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» 2008年10月07日 00時00分 公開

計る測る量るスペック調査隊:無線LANの実パフォーマンスを測定せよ【前編】 (1/2)

無線LANの伝送速度は、IEEE802.11b規格で最大11Mbps、802.11aやgでは最大54Mbpsといわれている。しかし、実際に無線LANを使用すると分かるように規格どおりの速度が出るわけではない。これはなぜなのだろうか。今回から3回に分けて無線LANのパフォーマンスの実際について探ってみよう。

[東陽テクニカ,ITmedia]

無線LANと有線LANの違いはどこに?

 伝送速度100Mbpsの100BASE-TXを使用して通信する場合、条件が悪くなければ90Mbps以上のスループットを得られる。一方、54Mbpsの伝送速度を持つとされるIEEE802.11aやIEEE802.11gを使った無線LAN環境で同様のテストをした場合、どんなに頑張ってもせいぜい20Mbps程度の値しか得られないはずである。

 このように、無線LANでは有線LANと比べ、うたわれている伝送速度と実際に得られるスループットとの差が非常に大きい。これには、有線LANと無線LANの規格の違いが大きくかかわっている。

無線LAN規格の概要

 現在、IEEEによって策定された無線LANの主要な規格としてはIEEE802.11a、IEEE802.11b、IEEE802.11gの3つが存在する*。このほか、2009年の策定を目指すIEEE 802.11nも存在しており、ドラフト版2.0に対応する製品も存在するが、ここでは割愛する。現在市場に出回っている製品のほとんどは少なくともこれら3つのいずれか1つ以上に対応している。まず、これらの規格について簡単に解説しよう。

  • IEEE802.11b

 IEEE802.11bは、無線LANとして最初に普及した規格である。無線LANの規格自体は1997年に制定されたIEEE802.11が最初だが、10年以上前に制定されたイーサネット規格であるIEEE802.3と比較してけた違いに遅く*、そのため特定の用途以外には普及しなかった。一方、1999年に制定されたIEEE802.11bでは伝送速度が11Mbpsと、イーサネットと比較して見劣りしなくなったこともあり、爆発的に普及した。IEEE802.11bは周波数帯としては2.4GHz帯、変調方式*はCCKと呼ばれるものが使用される。

  • IEEE802.11a

 IEEE802.11aはIEEE802.11bと同じ日に承認された、5GHz帯の電波を使用する規格である。54Mbpsという伝送速度を持ち、伝送速度の面で有利であったものの、実際に製品が市場に出回るのが遅かったこともあり普及は遅れた。変調方式はIEEE802.11bと異なり、OFDMという方式が使われている。

  • IEEE802.11g

 IEEE802.11gは2003年6月に承認された規格である。広く普及していたIEEE802.11bと互換性を持ちながら、IEEE802.11aと同様の54Mbpsという伝送速度を持っていたため当初から非常に関心を集め、規格が承認される前に製品をリリースするメーカーが少なからず存在した。使用する周波数帯は2.4GHz帯、変調方式はOFDMである。

無線LANとイーサネットの違い

 無線LANは「ワイヤレスイーサネット」と呼ばれたこともあったものの、無線LANとイーサネットの間には「伝送媒体」「メディアアクセス制御」「伝送レート」といった点で大きな違いがある。そして、無線LANとイーサネットでパフォーマンスが異なる原因もここにあるのである。そこで、この違いを実験を交えながら解説していこう。

伝送媒体の違い

 イーサネットでは伝送媒体として、品質が保証されたツイストペアケーブル(UTPケーブル)や光ファイバを利用する。例えば、100BASE-TXで通信する場合であれば、カテゴリ5*以上の品質のケーブルを使用する必要がある。このように伝送媒体の品質を保証することで、ケーブルの不具合によってフレームが破壊される可能性を無視でき、その結果送信したフレームは受信されたものと見なすことができる。

 それに対し、無線LANではほとんどの場合、伝送媒体の保証ができない。従って、送信したフレームが実際に受信されたかどうかは分からない。このため、無線LANでは原則としてフレームを受信したノードは送信者にACKフレーム*を返して受信したことを伝えなければならない(図1)。送信したフレームが正しく受信されなかった場合、ACKフレームは返らず、その場合送信者はフレームを再送しなければならない。また、ACKフレームそのものが壊れるなど、ACKフレームがデータフレームの送信者に受信されない場合にも再送は行われる。

ACKフレームを利用した通信の確認 図1 ACKフレームを利用した通信の確認

 このような仕組みのため、無線LANではイーサネットと比べると通信時に次のようなオーバーヘッドが発生する。

  • データフレームだけではなくACKフレームが必要
  • ACKフレームが返らなかった場合に再送が必要

 これらのオーバーヘッドのうち、フレームが再送される割合は環境によって左右される。具体的にはノイズが少なく、アクセスポイントからクライアントPCまでの距離が近いような環境ではある程度確実にフレームの送受信が行われるため、再送は少ないことが期待される。一方、ノイズが多く、距離が離れているような環境では再送の割合が増えると考えられる。

 では、再送は実際にはどの程度の頻度で発生するのだろうか? 測定してみよう。

このページで出てきた専門用語

IEEE802.11a、IEEE802.11b、IEEE802.11gの3つがある

無線LANに限らず、LANの規格はIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers。米国電気電子技術者協会)の802委員会で標準が策定されており、無線LANは802委員会配下のワーキンググループ11が標準の策定に当たっている。さらに、ワーキンググループの下にはアルファベットを冠するタスクグループがあり、IEEE802.11a/b/gなどはそのタスクグループによる標準である。これらタスクグループにはさらなる高速化のほか、QoS、セキュリティなどの仕様を策定しているものがある。

けた違いに遅く

イーサネットは1985年にIEEE802.3として制定されるが、実際には1982年にDEC、Intel、Xeroxによる独自仕様の「バージョン2イーサネット」として完成されており、この時点ですでにその伝送速度は10Mbpsであった。一方、IEEE802.11では伝送速度が1Mbpsあるいは2Mbpsであった。

変調方式

無線通信では一定周波数の電波(搬送波、あるいはキャリアと呼ぶ)を生成し、これを変化させることで情報を伝達する。変調方式とは情報を乗せるためにキャリアを変化をさせる方式のことである。変調方式の違いにより、単位時間内に送信できる情報量やノイズへの耐性が変わってくる。

カテゴリ5

UTPケーブルの性能を示す規格の1つで、100MHzまでの帯域を使って通信できる。米国通信工業会(TIA)と米国電子工業会(EIA)によって、TIA/EIA-568-Aという名称で規格化されている。

ACKフレーム

無線LANではノード間でデータをやり取りをするデータフレーム以外に、無線LANへの参加/離脱を管理する管理フレームと、データフレームの送受信を補助する制御フレームがある。ここで紹介しているACKフレームは制御フレームの1種である。また、フレームがブロードキャスト/マルチキャストされる場合ではACKは必要とされない。


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