SAPはSaaSで出遅れ? カガーマンCEOの答えはノーだSAPPHIRE 08 Orlando Report(1/2 ページ)

昨年9月、「Business ByDesign」でSaaS市場に参入したSAPだが、事業の展開が計画より遅れている。この市場では、salesforce.comやNetSuiteなどの新興企業がパイオニアとして存在し、SAPはこのまま後塵を拝するのか?

» 2008年05月07日 07時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 日本が黄金週間の後半を迎えるころ、全米有数のリゾート、フロリダ州オーランドではSAPの年次カンファレンス「SAPPHIRE 08 Orlando」が開幕し、エンタープライズアプリケーション市場をめぐるホットな戦いが繰り広げられている。

 2006年にも、同じオレンジカウンティ・コンベンション・センターが会場となり、エントランス前の車寄せにはOracleやsalesforce.comの広告を屋根に載せたタクシーが何台も乱入し、ゆっくりと車を進めながら、「示威行為」を繰り返していたが、今回はややスマートな戦術に切り替えたようだ。ホテルのインターネット接続業者であるWayportのログイン画面をほぼ独占的に買い占め、「フォーチュン100のSAP顧客のうち、95%はOracle Applicationsも使っている」と主張する広告を出したのだ。

初日からインタビューを精力的にこなすカガーマン会長兼CEO

 5月5日は、基調講演のような本格的なセッションが翌日からとなっているため、慌ただしさはないものの、ASUG(Americas' SAP Users' Group)の年次カンファレンスがひと足早くスタートしているため、早朝から多くの企業顧客がコンベンションセンターに詰めかけている。

 日中韓の共同プレスインタビューを受けたSAPのヘニング・カガーマン会長兼CEOは、「エンタープライズSOAへの対応は完了した。今年のSAPPHIREでは、PDCA(plan-do-check-act)サイクルによるビジネスの最適化とアジリティをテーマに掲げたい」と話す。1月に公開買い付けが成功したビジネスインテリジェンスのリーダー、Business Objectsのソリューションを組み合わせることで、信頼性の高い、一貫した情報が得られ、部門の壁を乗り越えた業績の最適化が可能になるとする。

 SAPPHIREが本格開幕する6日の基調講演では、「SAP NetWeaver BPM」の発表も予定されている。

1QのSME事業は28%も成長

 SAPといえば、大企業向けのソリューションというイメージが強いが、今回のSAPPHIREでは、中堅企業や中小企業(SME)の市場でも同社のビジネスが大きく成長していることが強調された。SMEは、SAPの顧客ベースの約75%を占めており、この第1四半期は前年同期比で28%という際立った成長を遂げたという。

 SAPは、従業員2500人以上の大企業には「SAP Business Suite」を、それ未満の中堅企業には業界ごとのベストプラクティスを活用し、SAP ERPの短期導入を可能とする「SAP Business All-in-One」を、さらに従業員が100人未満の小規模事業者には別立ての製品として「SAP Business One」をそれぞれ提供してきたが、新たに昨年9月、従業員100人から500人の中堅企業をターゲットにしたSaaS型の「SAP Business ByDesign」を発表し、中堅の下のボリュームゾーンを埋めようとしている。

 SAP Business ByDesignは、先行する5カ国(米、独、英、仏、中)で150の顧客と契約を交わしたものの、カガーマン氏は事業の展開がやや遅れていることを率直に認めた。

 この領域では、salesforce.comやNetSuiteなどの新興企業がパイオニアとして存在するが、カガーマン氏は、「われわれのオンデマンドソリューションは中堅企業向けであり、ライバルはいない。この市場では自社でシステムを構築・運用するのが主流であり、SaaSが一定のシェアを獲得するにはあと2〜5年かかるだろう」とみている。

 「SME市場では、SAP Business All-in-OneとSAP Business Oneの売り上げが好調であり、われわれもこの2製品にフォーカスしている。SAP Business ByDesignの提供は、製品開発という面では計画通りだが、オペレーションが予定より遅れている。SAPにとってコストが掛かりすぎているためだが、今年中には5カ国に続いてインドでも提供が始まる見込みだ」(カガーマン氏)

 日本市場への投入も当初は2009年初めとされていたが、「6カ月から7カ月遅れそうだ」(カガーマン氏)

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