コミュニケーションは組織で仕事をするときに欠かせないものです。では良いコミュニケーションとはどのようなものなのか、しんこちゃんと一緒に考えてみましょう。
新米リーダーしんこちゃんが、チームメンバー面野(めんの)君と会議室にいます。どうやら次の昇給用の査定面接をしているようです。
しんこちゃん (今日は初めてのメンバーへの査定面接、ドキドキするなぁ。みんなの良かったところをちゃんと評価できるように、キリッとシャキッとしなくちゃね)
面野君、お疲れさま! 今日は年に1度の査定前面接です、よろしくね。ではまず最初に、この1年間の実績をアピールしてもらえますか?
面野君 はい! よろしくお願い致します。では早速ですが、実績を報告します。前半はX社向けの仕事をしました。担当した範囲は帳票部分で……。
しんこちゃん ストップ、ストップ、ストーップ! ちょっと待って。面野君がX社向けの仕事をしていたことや、どこを担当していたかはわたしも知っているわ。それよりも、もっと具体的なことを話してくれる?
面野君 あ……。はい、分かりました。具体的な話というと、あの、あの……。あ、担当した範囲で仕様を勘違いして、修正に手間取った部分がありました。だから、あの、次回はお客さんとの意思疎通をしっかりやらねばと反省していまして……。
しんこちゃん ストップ、ストップ、ストーップ。もう1つおまけにストーップ! 面野君、わたしは「アピールして」と言ったのよ。失敗したことを並べても査定が下がるだけじゃない。それに失敗の内容もすでに報告を受けているから知ってます。そうではなくて、「従来と違う工夫をして効果があった」とか「こんなチャレンジをした」とか、そういう話をすることがアピールでしょ?
面野君はX社向けプロジェクトで、バージョン管理を確実に行うための管理システムを構築してくれたじゃない。あれのおかげでデグレ(デグレード。ソフトウェアのバージョンアップに伴う品質低下)がなくなって、みんなが喜んだし、お客さんの評価も良かったよね。
面野君 あ、あ、はい……。
しんこちゃん でしょう? そこが面野君のアピールするところよ。そして、そんな面野君にわたしは、この先チームの品質管理面でのけん引役として活躍してほしいと思っているの。今回のような取り組みを他のチームに広めたり、より効率的にするための取り組みの責任者として動いたりしてほしいの。やってくれる?
面野君 あの、でも……、あ、はいぃ……。
しんこちゃん 良かった! じゃあ、その辺りを評価ポイントとして査定しておくわね。では、これからも頑張って。よろしくね!
釈然としない表情の面野君に続いて、会議室から出るしんこちゃん。「フンフンフンフンッ、フーンフフンフンフンフンッ♪」と鼻歌を歌いながら扉を開けたところで、先輩リーダーの輩田(やからだ)さんとぶつかりました。どうやら輩田さんは、新聞を読むふりをしながら会議室の様子を立ち聞きしていたようです。
輩田さん おっ、しんこちゃん。随分ご機嫌じゃないか。その歌はなんだい?
しんこちゃん フィル・コリンズの「恋はあせらず」です。わたし、洋楽だって結構イケるくちなんですよ。実はいま面野君との面接が終わってですね、初めてにしては上手くいったので、わたしとーっても良い気分なんです。
輩田さん そうか、それは良かった。と言いたいところだが、ちょっとまた説教させてもらえるかな? 面野君との面接がたまたま聞こえてしまったものでね。
2人は、先ほどの会議室に入っていきました。
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