルインターネットも欠かせないものでしょう。

 今後、PC以外のモバイルデバイス機器がアクセスを増やすことで今まで以上のネットインフラ、そしてサービス内容の洗練さが要求されるのは間違いないでしょう。

 そして、情報システム部門を持たない中小企業でも、インターネット上でビジネスが行えるよう整備されていくことは必至です。GMOインターネットグループは、このようなニーズにも応えられるよう、法人のお客様向けに“ニッポンのインターネット部を目指して”というキャッチコピーを掲げ、ビジネス拡大の役に立つものを作り出していくことが使命だと思っています。

GMOインターネットグループ代表取締役会長兼社長の熊谷氏 中小企業でIT管理者不在であっても、インターネットを利用したビジネスが戦力となります

ITmedia 最近のGMOインターネットグループのサービスを見ると、グループ会社間で商品サービスを共有する動きが目立っています。これも戦略上の1つだと考えてよいのでしょうか。

熊谷 その展開は、クロスセルと呼んでいます。各サービスで提供するWebサイトと管理画面の共用などを始め、顧客データベースを統合することでリコメンデーションを行っていきます。お客様がWebサイトを構築したいと思った場合、GMOインターネットグループのサイトへ来れば、必要なものが揃うというわけです。例えば、お客様のホームページを作る場合、ドメイン取得が必要ですが、GMOインターネットの「お名前.com」で取得できます。そしてリコメンデーションによりレンタルサーバの申し込みもできる、さらにセキュリティやECに取り組みたいと思った場合でもGMOインターネットグループのサービスで拡充できるのです。ユーザーは、コンテンツの充実さに注力すればよく、そのほかの基盤となるところはグループの商材が支えます、ということですね。

 そして、手厚いオプションサービスを用意すれば、おのずとから顧客満足度も高まるはずです。これらをサービス提供することで、結果的に使い勝手の良いWebサイトとなるよう配慮しているのです。

 コンテンツビジネスでもユーザー数獲得が大きなアドバンテージとなるわけですが、インターネット基盤を提供する場合でも、このような法則が当てはまると言えるでしょう。

ITmedia GMOインターネットグループが望む人材像はどのようなものでしょうか。IT業界で働くことを志す若者に対してメッセージをください。

熊谷 伸びる業界で働くことがいちばんだと考えます。前述のように、インターネットを利用するサービス産業は発展途上であり、今後いっそうのシェア拡大が期待できるでしょう。そのような場で働けることがやりがいとなるはずです。

ITmedia 休暇となるオフはどのように過ごされていますか。

熊谷 常にオンですね。ゴルフが好きでよく楽しんでいますが、いっしょに回るのも仕事の関係者ですし、オンのような感覚です。会社帰りには、ジムでトレーニングすることもありますが、常に仕事のことを考えながらですね。自宅に帰ってからも整理したことをまとめたりしています。


 同社における今後の動向を知る上で欠かせないものとして、GMOインターネットグループでは、55年計画が挙げられる。それによると、2051年には207社で社会や人々の役に立つ“インターネットコンツェルン”を作り上げていく予定だという。

 その根底にあるのは、「インターネット産業では、すばらしい技術やサービスを提供することでユーザーをいかに集められるかが企業価値へと結びつく」と語られている。

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