ガールフレンドへのプレゼントが世界中に広まった理由――Web2.0時代のマーケティングNext Wave(3/3 ページ)

» 2008年05月26日 09時27分 公開
[幾留浩一郎,ITmedia]
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猫の写真を整理するWidget大人気

 Web2.0 では、何がどこで生まれて、どう伝播して広がるのか分からない。想像を超えることが沢山起こる。1例を紹介すると、昨年当社のある社員が、猫好きのガールフレンドにせがまれて、インターネット上のいろいろな場所に公開されている猫の写真を沢山集め、面白そうな写真だけを整理して順番に表示する1個のWidgetを作った。彼女が気に入って自分のページに飾りとして表示するようにした。するとそれを見た友達が面白いと、自分のページにも貼り付けた。そしてその友達の友達へと広まる連鎖が始まり瞬く間に広がり始めた。2週間後、その社員は自分のサーバーが過負荷でダウンしているのに気がついて仰天した。世界中の何十万人もの人たちに利用され何百万人が見る人気Widgetとなっていたからである。

 アクセス解析はWebサイトを訪問するユーザーのログを解析して、広告の効果やコンテンツの最適化を可能にする手法で、近年急速に利用が拡大してきたが、ここにもWeb2.0の波で大きな変化が起こっている。WAA (Web Analytics Association)が出した最近の調査リポートによれば、オンラインマーケティングの専門達が最も重要だと考えているのが、ビデオ、ブログ、SNS、RSS、Widgetそれにモバイルなど、いわゆるWeb2.0メディアを追跡しユーザーの挙動を解析することである。アンケートに回答した専門家の約半数がWeb2.0メディアを利用するユーザーの挙動解析に興味を持っている。昨年の同じ調査結果と比較すると興味を持った人が急増している。理由は単純で、その影響力が無視できなくなったからである。

 しかし例えば、RSSやWidgetなどは、ログの収集方法で多く使われているタグ方式だけではデータの収集が十分にできないものが多く、モバイル端末のほとんどが従来のタグ方式が使えないものが多い。つまりWeb2.0 では必要なデータの収集が困難な場合が多く出てきているのである。ブラウザーだけであればデータ収集方法は1つの方法だけでも十分であったが、Web2.0では複数のデータ収集方法を統合的に使う必要が出てきた。アクセス解析ツールのRTmetricsは、データ収集にパケットキャプチャ方式を始め、タグ方式もログ方式など、全ての方式に対応しているために、Web2.0メディアの解析も行いたいという企業で利用が増えている。

 かなり以前のことであるが、私はNASAのスーパーコンピュータの活用研究プロジェクトに参加したことがある。膨大なデータを超高速で解析し、少しでも正確な「情報」を割り出す試みであった。その当時、イラクのクエート侵攻に始まった湾岸戦争中に米軍は間違って味方を攻撃する事故を起こした。そのような間違いを無くしたいとさまざまな努力が続けられていた。戦場には例えば、前線の兵士の報告、偵察機の報告、レーダーのデータなど、あらゆる場所から膨大なデータが集められるが、極限の状況なので、間違ったデータや不完全なデータも多く含まれる上に、悠長にデータを検証する時間的な余裕がない。そこで何十台ものコンピュータを駆使して膨大なデータをリアルタイム解析することで情報の正確性を高められないかと多くの試みを行った。

 ビジネスは平和な世界であるが、「情報」の重要性には戦場のそれと共通するものがある。従来の常識が通用しなくなる大きな変化が起こっている今、「勘」だけに頼った企業は衰退し、「タイムリーな情報」を持った企業のみが高い競争力を持てる時代となっている。Web2.0でも膨大なデータを収集しリアルタイムに解析するツールが必須である。

プロフィール

いくどめ・こういちろう AuriQ Systems, Inc. 社長兼CEO。リアルタイムWebアクセス解析システム「RTmetrics」をはじめとするソリューションで、企業のオンラインビジネスを支える。東京工業大学卒業後、新日本製鉄、Infogy社を経て2002年より現職。18年以上のIT産業におけるビジネス経験を持ち、現在、米国と日本を往復する毎日。


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