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» 2008年11月28日 02時00分 UPDATE

計る測る量るスペック調査隊:無線LANの電波の伝搬を測れ (1/3)

電波は目に見えない。そのため、無線LANのアクセスポイントから実際にどのように電波が伝搬しているのか、またどのくらいの距離まで通信ができるのか、直感的に把握しづらい。そこで、今回はプロのツールを用い、無線LANで使用される電波の伝搬をスペック調査隊が調査する。

[東陽テクニカ,ITmedia]

実環境における無線LAN

 無線LAN利用の最も大きなメリットは移動性(モビリティ)であることは間違いないだろう。十分なバッテリーパックを持つノートPCや携帯電話型の無線IP電話などは、アクセスポイント(AP)と通信できる範囲であれば配線の束縛から完全に自由であり、好きなところでこれらの装置を使用できる。

 この「好きなところ」というのが、例えばAPから比較的近く、見通しがよいオフィスの机の上なら問題は少ない。しかし、状況としては書庫の間で本を探しながらということもあるかもしれない。また、小売業などで在庫の管理をするために、陳列棚の間で作業をする場合も想定される。「好きなところ」に「APと通信できる範囲であれば」というただし書きをつけたが、実際に無線LANを使用する環境ではAPから離れることや、障害物の影響などで通信に支障を引き起こす可能性がある。

 前回までは実験的な環境で無線LANの距離や干渉に対するさまざまな実験を行ってきた*が、実際の環境では建物の中に存在する障害物や構造物の存在も問題になってくる。そこで、今回は設置したAPから送信された無線LANフレーム*が伝搬する様子や、環境がアプリケーションの実パフォーマンスに及ぼす影響について測定を行ってみよう。

サイトサーベイとツール

 一般に無線LANを導入する場合、無線LANの使用を想定しているエリアで確実にサービスが提供できるように注意深く設計を行う。しかし、無線の伝搬は非常に複雑で、予測できなかったことがたびたび起こり得る。そのため、設計したとおりに無線LANがサービスを提供できるものかどうか、実地調査(サイトサーベイ)が必要となる。

 広義には無線LANのプランニングから調査までを含めてサイトサーベイという言葉が使用されるが、ここでは無線LANを構築予定の現場に実際にAPを設置し、信号品質などの測定を行うという意味でとらえる。この測定を行うツールには専用のものや、カードベンダーがユーティリティなどと一緒に提供するものがある。その中から今回は、専用のサイトサーベイツールであるAirMagnet Survey Proを使用して、設置したAPから無線LANフレームが伝搬する様子を測定し視覚化してみよう。

今回の測定装置

  • AirMagnet Survey Pro(旧名称:AirMagnet Surveyor Pro)

IEEE802.11a/b/gに対応した、無線LAN専用のサイトサーベイツール。無線LANアクセスポイントからの電波情報をフロア図上にマッピングする機能など、さまざまなデータ解析機能や分析支援機能、リポート作成機能などを搭載している。


サイトサーベイユーティリティを使う

 AirMagnet Surveyは米AirMagnetが開発した無線LANサイトサーベイ専門ツールである。AirMagnet Survey用無線LANカードを搭載したノートPC1台で、IEEE802.11a/b/g環境のサイトサーベイを実行可能だ。サーベイデータはすべてノートPCへ蓄積され、ボタン1つで自動的に結果が表示されるので、ユーザーが結果の記入作業や作図を行う必要はない。また、上位機種であるPro版ではリポート文章の自動作成も可能で、サーベイの実施からリポートまで、無線LANの導入に必要な作業を行うことができる。

 測定は、AirMagnet Survey ProがインストールされたノートPCを持ち歩き、PC画面の地図上における現在の測定位置をクリックするだけだ。これでその位置における電波状況などのデータが記録される。結果は自動的にグラフィック化され、APからの信号強度がグラデーションで表示されるので、サーベイ環境における電波の広がり具合を視覚的にとらえることができる。さらに、結果をSSID*やチャンネルごとに分類したり、表示するAPを限定するなど、さまざまな角度から分析するための表示切り替え機能も搭載しているため、目的に応じた分析が行える。

パッシブサーベイとアクティブサーベイ

 サイトサーベイ実施には、パッシブサーベイとアクティブサーベイという2つの測定方法がある。パッシブサーベイとは、単純に周囲の信号の受信のみを行い、検出される複数のAPの情報を記録する方法である。この「複数」という部分が重要なポイントであり、パッシブサーベイでは自社内のAPはもちろん、近隣のビルなどから漏れ届いた管理外のAPも発見できる。これを利用し、自社のAPを設置する前に近隣で使用されているチャンネル番号を把握することで無線LANの干渉を事前に避けるよう設定できる。また、後述するアクティブサーベイが行えない環境の場合にも使用される。

 一方、アクティブサーベイとはAirMagnet Survey自身からAPにテストフレームを送信し、それに対するACKフレーム*を測定する。そのため、アクティブサーベイでは信号強度や雑音レベルの情報だけでなく、パッシブサーベイでは収集できないフレームの再試行やロス率、フレームスピードなど、無線LAN通信を実運用した場合の情報を収集できる。これはAPとクライアントの適切な配置位置を探し出すのに有効である。

このページで出てきた専門用語

実験的な環境で無線LANの距離や干渉に対するさまざまな実験を行ってきた

無線LANの実パフォーマンスを測れ」では無線LANの実スループットを、「無線LANの干渉を測れ!」ではさまざまな干渉によるパフォーマンス低下について測定を行った。

フレーム

送信するデータを分割し、通信に必要なさまざまな情報をつけ加えたもの。無線LANやイーサネットではこのフレームを1単位として通信が行われる。

SSID

無線LANアクセスポイントを識別するためのID。

ACKフレーム

無線LANではノードがやり取りをするデータフレーム以外に、無線LANへの参加/離脱をつかさどる管理フレームとデータフレームの送受信を補助する制御フレームの2種類がある。ここで紹介しているACKフレームは制御フレームの一種である。また、フレームのあて先がブロードキャスト/マルチキャストの場合にはACKフレームは必要とされない。


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