京大の折田先生像、今年はあのキャラに……関西発パスタ便

京都大学に根付く「自由の学風」。その学風を築くために多大な功績を残した折田先生の像は、“季節の風物詩”として知られるようになりました。果たして折田先生像2010はどのようなものだったのでしょうか。

» 2010年02月26日 08時00分 公開
[Pasta-KITmedia]

 国公立大入試の二次試験前期日程が全国の大学で開始される2月下旬。この時期、一部で話題となっているのが、京都大学にある折田先生像です。

 折田先生像といえば、“季節の風物詩”としてここ数年メディアで取り上げられることも多くなっている京都大学の珍事。折田先生が何者なのかについては、折田彦市先生入門ガイドとして知られる「前略 折田彦市先生」が詳しいのですが、かいつまんで説明すれば、京都大学の前身である大阪(大坂)専門学校、さらに同校が改称を重ねていった大阪(大坂)中学校、大学分校、第三高等中学校、第三高等学校(通称『三高』)で30年にわたって校長を勤め上げた人物です。

 京大の創設に尽力し、京大に自由の学風を築くために多大な功績を残した折田先生。そんな折田先生の業績をたたえる銅像が京都大学構内に設置されたのは、1940年のこと。第二次大戦における金属供出令により、この銅像はすぐに国に供出されることになりますが、1955年に再建されました。

ヤキソバンに変身した折田先生像 日清のテレビCMでおなじみのキャラクター「ヤキソバン」に変身させられたこともありました(写真出典:『前略 折田彦市先生』)

 1980年代に入ると、この銅像へのいたずらが散見されるようになります。記録に残っているものでは、1986年の「怒る人」がよく知られています。顔を赤くスプレーされ、台座には「怒る人」と落書きされた折田先生像。やがてこのいたずらはエスカレートし、折田先生像はさまざまなキャラクターに変身させられます。誰が、何のためにこうしたいたずらをするかは不明ですが、新しいペイントが行われるたびに、折田先生像は有名となっていきました。

 銅像に対するこのいたずらは、構内整備を機に折田先生像が撤去される1997年3月まで続きます。しかし、撤去された後、事態はさらにエスカレートしていきます。何と、撤去されたはずの折田先生像がハリボテの形で復活したのです。ラオウやナウシカをはじめとするさまざまなキャラクターが折田先生像と称して学内に登場するようになります。

 ここ数年は毎年2月下旬に現れるハリボテの折田先生像。ここ数年来の傾向としては、「有名な作品における存在感ある脇役」が選ばれているようです。2007年は不二家のマスコットキャラクター「ポコちゃん」、2008年はアンパンマンの登場キャラクターである「てんどんまん」、そして2009年は「仮面ライダーV3」のライダーマンだったことはまだ皆さんの記憶にも新しいことでしょう(余談ですが、2009年の11月祭では、顔を入れると折田先生になれるという、観光スポットによくある看板としても登場していました)。

 大学側も当初はこうしたいたずらに困惑していましたが、2008年の「てんどんまん」が登場した際には、「風物詩の1つ」と見なし、著作物のイメージを損なわない限り状況を見守る」という寛容な姿勢を示しています。

 折田先生が京都大学に根付かせた自由の学風を象徴するように現れる折田先生像。今年は折田先生が亡くなってから、90年目に当たり、Twitter上では数日前から今年の折田先生像についてさまざまな推測が行われていました。

今年はあのキャラクターが……

 今年はどのような姿で登場するのかと2月25日に京都大学に向かった筆者は、すぐに折田先生像2010を発見しました。そこにいたのは、アニメ化もされている国民的大人気ゲーム「ポケットモンスター」シリーズの「タケシ」でした。

タケシ 折田先生像2010は「タケシ」

 タケシはゲーム内で主人公が最初に戦うジムリーダーとして登場し、アニメシリーズでは、主人公サトシとともにアニメ放送初期から登場しています。海外でも人気が高く、アニメシリーズ内では毎回、年上の女性にアプローチし玉砕しつつも、ポケモンブリーダー(ポケモンを育てることを専門にする人たちのこと)を目指して旅を続けています。まさに「有名な作品における存在感ある脇役」といえるでしょう。

 ここで、ポケモンをよく知らないという方もいらっしゃるでしょうから、立て看板に書かれていた内容について少し解説を加えておきます。

 「わざマシン34」というのはニビシティという街のジムリーダーでもあるタケシを倒すともらえるわざマシン(ポケモンに技を覚えさせるための道具)。使用すると「がまん」というわざを覚えられます。「がまん」はわざを使用してから2ターンの間に受けたダメージを2倍にして返すというものですが、使いどころがあまりないわざでもあります。

 タケシとの対戦時、手持ちの最後のポケモンとして「いわへびポケモン」イワークを出してくるのですが、こちらの手持ちに「かめのこポケモン」ゼニガメがいると、結構あっさりと倒せてしまいます。ちなみに、ゼニガメははじめにパートナーとして選ぶことができるポケモンのうちの1体です。

 ここで、「なぜ今年はタケシだったのか」という素朴な疑問がわきますが、2009年に発売されたニンテンドーDS用ゲーム「ポケットモンスターハートゴールド・ソウルシルバー」が10年前に発売された「ポケットモンスター金・銀」のリメイク版であったことになぞらえてのタケシではないかと筆者は推察します。つまり、今回は「10年」という時間が作品に影響を与えているのではないかと思うのです。

立て看板の裏には10年前の広末涼子の写真が

 また、意外に知られていませんが、折田先生像にはマニアックな鑑賞ポイントがあります。それが、立て看板の裏に張られた写真です。今回張られていたのは、(多分)10年前の広末涼子。ここでも10年というキーワードが出てきます。実にユーモアが効いています。

 この日、京都大学を受験した受験生の1人にインタビューをしたところ「見たときには既にお昼で、国語は受け終えていたのですが、それまでの緊張感が一気にほぐれました。その近くに『受験生休憩所』と銘打ったこたつがあったり、ウサギの着ぐるみがいたりして、京都大学の自由な校風を感じました」と折田先生像2010を見た感想を語ってくれました。

 この時期の風物詩と化している折田先生像は今年も期待を裏切らない見事なできであり、制作者の心意気に感服しました。これを見た受験生が「京都大学の合格通知、ゲットだぜ」という日が来ることを祈りたいところです。

折田先生像2010は何を思うのか

著者プロフィール:Pasta-K

京都市内の高校に通う高校1年生。関西のセキュリティ系勉強会「まっちゃ139」などに参加するほか、オンライン勉強会「Online.sg」を原上ソラと2009年4月に立ち上げ、現在月1回を目安に開催中。「セキュリティ&プログラミングキャンプ2009」のプログラミングコースプログラミング言語組に参加。主にWeb関係の技術に興味がある。3月13日に開催されるOSC神戸で「学生とITコミュニティーの現在(いま)」というタイトルで講演予定。




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