コラム
» 2009年12月12日 00時00分 UPDATE

賢者の意志決定:「iPhone or Android?」――あなたの知らないモバイル業界の真実 (1/3)

iPhoneアプリをビジネスとしてとらえたときに、最も難しい話題の1つが、プロモーションです。本稿では、実体験に基づくiPhoneアプリのプロモーション手法を考察するとともに、モバイル業界は今後はiPhoneやAndroidとどのように向き合うべきか、そして、iPhoneとAndroidの最終戦争の行方について、前回に引き続き“鬼才”清水亮が解説します。

[清水亮,ITmedia]

iPhoneアプリのプロモーション

 iPhoneアプリをビジネスとしてとらえたときに、最も難しい問題の1つが、プロモーションです。現在のところ、iPhoneアプリをプロモーションするには以下のような方法があります。

  1. AdMobのようなiPhone専用広告代理店に広告を出稿する
  2. AppleがWhat's Hotで取り上げてくれたり、店頭で紹介してくれたり、CMになったりする
  3. 海外のiPhone専門誌に広告を出す
  4. トレードショウにブースを出す
  5. プレスリリースを出す
  6. 海外のブログメディアに直接働きかける
  7. TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを活用する
  8. 自社で英語ブログを開設する

 UEIではひとまず上記のプロモーション手段をすべて試しています。結論から言うと、1はどれだけお金をかけても意味のある結果を得ることができませんでした。組織的なスパマーというか、広告を表示させてはひたすらクリックして荒稼ぎしている会社があるらしく、どれだけアクセスがあっても購入に結びついたものはほとんどありません。

 2は、かなりの幸運と、少なくとも実力でAppStoreの上位ランクに入るだけのアプリを作れなくてはなりませんが、一度載ると効果はそこそこあります。ただ、それも残念ながら限定的なもので、特に以前と違い今は、そうした支援があるからといってセールスがぐんと伸びる、なんてことはないようです。

 3は、値段の割には効果があるようですが、どちらかというとプレゼンスを確立するためにやることなので、どれだけ実際的な効果があったかは不明です。しかし、ゲームアプリの広告を掲載したところ、無料版よりも有料版のダウンロードが海外で伸びたくらいで、確実に効果はあるものと思います。

 これは、北米でしばらく生活をしてみれば分かると思いますが、米国というのはiPhoneアプリに関する情報があまりにはんらんしており、季刊の情報誌であっても情報が整理されている媒体は暇つぶしについつい買ってしまうのです。

 4は、アプリのセールスと比較するとまったく効果はありませんが、トレードショウにブースを構えることで業界人との出会いを期待できます。実際、パリのブースでもサンフランシスコのブースでも、現地のジャーナリストやAppleのスタッフと知り合えたりして、それが結果的に記事の掲載につながることがありました。

 5は、日本では効果絶大、海外では効果皆無、といったところでしょうか。海外におけるプレスリリースはよほどの大物企業でもない限り、出すだけムダ、といった感じです。その代わりビックリするくらい格安にプレスリリースを出すことができます。リリースの配信会社も心得たもので、「プレスリリースはSEOに最適です」と宣伝文句に書いてあるくらいです。確実に数百媒体に掲載されますが、そのページはおそらく誰も見向きもしないような、ニュースですらないページに掲載されます。一度海外のプレスリリースをごらんいただくと、そのむごさが伝わると思います。

 海外ではジャーナリストとの直接的なコンタクトなしにプレスリリースだけ送ってもほぼ間違いなく無視されます。これは非常によい勉強になりました。

 6は、非常に重要かつ、難しいです。現在、海外、とりわけ北米のブログは一般のメディア以上に影響力を持っています。また、日本でも、AppBankなど、既にかなり大きな影響力を持つiPhoneアプリ専門ブログが存在します。北米では、GizmodoEngadgetなど、ガジェット系のブログがハイテク系のブログで最も人気が高く、HotWiredやMake:MagazineなどがiPhone関係のネタを取り上げやすくしかもネームバリューが高いことで知られています。ベンチャー企業ならTechCrunchCrunchGearもかなりの影響力があります。

 ところが1つ大きな問題があります。これらの大手ブログメディアは、iPhoneのありきたりなアプリには完全に飽き飽きしているということです。つまり、彼らに取り上げてもらうにはよほど凄いアプリを作るか、凄いアプリであるかのように見える刺激的なプレゼンテーションを行う必要があります。言うまでもありませんが、これは至難の技です。

 UEIは偶然、iPod touchをJailbreakして作ったピンポンゲームのビデオでこうしたメジャーなブログとの接点ができ、各誌の編集長や編集者とのコンタクトがあるのですが、彼らの目は非常に厳しく、かなり真面目に作っても「クレイジーじゃない」と掲載を拒否されてしまいます。渾身の力で作ったアプリを「クレイジーじゃない」という理由で却下されてはたまったものではありませんが、それが現実なのです。

 また、彼らは無名な企業に対してはDIY精神というか、ホームビデオのようなビデオを好みます。プロの演出家とモデルを雇ってバリバリに演出したようなCM臭いビデオではなく、街の発明おじさんがヘンテコな発明をした現場にたまたま居合わせて撮影した決定的瞬間、のようなビデオの方が多くの人の心に刺さるようです。

 こちらとしては、できるだけ良く見せよう、かっこよくしようと思って気合いを入れてビデオを作るのですが、先方はそんなナルシシズムを求めていないわけです。だからツッコミどころ満載のお笑いビデオをつくるつもりでやる必要があります。彼らはネタを探していて、読者はそれを見てゲラゲラ笑いたいというだけですから、「緩いビデオ」を作るにもコツがあります。

 文字は下手でも英語にすること、音声は流さないこと(音声を聞かないと内容が分からないビデオをPCで見たいと思いませんよね?)。音楽は、YouTubeが勝手にはめてくれるようなもので十分です。

 7は、使い方によっては効果的です。例えば弊社からリリースした「i書道」では、書いた作品をTwitterに公開できるようになっているのですが、こうすると、友達に自慢すると同時に、「i書道って何だろう?」と思ってもらうことができ、口コミでユーザー数を増やすことができました。

 8は、これも非常に重要です。特に6との組み合わせでは重要性が増します。日本の会社の場合、特に小さい会社だと、英語ページもおざなりになりがちです。せっかく面白いネタを提供して大手ブログで紹介されても、「こいつらは何者なんだ」ということが分からないとその関係性がそこで途切れてしまいます。

 「面白いことをやってるやつらだ」と思ってもらったら、そこからブログに誘導して「あーほかにもこんなことやってるのか」とか「今度はこんなネタを考えてるのか」と分かってもらうことができます。そういう場で集められる意見はけっこう大切です。そして定期的に話題を提供していると固定読者もついてきます。後は地道に読者との信頼関係を育てるしかないのです。この辺りは、日本でブログを開設するのと同じですね。

 これだけの手法を駆使しながらも、いまハッキリ言えることは「確実な方法は1つもない」ということだけです。それだけ変化と競争の激しい世界ですから、この辺りは実に難しいのです。われわれも継続して研究中です。

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