コラム
» 2008年08月04日 05時00分 UPDATE

Trend Insight:無能なITマネジャーと呼ばれないためのキーワードは「PUE」 (1/2)

グリーンITが叫ばれる中、サーバの消費電力に目がいってしまうITマネジャーは筋が悪いといわざるを得ない。エネルギーコストをどう削減するかを考えるに当たって、圧倒的な電力効率を持つモバイルデータセンターがHPからリリースされた。その秘密に迫ってみたい。

[西尾泰三,ITmedia]

ITマネジャーが気づかないグリーンITの盲点

 この記事では、不幸な現実を伝える書き出しから入らなければならない。HPでエンタープライズストレージ・サーバ、スケーラブル・コンピューティング&インフラストラクチャ事業のプロダクトマネジャーを務めるケネス・リンド氏が伝えるところによると、「(数年間での償却を想定すれば)2008年現在、サーバ1台に対して掛かってくるエネルギーコストはサーバの取得コストとほぼ同額となり、サーバのTCO(総所有コスト)の中で最も大きな額を占めるまでになった」という。

 確かに近年、サーバは安価になり、サーバ1台あたりの消費電力は数年前と比べれば幾分低下したかもしれない。しかしその半面で、データセンターの高密度化が進んだことで、結果としてラック当たりの消費電力は上がり続けている。そのために必要な冷却コストまで含めて考えれば、サーバ1台の取得コストの約2倍に相当するエネルギーコストが発生していることになるというのだ。

 石油価格の高騰などにより、エネルギーコストも当面は下がらないだろうし、サービスレベルを下げてもよいからサーバの台数を減らせ、という奇特な経営者が出てこない限り、エネルギー消費量は今後も上がり続けるだろう。IT予算の削減が叫ばれる中で考えるべきは、どのサーバを選ぶかというミクロな世界の話ではない。

 だが不幸なことに、現場のITマネジャーがエネルギーコストに目を向けることはほとんどない。当然だろう、機器の購買部門と電気料金の支払い部門は別であることがほとんどだからだ。その是非をここで問うつもりはないが、少なくとも、あなたがハードウェアの選定に立ち会えるのなら、ぜひ経営層やハードウェアベンダーに聞いてみるとよい。「このサーバを導入した場合、冷却なども考慮したエネルギーコストは償却までに幾ら掛かりますか」と。提案書にあるサーバ本体の価格がさほど意味を持たないことに気づくだろう。

 もっとも、本稿はオオカミ少年のように危機感だけを無意味にあおることが目的ではない。電力効率の向上を図るための業界の動きを以下では紹介していこう。

データセンターの電力効率を示す「PUE」

 データセンター全体を見据えたマクロな視点でグリーンITを考えるには、誰にでも分かりやすい形でデータセンターや企業のサーバルームの電力効率を示す必要がある。こうした背景から出てきたのが、データセンターの省電力化に取り組む非営利団体「The Green Grid」が提唱する「PUE」(Power Usage Effectiveness)と呼ばれる指標で、次のような計算式で表すことができる。

PUE = データセンター全体の総消費電力/データセンター内で稼働するIT機器の総消費電力


 ここで定義されているIT機器や、データセンター全体とした場合に含まれる要素についての詳細は省くが、要はデータセンターやサーバルーム全体で消費した電力をIT機器が消費した電力で割った値で、PUEが小さいほど電力効率がよいといえる。ミック経済研究所が複数のデータセンターに対して行った最近の調査では、PUEは平均2.0とされており、データセンター全体の総消費電力の半分は、IT機器以外のもの――空調設備をはじめ、電源関連の装置、照明装置など――であることを示している。

 PUEの値は、直感的に理解しにくいとこがあるため、The Green Gridは「DCiE」(DataCenter infrastructure Efficiency)という指標も提案している。分かりやすく言えば、PUEをパーセンテージ表記に変換したもので、「1/PUE*100」で求めることができる。例えばPUEが2.0の場合、DCiEは50%となる。ラックやUPSなどを手掛けるAPCからはこれらを可視化するソフトウェアが無料で提供されているので興味がある方は試してみるとよい。

 PUEを下げる取り組みは各社が進めており、日本IBMが2008年1月に稼働させた「幕張データセンター」ではPUE 1.8を達成、日立製作所もPUE 1.6以下を目指したデータセンターをまもなく完成させる見込みだ。

注目を集め始めたモバイルデータセンター

tnfigpod1.jpg HP POD。熱交換器に冷却液(冷水)を送り込む構造となっている

 こうした事例から分かるのは、既存のインフラを効率的に設計し直し、最適化を図っていくことで電力効率はかなり改善できるということだが、データセンターの改修費や設備費といったコストが高くつくのは避けられない。そんな中、注目を集め始めているのが、あらかじめ冷却装置を搭載したコンテナ型データセンター(モバイルデータセンター)で、電力効率が高いデータセンターを短期間かつ低コストで構築できるという触れ込みで、各ハードウェアベンダーがこぞってこの製品を発表している。サンの「Sun Modular Datacenter S20」を、IBMの「Portable Modular Data Center」(PMDC)などがそれだ。

 冒頭に出てきたリンド氏がマーケティングを担当するコンテナ型データセンター「HP POD」(HP Performance Optimized Data Center)もその1つである。実際の製品投入は9月から10月にかけてを予定しており、価格はまだ未定となっているが、注目すべきはそのPUE。HP PODを用いたソリューションでは、他社と比べても圧倒的に優れたPUE 1.2(DCiEは約83%)を実現しているという。公開されている情報がまだ少ないHP PODだが、リンド氏に話を聞くことができた。

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