いま考えたい――子どもにケータイは必要かネットの逆流(5)(1/2 ページ)

携帯電話は子どもの間にも急速に普及している。そこに波紋を投げかけた、橋下大阪府知事の「小中学校へのケータイ禁止令」。はたして、子どもに携帯電話は必要なのだろうか。

» 2008年12月07日 10時55分 公開
[森川拓男,ITmedia]

 12月3日、大阪府の橋下徹知事は、府内の政令市(大阪、堺)を除く公立小中学校で、児童生徒による携帯電話の持ち込みを原則禁止とする方針を明らかにした。小中学校への「ケータイ禁止令」発令だ。公立高校に関しては、通学範囲の広さなどから、持ち込みは認めるものの、校内での使用は禁止される。

学校に携帯電話は必要か?

 携帯電話禁止の理由としては、携帯電話への依存傾向が強い子供ほど、学習時間が短いなどという調査結果が出たことを挙げている。文部科学省は「都道府県単位の規制は聞いたことがない」という。

 このことに関しては、鳩山邦夫総務相や、塩谷立文部科学相らが賛同する一方、東京都の石原慎太郎知事は「親が判断することだ」という見解を示している。しかし、その東京都もすでに10月、学校への持ち込みの原則禁止を呼びかける通知を出している。

 今回は、何かと物議を醸す橋下府知事の発言だったために波紋を広げたが、実は学校での携帯電話使用に関しては、文部科学省が7月25日に通知を出しているのだ。それによると、都道府県や指定市の教育委員会などに対して、「校内では原則禁止にする」「機能を限定する」といった具体例を示して、取り組みの徹底を求めているという。つまり、大阪府知事の発言自体は、文部科学省の方針と同じということになるのかもしれない。

 学校における携帯電話の是非をどう考えるだろうか。筆者の意見を聞かれれば「不要」と答える。

 学校の中で携帯電話が必要なケースは多くない。授業中に使うのはもってのほかだし、休み時間に使う理由もない。もし、親などが緊急で連絡を取りたい場合、学校に直接連絡して取り次いでもらえばいい。教育の場である学校では原則的に携帯電話の出る幕はないはずである。

 一方で「子どもの安全のために携帯電話は必要だ」という人も出てくるだろう。携帯電話があれば、トラブルの際に連絡が取れるし、機種によってはGPS機能でおおよその所在も把握できる。しかし、これで「安全」となるわけではない。不幸にも事件に巻き込まれた児童の中には、防犯ブザーや携帯電話を所持している子もいた。逆に、「携帯電話を持たせているから安心」という親の過信につながる方が問題である。

 といっても、かつては街中に設置されていた公衆電話も、撤去されて数が少なくなってきた。携帯電話の普及が、公衆電話を減少させてしまったのだ。つまり、外出時における緊急時の連絡手段が少なくなってしまっている中で、携帯電話を取り上げるのはどうかという意見も一理ある。

 しかし、橋下府知事がわざわざ「持ち込み禁止」を表明しなければならないほど、現状はひどいのだろうか。

いじめをまん延させている携帯電話

 基本的に携帯電話の持ち込みを許可している学校は少ないが、親が買い与えているケースも多く、その場合は必然的に学校にも持っていくことになる。

 小中学生の親が買い与えている場合、前述のように防犯・セキュリティの意味で持たせている場合がほとんどなので、親の目が届かない学校へ持っていくのは当然となるからだ。最近は、教師の犯罪など、学校も安全な場所ではないという事件が報じられるケースも増えており、親が過剰になっているきらいもあるのかもしれない。

 しかし、学校はもともと、携帯電話の持ち込みを前提としていなかったため、それに対する方策がなされていなかった。その結果として、なし崩し的に、学校への持ち込みが増えていってしまったのだろう。学校では原則禁止にしていても、抜本的な規制ができていなかったのが実情ではないだろうか。いわば、橋下府知事の発言は、この問題を改めて認識させてくれる契機になったともいえよう。

 さて、子どもによる携帯電話の使い方をみると、年齢が上がるほど、通話から電子メール、インターネットへと変わっきているようだ。その変化とともに、見過ごせない状況が生まれてしまった。「ケータイ」からのネットを使った中傷、いじめである。

 この事象自体は昔からあるものだが、それがケータイを媒体とすることによって、悪化しているようなのだ。自己紹介サイトである「プロフ」を偽装されたケース、学校裏サイトでの悪口雑言、そしてケータイメールを利用した言葉によるいじめ――。

 特に、ケータイメールを使う場合は深刻だ。つまり、ケータイがそのまま凶器となるわけである。24時間、ケータイを持っている限り、いつ送られてくるか分からないメール。それが楽しいものであれば生活を豊かにしてくれるが、いじめの手段として使われた場合は最悪だ。

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