通常マシンをエンタープライズストレージとして使用可能にするOpenfilerLeverage OSS(1/3 ページ)

さまざまなベンダーから販売されているストレージ製品。しかし、この種のハードウェアの実態は、ごく一般的な構成であったりする。それならば、Openfilerを用いて通常のサーバをエンタープライズレベルのストレージ専用マシンとした方がはるかに経費節約につながる。

» 2008年09月12日 14時00分 公開
[Cory Buford ,SourceForge.JP Magazine]
SourceForge.JP Magazine

 システムエンジニアであるわたしは、各種の企業クライアントの求めに応じる形で、これまでさまざまなストレージを扱ってきた。実際そうした環境で使われている方式は、DAS(Direct Attached Storage)、NAS(Network Attached Storage)、SAN(Storage Area Network)、iSCSI(Internet Small Computer System Interface)など多岐にわたる。そしてこれらの実装時にクライアントが選択するのは、EMC、Dell、Hewlett-Packard、EqualLogicなどのベンダーから販売されているプロプライエタリ系のストレージ製品となるのが通常である。とはいうものの、この種のデバイスの実体は、ごく一般的なサーバに制御用のOSと複数のHDDを搭載しただけのものでしかない。そのためのOSとしても、一部ではUNIXやLinuxベースのものが使われているのである。それならば、通常のサーバに要件を満たすOSを搭載することで、ストレージ専用マシンに仕立て上げられるのではなかろうか?

 そうした可能性を追究しているうちに見つけたのが、Openfilerという多数のストレージ用プロトコルをサポートしたソフトウェアであり、これに最低限の要件を満たすマシンを組み合わせるとエンタープライズレベルのストレージデバイスが調達できてしまい、実に5000ドル以上の経費節約が可能となるのだ。

 Openfilerは、Xinit Systemsにより2003年に開発された、CentOSおよびrPathベースのネットワークOSであり、通常のx86-64システムをNASないしSANとして使用可能にさせ、その際には最大60Tバイトまでをサポートできる設計になっている。OpenfilerではWebベースの管理システムが採用されており、NFS(Network File System)3、SMB/CIFS(Server Message Block/Common Internet File System)、WebDAV(Web-based Distributed Authoring and Versioning)、HTTP/1.1、FTP(File Transfer Protocol)、iSCSIなどのプロトコルを用いたストレージシステムの構築と管理が簡単に行える。またRAID(Redundant Array of Inexpensive Disks)を用いたストレージに関しては、0、1、5、6、10レベルでの構成が可能だ。またOpenfilerでは、LDAP(Lightweight Directory Access Protocol)、Active Directory、NIS(Network Information Service)、Hesiodなどの認証機構との統合も可能で、セキュアなストレージアクセスを確保できる。

 通常のエンタープライズストレージと同様、Openfilerにもリカバリ用のスナップショット機能が装備されている。その上Openfilerでは無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)との統合もサポートされており、これは現状のプロプライエタリ系ストレージですら一般には備えていない特長の1つとなっている。このようにOpenfilerは、プロプライエタリ系製品に見劣りしない機能、パフォーマンス、可用性を有しているだけでなく、同等の機能一式をより低コストで提供できるのだ。

 Openfilerを使用するシステムの最小要件は、1GHzのプロセッサ、512MバイトのRAM、1Gバイトのディスク容量(OS用)、イーサネットカードの装備というものだが、良好なパフォーマンスを得るには、1.6GHz以上のプロセッサ、1GバイトのRAM、2GバイトのOSディスク容量、ギガビットイーサネットカード、RAIDコントローラーの装備が推奨される。そして当然ながら、ストレージに使用するディスク群も用意しておかなくてはならない。わたしの推薦する最低限の構成は、ストレージシステム上にハードウェアまたはソフトウェア方式のRAID 5を構築するシステムであり、この場合HDDは最低3個が必要となる。最近のHDD価格は1TバイトのSATA(Serial Advanced Technology Attachment)ドライブでも200ドルを切っているので、3ディスク構成のRAID 5という選択肢はそれほどの負担にはならないだろう。RAID 5をサポートした4ポートSATA RAIDコントローラーについても、高望みをしなければ100ドル程度の出費で抑えられるはずだ。なおFibre Channelホストバスアダプタ(HBA:Host Bus Adapter)を使用する場合は、事前にハードウェア互換性のリストを確認しておく必要がある。

 Openfilerの入手は、開発元のサイトからISOイメージをダウンロードできるが、そのほかにもVMwareアプライアンスが用意されている。ベアメタルおよび仮想化インストレーションに関する要件の詳細については、Openfilerのシステム要件ページを参照してほしい。

インストール

Openfilerのログイン画面 Openfilerのログイン画面

 Openfilerのインストール手順はシンプルであり、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)やCentOSのインストールと大差ない。ただしHDDのパーティーションについては、その設定段階で、手作業にて必要な指定をすることになるだろう。HDDパーティーションの設定をインストーラ任せにしておくと、複数ディスクで構成された環境ではファイルシステムが分散化させられるのだが、ディスクの1つをOpenfilerの格納先として、残りのローカルディスクをすべてストレージにするという構成の場合、そうしたパーティーション設定は手作業で行うしかないのだ。そのほかに必要なのは、rootパスワードやタイムゾーンなどの情報指定である。なおOpenfilerのインストール完了後はWebベースの管理システムを使用するので、IPアドレスについては動的な割り当てでなくインストール時に静的な指定をしておく方が便利だろう。

 これら必要な情報の指定が終わるとOpenfilerのインストール作業は最後まで自動で進行し、その間にユーザーによる設定やパッケージ選択が求められることはない。本稿の執筆用にわたしが用意した試験システムは、Athlon X2 4400デュアルコア、2Gバイトのメモリ、250GバイトのSATAディスク3個という構成である。そしてOpenfiler本体は、6Gバイトの仮想HDDを3個装備したVMware Workstationの仮想マシン上で実行させている。もっともこの構成ではハードウェアRAIDを使用できないので、今回は2個の仮想ディスクを用いてソフトウェアRAID 1をセットアップしておいた。

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