「クロスメディア」が加速する新聞・テレビのサバイバル競争Weekly Memo(1/2 ページ)

新聞社やテレビ局を中心に、「クロスメディア」の動きが活発になってきた。共通する狙いはネットへの進出だが、既存メディアのサバイバル競争を加速することにもなりそうだ。

» 2008年12月29日 09時45分 公開
[松岡功ITmedia]

見えてきた朝日新聞グループの戦略

 「NHKが12月1日からテレビ番組のネット配信サービスを開始」、「フジテレビ、NTTドコモ、スカパーJSATなど5社がマルチメディア放送企画LLC合同会社を事業会社化」、「産経デジタルが産経新聞をまるごとiPhoneで無料配信」、「ヤフー、中部日本放送(CBC)、博報堂DYメディアパートナーズがテレビ番組と連動したネット広告商品を共同開発」、「朝日新聞社、テレビ朝日、KDDIが携帯電話向けの情報配信サービスを共同推進」……。

 12月に入って、新聞社やテレビ局を中心に、多様なメディアを組み合わせた「クロスメディア」での新サービス創出に向けた動きが活発になってきた。ちなみにクロスメディアとは「1つのコンテンツデータを多用途として、複数のメディアで利用する手法」のことである。

 今月の動きの中でとくに注目されるのは、朝日新聞社、テレビ朝日、KDDIの3社が12月15日に発表したネット関連での業務提携だ。第1弾として、朝日新聞の記事やテレビ朝日のニュース映像などをKDDI(au)の携帯電話に一斉同時配信する有料サービスを来年夏に開始する。さらに3社は今後、新聞をはじめとする印刷媒体、テレビ放送、携帯電話、ネットなどを組み合わせ、これまでにない情報サービスやクロスメディア広告などの可能性を模索していくとしている。

 ちなみに朝日新聞社とテレビ朝日は今年6月、互いに株式を持ち合う資本構造改革を発表し、情報通信やメディア関連企業とのダイナミックな連携を模索すると表明していた。また12月10日には、テレビ朝日がリクルートと資本・業務提携を発表。ネットや地上デジタル放送を使った新規事業の開発を目指すとしていた。そして今回の3社連携によって、いわゆる朝日新聞グループのクロスメディア戦略の中身がだいぶ見えてきた格好となった。

朝日新聞社、テレビ朝日、KDDIの3社による12月15日の提携会見。左から朝日新聞社の吉田慎一常務、KDDIの高橋誠コンシューマ事業統轄本部長、テレビ朝日の神山郁雄常務。

 大手新聞社を中心としたグループ企業のクロスメディア戦略は、日本経済新聞グループがいち早く取り組み、読売新聞グループもここにきて急ピッチで対応を進めている。またiPhoneに無料配信を始めた産経新聞もフジサンケイグループという巨大なメディア集団の母体がある。これに朝日新聞グループが取り組みを明らかにしたことで、クロスメディアをめぐる既存メディアのバトルが一層激化していくのは間違いないだろう。

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