業務のプロ=発注者が仕様を書く、は無謀か闘うマネジャー(1/2 ページ)

設計書は発注者が用意する。「そんなことできるものか」という読者もいるかもしれないが、ここから直さなければ失敗はいつまでたってもなくならない。

» 2008年04月25日 10時55分 公開
[島村秀世,ITmedia]

SEと職員のいい関係

 前回コスト削減に必要な視点について考察したが、その話の続きに移る前に、筆者の職場である長崎県庁の20年ほど前を振り返ってみたい。当時のSEの仕事は業務システムの開発ではなかった。オンライン機能など、新たに汎用機に備わった機能を用いて県庁の電子化を進めることにあった。業務システムの開発は、業務に精通している県職員が中心となって行っていた。

 そろばんや電卓で税額や給与の計算をしていたわけだから、一気に計算し帳票出力までしてくれる汎用機はまさに画期的であったことだろう。嬉々として取り組んだらしい。もちろんプログラムなんてとんでもないと逃げ回ってた人もいたらしい。このようなことから、オンラインでデータを登録するまでの開発をSEが行い、データを読み取って計算するところは県職員という形で、それぞれの専門知識をうまく生かしあいながら業務を分担していた。SEと職員は極めていい関係であったようだ。

 そんな時代を経た後の今日であるが、発注者である職員は仕様も書かなければ、テストも中途半端で、障害が発生する度にSEを叱りつけるようになっている。一方、SEは業務知識もないのに設計書を書き、プログラミンングは下請けへと回すようになった。私はこの状況が怖くて仕方がない。誰もシステム全体を見渡せないばかりか、仕様も設計書もあいまいなのにシステムだけが毎日何となく動いているからだ。

 筆者は、民間から長崎県庁に入ったのを機に、仕事のやり方を大きく見直すことにした。まず、設計書は発注者が用意するものとした。民間にいたとき、筆者の周りも上記のような状況から失敗プロジェクトが発生したのを見ていた。どの場合も、仕様があいまいなまま開発に入り、結局、動かないというパターンで、発注者からは「ばかやろう」と怒鳴られ、上司からは「何とかしろ」と叱りつけられる。上司も上司だ。保身のために「金は出せないからな」とまで付け加えてくる。こんな生活を演じるのも、見るのも嫌なので、発注者である県が詳細な設計書を用意することにした。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ