新しい「人脈力」をつけるための10カ条(前編)Next Wave(1/2 ページ)

企業経営にソーシャルネットワークをどう生かすべきか。個々人の創意工夫が問われる中、ベンチャー企業を経営しながらブログを5年間毎日更新し続け、1000冊以上の書評を手がけてきた橋本大也氏が、企業の知識経営に役立つ10の理論を推奨した。

» 2008年12月17日 07時00分 公開
[富永康信(ロビンソン),ITmedia]

世界は6人を介して誰とでもつながっている

 企業には資本が4つ存在するといわれる。「経済資本」(資金)と「人的資本」(人材)、「文化資本」(風土)、そして「社会的資本」(人間関係)だ。特に、この社会的資本が企業の大きなテーマとされ、ビジネス上の人脈、レピュテーション(社会的信任、評価)、コミュニティーなどの従来数字では計上されなかったソーシャルネットワーク的な要素が重要な役割を果たすようになる。

 そのソーシャルネットワークの影響力はこの10年で世界的に進展し、2億人もが利用する巨大SNSのMySpaceをはじめとして、数百万〜数千万人規模のソーシャルネットワーク次々に誕生している。日本のmixiもそのひとつ。また、従来のメールに置き換わる勢いで、blogや掲示板、チャット、メッセンジャー、wikiなどのコミュニケーションツールが定着しはじめている。今後ソーシャルネットワークをどう生かしていくべきか、企業の創意工夫が問われるようになる。

「IMで150人とつながることで、プロジェクトの進捗や締め切り管理が容易になった」と語るデータセクション代表取締役の橋本大也氏

 この状況について、「人間関係が急速にデジタル的に可視化され始めている」と分析するのは、データセクションの代表取締役の橋本大也氏だ。同氏は、mixiへの投資で知られるngi groupのイノベーションラボ所長や多摩大学大学院経営情報学科の客員准教授を務めるかたわら、自身のブログ「情報工学 Passion For The Future」を2003年9月の開始以来、毎日更新し続けるなど、ソーシャルネットワークの進展を一貫して見つめ続けてきた。

 11月13日に開催された日立システムアンドサービスのプライベートセミナー「第32回 Prowise Business Forum企業の人的資源を引き出す社内SNS/Blog活用術」の基調講演に登壇した橋本氏は、自身におけるベンチャー経営の試行錯誤の経験と1000冊を超える書評で培った知識から、ソーシャルネットワークを企業の知識経営に役立てるための考察として10の理論を例示した。

スケールフリーネットワークとランダムネットワーク

 まず1つ目が、世間は広いようで狭いという考え。例に挙げたのは、社会心理学者のスタンレー・ミルグラム氏が行った「スモールワールド実験」(被験者60人が異なる州に住む特定の人物宛に、知り合いを通じて手渡しで手紙を送るように指示した実験)を基に、コロンビア大学が実施したプロジェクト。171カ国、6万人がランダムにメールを転送し合う実験を行った結果、19人のターゲットに伝わるまでに国内なら5人、国外では7人を経由して到達することが分かった。これにより、世界に人類が60億人いても、平均6人を介することで誰とでも間接的につながることができるという「6次の隔たり(Six Degrees of Separations)」仮説が生まれた。

 その一方で橋本氏は、人間のつながりは「スケールフリーネットワーク」の性質をもっているという。スケールフリーとは、P=0ネットワーク(隣同士しかつながっていない状態)、からP=1ネットワーク(ランダムに全員が全員を知っている状態)までの、ちょうど中間に位置し、他とのつながりの少ない人々の中にハブ型人間(つきあいの広い人物)が少数存在している状態のこと。つまり、現実の社会はつながりやすい可能性はあるものの、つなぐことができる人は限られる状態にあるという。

スケールフリーネットワークとランダムネットワークとの違い
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ