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» 2008年11月14日 19時52分 UPDATE

IBM Service Management Conference Report:グリーンITもCS向上も――核となるのはサービスマネジメント

「サービス」の定義は難しい。事業部門が顧客に提供するものはサービスだし、その事業部門に対し管理部門が提供するものもサービスといえる。自明なのはサービスの合理的なマネジメントが企業成長につながるということだ。それにはサービス対象の「事前期待」を把握することが必要だという。

[石森将文,ITmedia]

 企業収益の礎となる事業を「サービス」と捉え、そのマネジメント手法を最適化することでビジネス躍進の機会とする――このような目的のもと11月14日、「IBM サービスマネジメント・コンファレンス」が東京・渋谷で開催された。

諏訪良武氏 ワクコンサルティング 常務執行役員、国際大学グローバルコミュニケーションセンター 上席客員研究員 諏訪良武氏

 来場者に対し特別講演を行ったのは諏訪良武氏(ワクコンサルティング 常務執行役員、国際大学グローバルコミュニケーションセンター 上席客員研究員)。オムロンフィールドエンジニアリング在籍当時の業務改革経験を通じ、サービスそのものや顧客満足(CS)を科学的に“見える化”する「サービスサイエンス」を紐解いてみせた。

 諏訪氏は「産業全体におけるサービスの比重が高まっている」と切り出す。コモディティ化したハードウェア製品では製品による差別化が困難であり、アフターサービスに代表される、継続的な収益につながる事業へのシフトが進むからだ。IT市場においても、パッケージソフトウェアからSaaSへ移行するなどの動きが見られる。

 しかし同時に「サービスで顧客満足を得るのは極めて難しい」(諏訪氏)という。ハードウェア製品などであれば、顧客はスペックや価格を詳細に比較検討したうえで購入し、それが満足につながるが、例えば「美容院」のようなサービス業では、本人が満足したとしても友人に髪型をけなされるなどした場合、一気に不満足へ転落してしまう。

 このことは「材料=顧客の課題」であり、仕入れ時にその材料を選別できない(美容院であれば、ヘアカットに来店する顧客は断れない)という、サービス業の宿命ともいえる構造に起因するという。「それなのにサービス事業者の多くは、材料を仕入れ時に選別でき、かつ自社のやり方で工場生産できる製造業と同じ方法で、ビジネスをドライブしている。ここに間違いがある」(諏訪氏)

CS向上に不可欠なのは顧客の事前期待を把握すること

 では、サービス事業者がそのCS安定化に向けてすべきことは何か。諏訪氏は「サービスの評価を、成果品質とプロセス品質に分解して指標化すること」だと話す。

 サービスは、一般的なモノ製品とは異なり、その提供プロセスもCSの評価対象となる。「店頭で顧客がサービスに対し満足、あるいは不満足するポイントとしては、成果物に対する評価よりも、店員対応の良し悪しが、高い比重を占める」(諏訪氏)

 諏訪氏は成果品質とプロセス品質を、さらに次の要素に細分化してみせる。それは「正確性/迅速性/柔軟性/共感性/安心感/好印象」である。サービス事業者は、この要素に基づき、自社のサービスに何が必要なのかを判断できる。例えば高級レストランであれば、料理の「味」はもちろんのこと、顧客の好みの味付けを把握していたり、個々のメニューに対し親切に説明してあげたりすることが評価につながる。つまり柔軟性、共感性、好印象という要素が求められる。対して大衆食堂であれば、個々の顧客に最適化されたサービスを提供するよりも、正確性や迅速性、そして一部安心感が必要になるだろう。

hyouka.jpgbunkai.jpg サービスの評価を2つの品質に分解し(写真=左)、さらにその品質の構成要素にまで細分化する(写真=右)

 ここで諏訪氏は、次のようにサービスを定義する。それは「人や構造物が発揮する機能で、ユーザーの事前期待に適合するものがサービス」というものである。顧客の事前期待を洗い出し、それを満たす成果品質ないしプロセス品質の構成要素を提供することで、CSの向上が図れる。逆に、事前期待に適合しない要素を提供しても、評価されないばかりか迷惑行為につながることもある(大衆食堂で、メニューについてクドクド説明したとしても、本人だけでなく周囲の客も不快だろう)。

 「CSの向上には顧客の事前期待を知ることが重要。まずこれを理解して欲しい」と諏訪氏は話す。コンペティターのサービスレベルを把握しつつ、事前期待に適合するサービスを提供すれば、顧客満足の向上に加え“顧客不満足”の発生を抑制できる。その相乗効果で、さらなるCS改善が期待できるという。

 効果的な「事前期待マネジメント」の例として、諏訪氏は東京ディズニーランドのアトラクション待ち行列を挙げる。行列している時に(ゆとりを持った時間設定で)待ち時間の立て札を表示し、少しずつ前進させることで、入場者の事前期待をマネジメントし、イライラを抑制しているという。「たとえ入場時間の90%を行列待ちに費やしたとしても、顧客は東京ディズニーランドに満足し“また来よう”と思いつつ帰宅の途につくだろう。何をかくそう、わたしと家族もそうだった」(諏訪氏)

真のグリーンデータセンターが成立するには?

アル・ゾラ氏 IBMソフトウェアグループ Tivoliゼネラルマネジャー アル・ゾラ氏

 ここでスピーカーの交代となり、IBMソフトウェアグループ Tivoliゼネラルマネジャーのアル・ゾラ氏が登壇。同社の統合運用管理ソフトウェア「Tivoli」および米MROソフトウェアの買収によりポートフォリオに加わった資産管理ソリューション「Maximo」による、同社のサービスマネジメントビジョンについて語った。

 「2010年には、世界に10億個もの半導体が存在し、RFIDの生産量にいたっては300億個にも達するだろう。これらをすべて、管理しなければならない」とゾラ氏は警鐘を鳴らす。グリーンITというキーワードがもてはやされているが、真のエネルギー最適化を図るには、これらIT製品に加え企業内に存在するすべての資産(アセット)を把握(見える化)する必要があるとゾラ氏は説く。

 ここでゾラ氏は、ある統計を紹介する。それは「データセンター全体に占める消費電力のうち、IT機器によるものは30%ほどに過ぎず、残りはすべて一般ファシリティによるものだ」というものである。データセンター内におけるIT機器と一般ファシリティの相互依存関係が強まっているこの状況下では、個別に資産管理をしたりサービスデスクを設けたりするのではなく、そのすべてが統合管理されなければならないと、ゾラ氏は述べる。

データセンター全体の消費電力のうち、IT機器由来のものは30%程度に過ぎないという データセンター全体の消費電力のうち、IT機器由来のものは30%程度に過ぎないという

 「データセンターを構成する様々なエンティティ(施設要素)を統合管理できるのは、Tivoli、そしてMaximoで提供されるソリューションだ」とゾラ氏。例えばすべての資産を対象に消費電力やCO2負荷といった指標でしきい値を設け、それらの発生状況を視覚化したり、必要に応じてプロビジョニングしたりするといった「真のグリーンデータセンター」に必要な施策を打てると、自信を見せた。

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