セブン&アイ・ホールディングスとNECが先週17日に発表した協業は、業界の垣根を越えた新しい形の提携スタイルだ。そこにはITの新たな役割も浮かび上がってきた。
「経済情勢が大きく変化するとともに、消費の対象がモノからサービスへと移りつつある。こんな時こそ、そうした変化に対応できる事業を創出していかなければならない」
先週17日、セブン&アイ・ホールディングスとNECが協業を発表した会見で、セブン&アイ・ホールディングスの村田紀敏社長は開口一番、こう語った。
両社の提携内容は、「流通とITの共創」をテーマに、情報化社会への本格対応に向けた研究・システム開発で協業し、合弁会社として「セブンインターネットラボ」を設立するというものだ。
「3年半前にグループを一体化してから、IT/サービスを主要事業の1つに据えてきたが、まだ手薄な面があった。そこで今回、コンビニエンスストアの発注システムを始めとして30年来のつき合いがあるNECと手を組んで、新しい事業の創出に注力することにした」(村田社長)
3月24日に設立される合弁会社では、セブン&アイグループの小売業のノウハウと、NECのITシステムの研究・技術ノウハウを組み合わせることで、ネット社会におけるさらなる技術活用を追求し、小売業の新たな可能性を研究する。また、流通業におけるIT人材の保有・育成を行うことで、ノウハウの蓄積・共有オペレーションを実現し、IT投資効果の最大化を目指してシステム開発を行う。
将来的には研究・開発の成果を、セブン&アイグループのビジネス革新と、NECグループの新製品開発に活かすことを目指している。
合弁会社のさらに詳しい内容は、すでに関連記事などで報道されているので参照していただきたい。ここでは両社が今回の提携に至った市場背景や今後の方向性について、合弁会社の社長を兼務するセブンアンドワイの鈴木康弘社長の会見での説明をもとに考察してみたい。
鈴木社長によると、流通市場では、不況による節約志向が高まっており、新たな消費の動機付けが緊急の課題となっている。また、情報化社会の進展によって消費者の意識が変化しつつある中で、ネットビジネスへの取り組みの強化が求められている。
さらにアウトソーシングによるコストが増加する傾向にある中で、小売業として「売る」ことへの原点回帰も流通企業の課題として捉えられているという。
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