インタビュー
» 2008年12月02日 08時00分 UPDATE

Focus on People:Mozilla Labの至宝が語る未来のFirefox (1/2)

Mozilla LabでユーザーエクスペリエンスのリードとしてUbiquityを初めとするさまざまなプロジェクトを担当するエイザ・ラスキン。ユーザーインタフェース研究の第一人者として知られる彼が未来のFirefoxについてjune29に語った。

[june29,ITmedia]

 こんにちは、june29です。Mozilla LabsからUbiquityがリリースされて約3カ月が過ぎました。この間、Ubiquityを活用するさまざまな試みがなされ、筆者も紹介記事を書かせていただきました。

 今回、Ubiquityの生みの親であるMozilla Labsのエイザ・ラスキン(Aza Raskin)さんが来日されているということで、お話を伺ってきました。Mozilla LabsでユーザーエクスペリエンスのリードとしてUbiquityを初めとするさまざまなプロジェクトを担当する彼は、何と1984年生まれ。筆者と同世代です。そんな彼がUbiquityの今後の展開から、ブラウザの未来の話まで、たっぷりと聞かせてくれました。

ユーザーに対しては、インタフェースこそが製品そのもの

Aza Raskin 若くしてユーザーインタフェース研究の第一人者として知られるエイザ・ラスキン氏。ちなみにアップルコンピュータ(現アップル)のマッキントッシュの開発に携わったことで知られるヒューマン・コンピュータ・インタフェース・エキスパートのジェフ・ラスキン氏の息子でもある

june29 はじめまして。どうぞよろしくお願いします。

ラスキン よろしくお願いします。

june29 さっそくですが、ユーザー・インタフェース・デザイナーであるラスキンさんの考える、最高のユーザー体験とはどのようなものなのでしょうか。

ラスキン ユーザーに対しては、インタフェースこそが製品そのものです。製品というのは何らかのタスクをこなすために使われます。例えば、ハンマーは釘を打つためにあるけれど、釘が打てさえすれば、必ずしもハンマーは必要じゃない。最高のユーザー体験があるとすれば、釘を打とうと思ったときに、釘が打ち終わっていることでしょう。

june29 なるほど。Ubiquityでは、その釘を打つような行為をコマンドという形で実現していますよね。しかし、いまの考えが基底にあるのなら、コマンドラインのインタフェースにこだわっているわけではなくて、例えばマイクに向かって音声で命令を入力するようなインタフェースもあり得るということでしょうか。

ラスキン はい。実は、Ubiquity以前に作ったWindows用のランチャー「Enso」では、音声入力による操作を試していて、Photoshopのようなアプリケーションではそこそこ使い勝手が向上することを確認しています。右手でマウス、左手でキーボード、そこに、声を加えて操作する感じです。音声のインタフェースはいいのですが、大事なのは入力に使うことで、結果を音声で出力するのはよくありません。日本人の皆さんはボイスメールを使いますか。

june29 あまり使いませんね。

ラスキン それはうらやましい! 文章が音声で届いたら、最初から最後まで聞かなきゃいけませんよね。テキストであれば不要な部分を読み飛ばして、必要な情報だけ読めばいいので、無駄を省けます。

Mozilla LabsでUbiquityを作る意味

june29 「エンジン音だけ聞いて、ブルドーザーだと認識できるよう」とラスキン氏の力を評するjune29(写真はImagine Cup 2007のときのもの)

june29 Ubiquityは、言ってしまえばFirefoxにとって数ある拡張機能のうちの1つですよね。これをMozilla Labsから発信する意味とはどこにあるのでしょうか。

ラスキン Mozilla Labsの役割として、次のFirefoxの姿を考える仕事があります。Ubiquityを通して、ユーザーがどんな機能を求め、どんな行動を取るのかをデータとして蓄積し、必要なものは未来のFirefoxに盛り込まれていきます。

june29 ほかの拡張機能や、Greasemonkeyのスクリプトなどを見ていても、確かに「これは標準機能にしてもよいのではないか」と思えるものもあります。そういったフィードバックを受け取るところまで含めて、Mozilla Labsが担うのですね。ユーザーが作成したUbiquityコマンドを簡単に公開・共有できるようになっているのも、そういった背景があってのことでしょうか。

ラスキン Exactly(その通りでございます)。

june29 Ubiquityは、近い将来FirefoxやFennec(モバイル版Firefox)のロケーションバーに統合される予定と聞きましたが、どれくらい現実的な話なのでしょうか。

ラスキン ユーザーにとっては、機能の入り口は少ない方がいいですよね。ロケーションバーがあって、検索バーがあって、それとは別にUbiquityの入力ウインドウがあっては、ユーザーはどこに何を入力するべきかを意識して使わなければいけません。現状のUbiquityでわたしが気に入らないと思っているのは、呼び出さなければ現れないという点です。ですので、できればAwesome bar(ロケーションバーの別の呼び方)に統合していきたいと考えていますが、簡単にはいきません。

june29 それは何故でしょうか。

ラスキン Firefoxは世界中で使われているソフトウェアなので、多言語対応には特に気を遣っています。Ubiquityの機能をFirefoxの標準機能に組み込もうと思ったら、クリアしなければならない問題は幾つかあるでしょう。

june29 Ubiquityのリリース当初、日本語環境でも、変換確定のEnterキーが拾われてコマンドが実行されてしまう問題がありました。今のような言語ベースのインタフェースだと、多言語環境への対応は頭の痛い問題ですね。

ラスキン さっきも言ったように、コマンドラインのインタフェースにこだわっているわけではないので、少しずつ良い方向に進めていければと考えています。音声入力を利用したり、マウスジェスチャと組み合わせる方法もあると思います。最終的にはやはり、使っていることを意識せずに済むインタフェースが理想です。

june29 その理想を実現するために、どういったアプローチが有効だと考えますか。

ラスキン データは常にアルゴリズムよりも正しいです。ユーザーの普段の行動の中に、ユーザーが真に求めているものを知るヒントがあるはずです。Wisdom of Crowds(群衆の叡智)と呼ばれるものでしょうか。過去のデータの蓄積から、未来のユーザーの行動に対して先回りして機能を提供できるといいですね。

june29 面白い! アルゴリズムよりデータ、というのは、Google翻訳のアプローチと同じですね。個人的には強く共感します。安直なアイデアですが、Geodeと連携し、現在位置に合わせて機能が変化するのも面白そうです。

ラスキン すでに、Ubiquityの「map」コマンドにも現在位置を表示する機能があります。これはGeode以前に作ったものなので、IPアドレスベースで現在位置を割り出していますけど。

june29 位置情報以外で、ユーザー体験の向上に利用できそうなデータはありますか。

ラスキン ブラウザに残された履歴、ブックマーク、そしてAwesome barに入力されたすべての情報です。これらすべてのデータを活用し、ユーザーに最適な体験を届けたいです。また、仲の良い友達のブラウジング体験をインポートするのも面白いと考えています。

june29 ソーシャル方面への発展の可能性も模索されているんですね。

ラスキン 地球の裏側の誰かよりも、身近な友人の行動の方が、自分にとって面白い場合が多いですよね。そこは活用できると面白いと思いませんか。

june29 以前に、Greasemonkeyのスクリプトを友人と完全に同期させる、というのを考えたことがありました。わたしが何かの機能をインストールしたら、友人のFirefoxでも勝手にその機能が動き出すってことです。でもこれは、何も工夫せずにやると、何が起きているか分からなくてユーザーが混乱してしまいます。ただただ人々の行動を足し算していくだけでは、群衆の叡智ではなく衆愚に陥ってしまうことにもなりかねません。

ラスキン 面白い試みですね。Weaveでは、そういったデータの共有を支援できればいいな、とも考えています。

june29 こうしてじっくりとお話を聞いてみると、Mozilla Labsの1つ1つのプロジェクトが線で結ばれ、面となり、未来のFirefoxの姿が浮かび上がってくるようです。

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