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» 2008年06月09日 01時38分 UPDATE

計る測る量るスペック調査隊:LANケーブルの仕組みを理解して自作せよ (1/3)

システム構築の達人は、決してLANケーブルを既製品で済ますことはない――そんな言い伝えもまことしやかにささやかれる一方で、LANケーブルを自作できない方が増えてきた。LANケーブルの自作はまったく難しいものではない。これを読んで、「LANケーブルの違いが分かる男」の称号を得てみるのはどうだろう。

[ITmedia]

 LANを構成する必須要素といえば、ケーブルである。現在10/100/1000BASE-Tで多く使用されているUTPケーブルは信号線をより合わせることでノイズ対策を行っている。しかし、線をより合わせるだけで本当にノイズ対策が可能なのだろうか? 今回はそのような疑問を解決すべく、UTPケーブルについて調査を行った。

イーサネットとケーブル

tnfig1.jpg

 現在、LANにおいて最も利用されている100BASE-TX規格*では、ケーブルとして「カテゴリ5以上のUTPケーブル」、機器と接続するためのコネクタとして「RJ-45コネクタ」を使用している。

 また、10BASE-Tや1000BASE-Tといった通信速度が異なる規格でも、使用されるのは同じUTPケーブル、RJ-45コネクタである。しかし、実はまったく同じケーブルが利用できるわけではない。例えば1000BASE-Tでは「エンハンスドカテゴリ5(以下、カテゴリ5E)以上」、10BASE-Tでは「カテゴリ3以上」という指定が加えられている。

 「カテゴリ」が大きい方が高速な通信ができる、という想像はつくが、実際この「カテゴリ」というものは何を表しているのだろうか?

信号とノイズ

 カテゴリの話をする前に、まずはネットワークを介して情報をやり取りする仕組みを簡単に復習しておこう。

 導線を使って遠隔地と通信を行う場合、情報(ビット列)をケーブルにかかる電圧の組み合わせに変換して伝送することが多い。例えば図1のように、10/100BASE-TXでは4本、1000BASE-Tでは8本の導線を使用し、+と−のペア間における電圧差によって情報を伝送している。このとき、送信する電圧の高低を組み合わせる間隔を短くし、一定時間内に送信する波の数を多くすればするほど、同じ時間内でより多くの情報を送信できる。この1秒間に送信される波の最大数は伝送周波数と呼ばれる。つまり、伝送周波数が高ければ高いほど高速なデータ通信が可能なわけだ。しかし、現実には伝送周波数を上げることは簡単ではない。ノイズの影響を受けるからだ。また、信号の大きさというのも重要な要素となる。

図1 図1 イーサネットにおける信号の伝送

 伝送周波数が低く、信号レベルが大きい場合、図2aのように多少のノイズが混入しても元の波形は十分認識可能だ。しかし、周波数が高く信号レベルが小さい場合はノイズの影響を受けやすくなり、図2bのように小さなノイズが混入しただけでも波形を正しく認識できなくなってしまう。さらに、周波数が高くなると信号自身が発するノイズの影響も無視できなくなる。そのため、一般的なケーブルはさまざまな方法でノイズ対策を行っている。例えば、UTPケーブルでは信号線のペアをよることで、ノイズ対策を行っている(文末コラム参照)

図2 図2 信号周波数とノイズ

 一方で、使用する信号の最大周波数や、使用できるケーブルの最大長は、使用する通信規格や通信速度から計算できる。例えば伝送周波数は100BASE-TXで約62.5MHz、1000BASE-Tでは約80MHzだ。そこで、それぞれの通信規格に対して十分に信号を伝送できるよう、TIA/EIA*によってケーブルの性能が定められた。これが「カテゴリ」と呼ばれているものである。

 現在、カテゴリは表1のような用途向けに6までが規格化されており、さらに高速な通信を行うためのカテゴリ7が策定中だ。各カテゴリは下位互換性を持っており、例えば100BASE-TXで使用されるカテゴリ5のケーブルをカテゴリ3の代わりとして10BASE-T向けに使用することも可能だ。カテゴリが上位の製品ほどノイズに強く高い周波数を伝送できるため、1000BASE-T向けにカテゴリ6のケーブルを利用することも多い。また、セグメント長(伝送距離)*については、10/100/1000BASE-Tの場合、最大100メートルと規定されている。

分類 用途 最大伝送周波数
カテゴリ1 音声通信用 -
カテゴリ2 低速データ通信用 1MHz
カテゴリ3 10BASE-T 16MHz
カテゴリ4 20MHz
カテゴリ5 100BASE-TX 100MHz
カテゴリ5E 1000BASE-T 100MHz
カテゴリ6 1000BASE-TX 250MHz
カテゴリ7 10Gビットイーサネット(策定中) 600MHz
表1 UTPケーブルの分類と用途

UTPケーブルの構造と規格

 現在、一般に販売されているUTPケーブルはカテゴリ5E、もしくはカテゴリ6のケーブルだ。どちらも8本の導線が2本ずつより合わされ、さらにそれらが緩やかにより合わされて1本のケーブルを構成している(以下写真)。さらに、カテゴリ6のケーブルでは、よりの間隔を短くしたり、ケーブル内に十字状のしきりを入れたりすることでノイズの影響を抑え、より高い周波数の信号を送れるようにしている。また、ケーブルによってはシールドなど、ほかのノイズ対策が施されているものもある*

tnfig4.jpg カテゴリ5E(左)とカテゴリ6(右)のUTPケーブル

 また、各ケーブルは信号を送る+と−のケーブルがペアになってより合わされるようにRJ-45コネクタと結線される。一方、誤って結線した場合などで+と−のケーブルがペアになっていない場合、電気的には正しく結線されていても、より対線によるノイズ打ち消し効果が働かないため、周波数特性が極端に低下し、最悪の場合通信ができなくなる。このような、より合わされていない+と−のペアはスプリットペアと呼ばれている。

このページで出てきた専門用語

100BASE-TX規格

100BASE-TXの「100」は通信速度100Mbps、「BASE」はベースバンド転送方式、「TX」はツイストペアケーブルを表している。

TIA/EIA

TIAは米国電子通信工業会、EIAは米国電子工業会のこと。それぞれ電気/通信機器関連の規格を定めている団体。

セグメント長(伝送距離)

ネットワークに接続されている端末間の最大距離。

ほかのノイズ対策が施されているものもある

10/100/1000BASE-T向けのシールドされたUTPケーブルは、STPケーブルと呼ばれる。


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