コラム
» 2008年10月22日 14時48分 公開

IT Oasis:社長が欲しがる「魔法の鏡」 (1/2)

社長という立場は多くの不安と戦わなければならない。常にそうした戦いに打ち勝つことができる、能力のある社長でも情報なしに正しい意思決定はできない。

[齋藤順一,ITmedia]

社長の不安「オレは会社が分からない」

 白雪姫の継母である王妃が持っていた魔法の鏡というのをご存じだろうか。魔法の鏡に、「この世で一番美しいのは誰?」と問うと、鏡が「それは王妃様、貴女でございます」と答えるので、王妃は満足な日々を送っていた。ところが白雪姫が7歳になったときに、同じ質問に魔法の鏡が「白雪姫様です」と答えたところから、事件が始まるわけである。

 中小企業の社長の中には自分の会社が分からないという人が多い。こうした社長は魔法の鏡があればいいのにと思うことだろう。

 実際、客先から「うちの製品はいつ納入されるのか」という問い合わせを受けた社長が、現場を飛びまわり、仕掛り途中の製品を確認して納期回答するといった光景はよく見られるのである。

 ある会社で、従業員からSWOT形式で会社に対する意見を聞くということをして結果を社長に見せたところ、うちの従業員がこんな事を考えているというのが初めて分かりましたと言って、非常に感謝されたので驚いたことがある。

 従業員とは採用のときから何年にもわたって仕事を一緒にしているのに、本音のところはなかなか分からないのである。

 社長が会社の末端や現場に近い部分についてあまり分からないというのは、ある意味当然で、組織としての会社で分業が正常に行われていることを示している。

 会社のトップは間接業務で、社長は経営のことを考えればいいのである。しかし、現場の情報や課業の状態を知らなくては正しい経営はできない。社長が聞く耳を持たなかったり、部下が都合の悪い話を報告しなかったりしたために、経営判断を誤り手遅れになってしまった会社の話は、よくマスコミに取り上げられる。ワンマン社長とか老害とか、経営の素人とか揶揄されることも多いが、いかに能力のある人でも情報なしに正しい意思決定はできない。

 経営トップへの情報伝達は組織の問題とされ、中間管理職を置いて情報統制にあたらせるわけであるが、伝達に遅れが出たり、バイアスがかかったりして情報が歪んでしまうことが多々ある。

 そこでITの活用である。

 大昔のコンピュータは計算機と呼ばれ計算の道具であった。次に大容量の補助記憶装置が生まれデータを扱えるようになりデータベースが発達した。さらに最近はネットワークで結ばれ、種々の入出力インタフェースが提案されたことから知識に役立つ情報を伝えられるようになりITとなったわけである。

 この進化したコンピュータ利用形態であるITを、社長が会社を知るための道具や経営に資するツールとして活用しようというのが戦略的IT投資である。

 しかし、ここにも問題がある。

社長のつぶやき「オレはITが分からない」

 ITの中核をなすコンピュータの世界は日進月歩どころか秒進分歩と言われる。一昔前に、この業界で「ドッグイヤー(Dog Year)」という言葉が流行ったことがある。犬は人間の7倍の速度で成長する。コンピュータの世界も人間世界に比べて、7倍のスピードで進化するというのが趣旨で、元SUNのCEOだったスコット・マクネリーの言葉である。外部世界で進展するITの激しい変化に、ほとんどの社長は付いて行けない。

 そこで、社内の情シスやPCヘルプデスクを担当する部署や担当者に、戦略的IT活用の意思決定を移譲してしまうのである。社内プロセスの一部である課業部門は日常業務を遂行する部署であり、経営戦略の一環であるIT戦略を構築することは困難である。

 このため、最近は社内CIOを置いたり、外部専門家としてCIOを招請したりする試みが行われるようになってきたのである。大企業においてもCIOを置いている会社は多くはないが、組織における情報の重要性に照らしてみれば、今後もCIOを置く企業は増えていくであろう。経産省・中小企業庁も今年度の重点施策として、「中小企業のCIO人材の育成支援事業」をスタートさせている。

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