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» 2008年09月19日 09時09分 UPDATE

戦略プロフェッショナルの心得(2):新製品普及の壁「キャズム」――売れない理由を科学する (1/2)

新製品や新サービス普及のためには、ユーザーを「誰もやってないから、最初にやってみよう」という層から、「周りでも流行っているし、実際に役立ちそうだからやってみる」という層まで拡大し、製品を確実に市場に定着させることが必要です。

[永井孝尚,ITmedia]

 戦略の策定と実践は、成功するCRMの原点です。本連載では、ビジネスの現場で戦略を策定し、実施する場合に必要な考え方をご紹介しています。(本連載は「戦略プロフェッショナルの心得――ビジネスの現場で、理論だけの戦略が実行できない理由」からの抜粋です)

 第1回は「差別化」に潜む落とし穴についてお話しました。2回目は、新製品を普及させるために必要なテクノロジーライフサイクルとキャズムという考え方のご紹介です。

 1990年代後半、わたしがマーケティングマネジャーとして担当した製品は、それまでに市場に存在しなかった全く新しい技術を活用したものでした。ある顧客が自社サービスを他社から差別化するために、この製品を初めて採用してくださいました。全く新しい技術だったので、この技術を顧客のサービスに実装するに当たっては、顧客も私たちも大変な努力を要しました。

 一方で、さまざまなプロモーション活動を行ったにもかかわらず、この製品の売り上げはなかなか伸びませんでした。技術が目新しかったこともあって、顧客に対するデモや説明の機会はたくさんいただきました。しかし、その後、その製品を活用して差別化を図ろうと試験導入した顧客は2、3社程度。その数はなかなか増えませんでした。

 普及に弾みがついたのは、初採用した顧客が新技術を活用した業務を実際に開始され、大きな売り上げ増につながった、という成果が示されてからでした。この時点から「このような実績があるのであれば、ぜひわが社でも採用を検討したい」という同じ業界の顧客が増えてきました。そしてそれはほかの業界にも広がっていったのでした。

 これは、新製品が世の中に普及する際の典型的なパターンです。

 新製品やサービスの展開を図る際、製品が普及するどの段階で採用するかによって、顧客の特性は大きく異なります。

 今まで存在しなかった新製品や新サービス普及のためには、ユーザーを「誰もやってないから、最初にやってみよう」という層から、「周りでも流行っているし、実際に役立ちそうだから、やってみようか?」という層まで拡大し、製品を確実に市場に定着させることが必要です。

 これらのユーザー層は、新しい製品を購入する順番に従って、次のように名前が付けられています。

  • 革新的採用者(イノベータ)

 「技術的な革新性を最重視して購入する」人たち

  • 初期採用者(アーリーアダプター)

 「ユーザーが少なくても、実際に良さそうだったら、購入する」人たち

  • 初期多数採用者(アーリーマジョリティ)

 「新製品や新サービスの良さが証明されたら購入する」人たち

  • 後期多数採用者(レイトマジョリティ)

 「ほとんどの人がサービスを受けて、受けないと不便するような段階になったら購入する」人たち

  • 無関心層(ラガード)

 「永遠に買わない」人たち

 ここで、注意すべき点があります。「初期採用者」と「初期多数採用者」の行動が全く異なる点です。初期採用者は「まだ誰も使っていなくても、必要と判断したら買う」という行動を、初期多数採用者は「既に事例があり、効果が証明されていれば買う」という行動を取ります。

 最初に紹介した例では、同業他社と差別化するために新技術を初採用した顧客は初期採用者です。一方で、成功事例が出た段階で「実績があるのであればぜひわが社でも」と採用を検討した顧客は、初期多数採用者です。

 いずれも比較的早い時期に新製品や新サービスを購入するので、一見同じに見えますが、実は「初期採用者」と「初期多数採用者」の判断基準は正反対であるということが分かります。

 鳴り物入りで市場に登場した新製品が普及しない場合、多くは次のパターンに陥っています。

  • 一部の革新的採用者が真っ先に採用する
  • 多くの初期採用者がビジネス上のメリットを評価して続いて購入する
  • 初期採用者のほとんどに行き渡る
  • しかし、次に購入してほしい初期多数採用者は、リスクを感じたりメリットを納得できず、購入しようとしない
  • 市場全体の中で初期採用者は少数派なので、初期採用者がひととおり購入し終えた途端に、売り上げの伸びに勢いがなくなる
  • 市場への普及もぱたりと止まる。そして売り上げが減り始める
  • やむなく市場から撤退する
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