デスクトップ仮想化がもたらすワークスタイルの未来像Citrix Synergy 2010 Report(1/2 ページ)

米Citrix SystemsのテンプルトンCEOがデスクトップ仮想化によって変わるワークスタイルの未来像を紹介した。

» 2010年05月13日 15時37分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 米Citrix Systemsは5月12日(現地時間)、米カリフォルニア州サンフランシスコでユーザーカンファレンス「Citrix Synergy 2010」を開催した。初日のキーノートでは、会長兼CEOのマーク・テンプルトン氏が、デスクトップ仮想化によってもたらされるワークスタイルの未来像を紹介した。

マーク・テンプルトン会長兼CEO

 テンプルトン氏は、15年以上にわたる同社の仮想化への取り組みについて、ユーザーのビジネスに貢献するとの立場から技術開発を推進してきたと説明。サーバに始まった本格的な仮想化の流れは、物理的なコンピュータインフラの統合による運用効率の向上やコスト削減のメリットを提供してきた。デスクトップの仮想化は、企業内と同等のセキュリティや管理性を確保しつつ、従業員の多様なワークスタイルを支援するものだという。

 デスクトップ仮想化がもたらす価値について同氏は、「企業の従業員があらゆる場所、あらゆる時間に、あらゆるアプリケーションを利用できるようになる。仕事を好きな場所に持っていける“Work Shift”の実現だ。家族と食事を楽しむ時間や趣味を楽しむ時間を増やしながらも生産性を高めていける」と語った。

 同社のユーザー企業の中でもデスクトップ仮想化をフルに活用する動きが加速しているという。米国の法律事務所Sonnenschein Nath & Rosenthalでは、プライベートクラウド環境を構築し、法務担当者が自らの仮想デスクトップマシンへ自在にアクセスできるようにした。ある従業員は、休暇でサッカーを練習している際に遠隔地の顧客から契約書の提供を求められたが、練習場から携帯電話で仮想デスクトップにアクセスし、連絡から10分程度で顧客へ契約書のデータを送信した。デスクトップ仮想化によって、こうした迅速な対応が可能になった。

 テンプルトン氏によれば、通信環境が整備されていない国や地域でも、アクセス手段さえ確保されていれば、オフィスにいるのと同じように仮想デスクトップで仕事をするケースが増えているという。最近では国際宇宙ステーションに駐在する飛行士が母親へTwitterからメッセージを送ったことが話題になった。飛行士はNASAのセンターにあるCitrixの仮想デスクトップに国際宇宙ステーションからアクセスし、メッセージを送った。

ユーザーの環境に関係なくデスクトップPCを利用できるようにするのが同社の目標だ

 同社がデスクトップ仮想化の推進を目的に、2009年10月にリリースしたXenDesktop 4は2010年3月末までに150万以上のライセンスを出荷した。テンプルトン氏は、こうした動きがデスクトップ仮想化に注目する企業が増えている実態を象徴すると述べている。

 デスクトップ仮想化をさらに進める取り組みとして、同社はノートPC上で複数の仮想マシンを実行する「Citrix XenClient」を新たに発表した。Citrix XenClientは2009年にコンセプトを発表したもので、Intel vProを搭載するノートPC上でオンライン、オフラインを問わず仮想マシンを動かせる。

 オンラインであればリアルタイムにデータセンターと同期し、仮想マシンをデータセンターのサーバへバックアップしたり、サーバからノートPCへリストアしたりできるのが特徴。万が一ノートPCを紛失した場合は、データセンターからの遠隔操作でノートPC上の仮想マシンを消去する、もしくはノートPCから一定時間アクセスがなければ自動的に消去するといったこともできるとしている。

 現在、Citrix XenClientはパブリックβ版という位置付けで、同社サイトから無償ダウンロードできる。製品版の提供は2010年後半の予定。XenDesktopのオプションとして提供される見込みだが、将来的にPCに組み込んだ形でも出荷される可能性もある。HPとDellがサポートを表明している。

XenClientの画面イメージ。理論上は幾つも仮想マシンを実行できるが、実際はノートPCのハードウェア構成によって異なる。ユーザーには「Citrix XenClient Express」の名称で提供。

 Citrix XenClientを利用することにより、例えばアプリケーション開発者は自宅のPCに開発環境やそれ以外の業務に使う環境を仮想マシンとして用意し、作業できるようになる。在宅勤務の場合では、自宅のPCで業務用に複数の仮想マシンを用意して利用するといったことができるとしている。

 また、同社は仮想デスクトップにおけるユーザー体験の向上に関する取り組みとして「HDX NITRO」も発表した。HDXは仮想化環境でマルチメディアアプリケーションを利用するための技術。HDX NITROでは、パフォーマンスの向上を目的にしており、アプリケーションの起動や印刷時間の短縮、高精細(HD)コンテンツのスムーズな利用などを実現するという。2011年中の製品化を目標にしている。

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