ケータイアップデート機能を提供するレッドベンドモバイルの安全を支える「黒子役」

最近の携帯電話にはソフトウェアを更新する機能が搭載されている。端末の高機能化とともに同機能の重要性がますます高まっている。

» 2008年07月22日 11時57分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 「携帯電話をアップデートしてください」――。最近、携帯電話会社からこのようなメッセージを受け取る機会が増えてはいないだろうか。メッセージに従って操作をすると、携帯電話会社のサーバから更新プログラムが端末にダウンロードされ、アップデートが自動的に完了する。

 この機能は、「Firmware Over The Air(FOTA)」などと呼ばれ、無線ネットワークを経由してユーザーへ更新プログラムを一斉配信できるのが特徴だ。以前は、端末に不具合が見つかるとメーカーが自主回収などの対応をしなければならなった。携帯電話の普及で、現在では1機種だけでも数万から数千万台のユーザーを抱えるケースが珍しくなくなり、メーカーがすべての端末を回収するのは事実上不可能だろう。FOTAは、このような課題を解決する技術として、採用が急速に広まっている。

阿部氏

 FOTA技術の米RedBend Softwareは、携帯電話やM2M(Machine to Machine)と呼ばれる組み込み機器へソフトウェア配信に特化したベンダーとして1999年に設立された。現在では、188機種約3億6500万台の携帯電話にFOTA用ソフトウェアが搭載され、NokiaやMotorola、LG、Sony Ericsson、シャープなどが採用しているという。

 日本法人レットベンド・ソフトウェア・ジャパンの阿部一博代表は、「PCではブロードバンド回線の普及で、更新プログラムのデータサイズが大きなものになっても影響は小さいが、携帯電話網では送信できる容量が少ないだけに、効率的に配信する仕組みが求められる」と話す。

 携帯電話では通信回線の容量以外にも、端末のメモリ容量がPCよりも少ない、ソフトウェア更新に伴う機能停止時間を短くするといったさまざまな課題が存在する。「携帯電話はもはや生活インフラとなり、更新中に警察や救急車を呼べなくなっては大変なことになる」(阿部氏)

 組み込み製品のソフトウェアを更新する場合、通常は更新分を含めたプログラム全体を配布・再インストールするか、もしくは更新プログラムだけを追加するといった手法が取られる。近年の携帯電話では高機能化に伴って更新プログラムのサイズが数Mバイト〜数十Mバイトになり、携帯電話のデータ通信速度が高速化されつつあるものの、端末にデータをダウンロード、インストールするだけで数十分を要してしまう。

 そのため、同社では配信する更新プログラムのデータサイズを、通常よりも10分の1程度に圧縮する独自技術を活用し、端末へのダウンロード時間を短くする方法を採用している。さらにインストールする際には、ファームウェア全体のうち修正部分だけを更新プログラムと入れ替えるようにする仕組みで、更新に伴う携帯電話の機能停止時間をなるべく短くするようにしている。

 これにより、更新プログラムに割り当てるメモリの領域も少なくなるため、携帯電話の限られたリソースを新規アプリケーションに活用するといった効果もあるという。同社が国内でサービスを始めた2005年以降、これまでにのべ1000万件以上のソフトウェア更新が行われた。

携帯電話にもPC並みの使い勝手を

 今後のソフトウェア更新技術の展開について、阿部氏はユーザーのサービスを止めない機能の普及とアプリケーション単位でデータを更新できる機能の提供を目標にしている。例えば、ユーザーが通話やゲームなどをしている最中に更新プログラムがバックグラウンドでダウンロード、インストールされ、ユーザーが特に意識することなく自動的に携帯電話の不具合を改善する、機能強化するという具合だ。

 同社では、フォームウェアのバージョンやメモリの空き領域、アプリケーションの種類といった機器の状態を遠隔から管理できる機能も提供する予定。これらの機能により、ソフトウェアをさらに効率的に配信できるようになるという。

 ソフトウェアの更新機能は、携帯電話以外にも自動販売機管理の機器や水道、ガス、電気などの検針装置、自動車の車載機器といった分野でも利用ニーズが高まりつつある。さらに2009年ごろから世界的にサービスが本格化するWiMAXでも、この機能の活用が注目されている。

 「国内の携帯電話市場では、販売方法や契約制度の変更でユーザーが端末を利用する期間が長期化していく方向にある。ユーザーが長い間端末を安心して利用できるインフラとして、ソフトウェア更新機能の向上を目指す」(阿部氏)

過去のニュース一覧はこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ