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» 2008年02月06日 00時00分 UPDATE

日本のインターネット企業 変革の旗手たち【番外編】:TV放送がインターネットに歩み寄る理由

NHKといえばハイビジョンの研究開発に早くから取り組むなど技術開発への先見性が知られている。日本を代表するTV放送局として、インターネットとの協調をどのように考えているのだろうか?

[木田佳克,ITmedia]

 「デジタル放送の開始が、テレビとネットワークのかかわりが深まるきっかけとなりました。インターネットはベストエフォートという性質を持ちつつも、放送という基幹サービスの付加価値になり得ると考えています」――日本放送協会、編成局デジタルサービス部副部長の田中寛氏は、これからのTV放送がネットワークとどのように協調していくべきかを語った。

D100d0093.jpg 日本放送協会、編成局デジタルサービス部副部長の田中寛氏

 日本を代表するTV放送局。そして、2008年2月現在、改正放送法の施行が間近となっているが、日本放送協会(以下、NHK)はインターネットとの関係をどのようにとらえ、今後どのように取り組んでいく考えなのか? 取材では、TV放送の未来を予見させる幾つものキーワードを聞くことができた。

ITmedia デジタルサービス部とは、どのような取り組みを行う部署なのでしょうか。

田中 デジタルサービス部では、放送に関係するさまざまなデジタルコンテンツの「実運用」と「サービス開発」を行っています。現場では、番組ディレクターと協力してネットワーク関連のプロデュース業務を担っています。

 NHKでは、紅白歌合戦でのワンセグやケータイからの審査員投票を行う試みが目立っているかとも思います。しかし、日ごろからほかの番組でもWebでの番組告知はもちろんのこと、視聴者参加や動画提供など幅広く活用しています。

ITmedia デジタルサービス部によるインターネットへの取り組みは?

田中 データ放送やワンセグなどの放送通信連携開発と、iモードなどのケータイでの情報提供が、私の主な担当です。2000年12月のデータ放送開始時にはまだノウハウが少なかったことからいろいろな苦労がありました。しかし、それを機にTV放送のスパイスとして採り入れていくことが先決だという確信もありました。

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 デジタル放送開始以前のTV放送は、情報を一方的に届けるメディアだったわけですが、今後は視聴者参加型がポイントの1つとなっていくことでしょう。しかし、この参加型をTV番組として成り立たせるためには基盤作りが大事だと知りました。

 例えば視聴者投票についてですが、視聴者からの投票を放送中に受け付けて、その結果を番組の放送中に紹介する必要があるわけです。これには、受け付け開始から締め切りを番組中でどのようなタイミングで何分間行えばよいのか? そして締め切り後にデータ解析を行って司会者に伝えるまでどの程度の時間を要するのか、といった秒単位の管理を要求されるのです。このシステム設計は番組が成功するかどうかに大きくかかわります。

ITmedia 紅白歌合戦の視聴者投票はその最たるものとして考えてもよいのでしょうか。

田中 紅白歌合戦といえば、赤白の勝敗をNHKホールに集った方々が投票することが恒例となっていました。その範囲をホール内から広げ、視聴者、それもインターネットを介したものへと拡大することで視聴者とのつながりが広がりました。特にケータイからの受け付けを行うようになって、年齢層はもちろんのこと、これまでと比べものにならないほどの多くのアクセスを受けるようになっています。

 紅白歌合戦の番組でいえば、2002年からデータ放送での視聴者投票を開始しましたが、2005年からケータイ審査員という制度を取り入れ、より幅広く視聴者に参加していただけるようになりました。この年は定員1万人の投票受け付けでしたが、次の年は1万5000人、そして2007年末の放送では5万人からの受け付けを可能としました。この拡大の裏には、インフラ整備が大きく関与しているのですが、データベースシステムの見直しも何度も行いました。

 紅白歌合戦は、NHKの中でも最大の生放送番組として取り組んでいますが、紅白以外でもさまざまな試みを行う番組も多くなっています。日ごろからインターネットとの協調は意識しており、紅白歌合戦だけが視聴者参加番組というわけでもありません。さまざまな番組で双方向演出への取り組みを考えています。

ITmedia いわゆるベストエフォートのインターネットを採り入れることは、放送局として不安はないのでしょうか。

田中 インターネットを放送の一部として採り入れることは、放送と同様に、事故にならぬよう細心の注意が必要だと考えています。ただしそれ以前に、TV番組としての基本を忘れることなく、インターネットの特性を活用して、視聴者との「つながり」を効果的に番組内容に採り入れていくことが先決だと思います。

 今後のTV放送に必要なものは何なのか? その可能性を考える上で、視聴者投票を中心とするリアルタイムの情報を、いかに短時間で解析できるかもポイントだと思います。

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 そして、生放送番組であればなおさらですが、番組ディレクターのその場の判断にも追従できるよう、システム仕様を理解し、処理時間を正確に把握していく必要があります。視聴者としては、今投票した結果が、すぐに番組で活用されているという満足感を得ることができ、よりいっそう番組への愛着感を持ってくれると思います。

 テレビ番組のディレクターは、常に良い番組にするため何度も構成変更を行います。生放送番組であってもです。その変更にも対応できるよう、あらかじめ幾つかのケースを想定し、追従できるようなシステム仕様にしておく必要性も、ここ数年の経験で学びました。


 NHKの取材で印象だったのは、映像だけで情報を送るTV放送はすでに過去のものだという認識を持っていることだった。最近ではTV放送局の多くでWebページへの誘導を積極的に行い、詳細情報はインターネットでといった導線が確立されつつある。また、EメールやWebページからの投票で視聴者からの意見感想を取り込むなど、ユーザー参加型のメディアへとそのイメージを変えつつあるようだ。

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