IntelのMcAfee買収にみるIT事業構造の変化Weekly Memo(1/2 ページ)

IntelによるMcAfeeの買収は、クラウド時代を迎えた中でITベンダーの事業構造が変化しつつあることを映した動きをいえそうだ。

» 2010年08月23日 08時00分 公開
[松岡功,ITmedia]

プラットフォームに組み込まれるセキュリティ

 米Intelが8月19日(現地時間)、情報セキュリティ大手の米McAfeeを買収することで合意したと発表した。買収額は76億8000万ドルで、Intelにとって過去最大の買収となる。先頃、米Oracleが米Sun Microsystemsを買収したときの74億ドルを上回る規模の買収劇に、先週末のIT業界は大きく揺れた。

 Intelによると、買収の狙いは「数十億台の機器がオンライン接続され、サーバやクラウド環境によってこれらの機器の管理が進む中、セキュリティソフトウェアとハードウェアの組み合わせを単一の企業が提供することで、より強固なセキュリティ環境を実現する」ことにある。

 同社のポール・オッテリーニCEOは「これまでコンピューティングの必須要件は、電力効率に優れた性能とインターネット接続だったが、今後はセキュリティがこれらに続く第3の柱になる。同分野で実績のあるMcAfeeの技術をIntelのコンピューティングに加えることによって、さらなる技術革新や製品・サービスの拡充を図っていきたい」と買収の意義を強調した。

 今回の発表における詳細な内容については、すでに多くの報道がなされているので関連記事等を参照いただくとして、ここでは今回の買収劇にみるITベンダーの事業構造の変化について考察してみたい。

 「IntelによるMcAfeeの買収は、セキュリティがプラットフォームに組み込まれる動きを象徴したもの。プラットフォームベンダーがセキュリティベンダーを買収あるいは連携強化する動きは、今後ますます活発になってくる」

 こう話すのは、情報セキュリティ分野に詳しい業界関係者だ。この業界関係者は以前、『クラウド時代のセキュリティベンダーの行方』と題した本連載コラム(1月12日掲載)でこう語っていた。

 「クラウドコンピューティングが広がるにつれ、セキュリティはサーバインフラやシステム運用管理の分野と境界がなくなりつつある。セキュリティベンダーとしては、そうした分野との境界を越えてどれだけ深く連携するかが今後の大きな課題になる。クラウド事業を旗印にした企業連合を形成するところも出てくるのではないか」

 さらに同じコラムで「インフラにおいてもサービスにおいても差別化戦略が問われるクラウド事業では、高度なセキュリティ対応がその大きな決め手になる。そうなると、クラウドのメジャープレーヤーは、有力なセキュリティベンダーを傘下に収めようとするだろう」との別の業界関係者のコメントも紹介した。

 今回のIntelによるMcAfeeの買収は、こうした見方を裏付ける動きといえる。

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